電力消費量は2030年までに18%増える、省エネ対策なしの想定値:法制度・規制
政府は2030年のエネルギーミックス(電源構成)を検討する中で、第1に省エネの効果を最大限に発揮することを前提に必要な電力量を見極める方針だ。経済が成長するのに合わせて省エネ対策を実施しないと、2030年の電力消費量は2012年と比べて18%増加すると予測している。
エネルギーミックスを検討する「長期エネルギー需給見通し小委員会」の基本方針の1つは、震災前と比べて省エネと再エネを最大限に拡大することである。2030年までに見込める省エネ対策の効果を試算する前段階として、省エネ対策を実施しない場合のエネルギー需要を想定した。
人口動態をもとに経済活動の動向を見通したうえで、必要なエネルギー需要を算出する方法である。家庭用のほかに、オフィスを中心とする業務用、工場などの産業用、さらに運輸用を加えて、エネルギー全体の最終消費量と電力の消費量を見極める。
検討委員会の事務局を務める資源エネルギー庁が試算したところ、石油や石炭などの1次エネルギーと電力やガソリンなどの2次エネルギーを加えた最終消費量は2030年度までほとんど増加しない(図1)。2012年度の実績と比べて、18年間のうちに3%しか伸びない見通しだ。特に人口の減少によって運輸用が減る効果が大きい。
しかも省エネ対策の効果を見込まない想定値であることから、実際の最終エネルギー消費量は2030年に向けて減っていく。ところが電力の消費量は18%も増える。経済の成長が続くことで業務用と産業用が大幅に増加するためだ。2030年度まで年率1.7%の経済成長を持続して、実質GDP(国内総生産)は711兆円に拡大する。2013年度の530兆円から34%も増える想定だが、現実味に欠ける数字と言わざるを得ない。
過去40年間の電力消費量の推移をみると、1973年度から2013年度のあいだに2.2倍に増加した(図2)。ただし2000年度を境に伸びは鈍化して、直近の10年間では横ばいの状態だ。2012年度から2013年度には0.3%の微増だったが、2014年度は減少が予想されている。
特に震災後の2011年度から家庭と企業の節電対策が進み、電気機器の消費電力もますます低下してきた。たとえ経済成長が続いたとしても、電力消費量が伸びていく可能性は小さい。
資源エネルギー庁は産業・家庭・業務・運輸の用途ごとに、従来の対策と今後に導入できる施策を合わせて省エネの効果を精査中だ。直近の10年間と同様に、電力消費量は2030年に向けて横ばいか微減になると評価するのが妥当だろう。
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