火力燃料費の削減を進める東京電力、高効率化とLNG調達がカギに:電力供給(2/2 ページ)
保有する原発が全て停止している東京電力は、火力発電の割合が発電量全体の9割を超えており、その燃料費は経常費用の4割以上を占めるまでに増加。この燃料費の削減に向け、高効率発電所の設置や石炭火力の稼働率向上、運用面の改善などさまざまな取り組みを進めている。
点検工程の改善や新たなアイデアの募集も
次に東京電力が燃料費が安価であるため石炭火力の稼働率を向上を目指し、定期点検の工程短縮に向けて行った取り組みを紹介する。定期点検とは発電設備を安全運転するために設備を完全停止させて実施する点検だ。法律で実施が定められている法定点検と、自主的に行う自主点検の2種類がある。
特に法定点検は設備の小さな部品に至るまで詳細な検査を実施するため、検査に数カ月程度かかることがある。東京電力では大型機器を取り外し、メーカーの工場に搬送して点検・補修を受ける場合に備え、既設のものより一回り大きな搬出入口を新たに設置するなど、作業効率の改善に取り組んでいる。こうした改善により点検工程を6日間短縮し、約9億円の燃料費を削減している(図3)。
この他、個々の発電所でも日々の運用に従来とは異なるアイデアを導入することを奨励している。優れたアイデアに対しては「MVI賞」を選出し、表彰を行う。その中には、燃料油設備用加湿蒸気量の削減に取り組み、年間2000万円の燃料費削減効果があると評価された例もあるという。
東京電力では中長期的な視点で燃料費の削減を実現する施策も進めている。発電所についてはACC(改良型コンバインドサイクル)発電方式を採用し、熱効率54.1%を誇る横浜火力7、8号系列の増出力と発電効率向上工事を2018年2月末までに完了する予定だ。早ければ2015年夏から一部運転が可能となる。富津火力の2号系列でも同様の工事を行う。
燃料調達面では、主に米国・カナダなどのシェールガスから生産される従来より単位面積当たりの熱量が低い軽質LNGの導入を推進する。世界的にも軽質LNGの利用は拡大しており、2020年頃には世界のLNG供給量の半分を占めると予想されている。東京電力では2025年頃をめどにシェールガスなどの軽質LNGを国内最大規模となる1000万トン程度導入する計画だ。北米からLNGを調達することで、米国の代表的なガス価格指標であるヘンリーハブ価格に基づいた価格交渉が可能となり、価格決定方式が多様化して燃料費上昇を抑制する効果が生まれる。
この他、2015年4月30日には中部電力と共同で包括的アライアンス事業体である「JERA(ジェラ)」を設立し、燃料の取扱量を世界最大規模に引き上げて燃料調達における選択肢拡大や上流事業の強化により調達力を一層強化する(関連記事)。包括的アライアンスによって将来的にはLNG調達コストの20%低減を目指す。
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