固定価格買取制度の改正案、買取価格に「9カ月ルール」を導入:法制度・規制(2/2 ページ)
固定価格買取制度の見直しを進める政府の委員会が2015年度の改正案を提示し始めた。買取価格の決定時期を契約締結時に変更するほか、地熱・水力・バイオマス・住宅用太陽光の優先度を引き上げる。発電設備の増加に伴う送変電設備の増強工事には入札募集方式を導入することも確実になった。
地熱・水力・バイオマス・住宅用太陽光を優先
電力会社が再生可能エネルギーによる発電設備の接続を保留している最大の要因は、天候によって出力が変動する太陽光発電の急増にある。送配電ネットワークが不安定になる可能性があるほか、季節によって供給力が需要を上回ってしまうことが予想される。2015年度からは再生可能エネルギーの種類によって、発電した電力を送配電ネットワークで受け入れる優先度も変更する。
天候に左右されない地熱と水力のほか、バイオマス発電も燃料の特性をもとに優先度を引き上げる方向だ(図3)。住宅用の太陽光発電についても、家庭で消費した電力の余剰分だけを買い取る仕組みになっていることから、節電効果があると判断して優先度を高くする。
再生可能エネルギーの種類によって優先度を変えることで、出力が安定した電源を増やす一方、急増した非住宅用の太陽光発電の導入量を抑える狙いだ。固定価格買取制度の適用を受けた発電設備に対しては、地域の供給力が需要を上回った場合に出力の抑制を求めるルールがあり、その適用範囲を太陽光と風力に限って拡大することも検討している。
このほかに電力会社の接続可能量を増やす方策として、送変電設備の増強工事を入札募集方式で実施する制度を2015年度から導入する見込みだ。発電設備の増加によって送配電ネットワークの容量が足りなくなった場合に、従来は最初に接続を申し込んだ発電事業者が工事負担金の全額を電力会社に支払ったうえで、その後に接続を申し込んだ発電事業者から回収する方式をとっていた。
発電事業者にとっては過度な資金負担を強いられることになり、事業を断念する場合もある。新たに導入する入札募集方式は接続を希望する発電事業者を電力会社が事前に募って、入札金額の高い事業者から順に申し込みを受け付ける。最終的に工事負担金の総額が確定した時点で、各事業者の負担額を調整する仕組みだ(図4)。
東京電力が先行して群馬県の北部を対象に入札募集方式を実施したところ、募集の規模を上回る応募が集まった。発電事業者にとっても有効な手段であることが実証されている。2015年度からは全国の電力会社が入札募集方式によって送変電設備の増強工事を実施することになる。
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電力会社の送配電ネットワークに接続する
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