関西国際空港が「水素エアポート」へ、燃料電池車や水素ステーションを展開:スマートシティ(2/2 ページ)
「環境先進空港」を目指す関西国際空港で水素エネルギーの導入が始まる。2016年度までの3年間に、燃料電池フォークリフトや水素ステーションを空港内に配備するほか、大阪国際空港と直結するバスにも燃料電池車を採用する。太陽光や風力と組み合わせた水素発電システムも検討中だ。
空港のリムジンバスも燃料電池車で運行
貨物の分野で水素エネルギーの導入を進める一方、空港の利用者に向けたサービスも2015年度から開始する。ターミナルビルと駐車場に隣接するスペースに水素ステーションを建設して、空港内で利用する車両のほかに一般の燃料電池自動車にも水素を供給できるようにする(図5)。
さらに同じ大阪府内にある大阪国際空港(伊丹空港、略称ITM)にも同様の水素ステーションを建設する計画がある。関西国際空港(略称KIX)のサービス開始から1年後の2016年度に運用を始める(図6)。2つの空港は約60キロメートル離れているが、空港を結ぶリムジンバスにも燃料電池車を採用して運行する予定だ。
国内ではトヨタ自動車が2015年に4人乗りの燃料電池自動車を市販するほか、日産自動車やホンダなども開発済みで、次世代のエコカーとして利用者の拡大が期待されている。燃料電池自動車の普及に向けて政府も東京・名古屋・大阪・福岡の4大都市圏を対象に、100カ所の水素ステーションを2015年までに先行して整備する計画を推進中だ。関西の2つの空港も含まれることになる。
太陽光や風力と連携する水素発電システム
水素エネルギーの活用は自動車の分野だけにとどまらない。空港の施設に電力や熱を供給することもできる。水素グリッドエアポートに向けて、空港の拡張工事で2007年に生まれた「2期ターミナル地区」に、水素発電システムの導入を検討している。
ターミナルビルの近くに大規模な燃料電池システムを設置して、さらに水素発生装置や水素タンクも整備する。水素発生装置の電源には、空港内で稼働中の太陽光発電や風力発電も利用できるようにする(図7)。災害時に電力会社からの供給が止まっても、空港の中で電力と熱を作り出すことが可能になる。
現在の構想ではMW(メガワット)級の水素発電システムを想定している。国内では東京湾岸に大規模な水素発電所と水素グリッドを建設するプロジェクトがある。川崎市が千代田化工建設と共同で進めているもので、水素発電所は90MWの発電能力を計画している。世界に先駆けた水素エネルギーの導入プロジェクトが東京湾岸と大阪湾岸で始まる。
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