蓄電池の群制御で課題解決、福岡県みやま市が“地産地消”型電力システムを展開:スマートシティ
福岡県みやま市とエプコ スマートエネルギーカンパニー(以下、エプコ)は、経済産業省の「平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業」に採択されたことを発表した。地産地消型エネルギーシステムの構築および、ノウハウの共有に取り組むという。
経済産業省の「平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業」は、再生可能エネルギー導入拡大に向け、地産地消型エネルギーシステムの構築に関するノウハウの共有化と他地域への展開を図ることを目的としたものだ。
分散型エネルギーである再生可能エネルギーの導入拡大を進め、エネルギーの地産地消を行うには、自治体など地域が主体となって導入促進を図ることが求められている。しかし、地域における「新電力(PPS)」は、技術面や運営面、経営面において、「30分同時同量の難しさ」「インバランス(消費電力量と発電電力量との差分)リスク」「再生可能エネルギーの利用の難しさ」「価格競争」という課題を抱えており、現実的には拡大が難しい(図1)。
そこで、今回の推進事業では、これらの課題を解決するために、蓄電池を群制御する「アクティブグリッド」技術を活用。同技術を用いてインバランスを抑制するシステムを構築し、これらの課題の解決を目指す。これにより地域PPSモデルの実現を容易にし、市場の活性化を促進していくとしている(図2)。
蓄電池を群制御する「アクティブグリッド」
今回、みやま市とエプコが構築する地産地消エネルギーシステムは、既存電力システムと需要家・分散電源との間に「ネットワーク制御された蓄電池網(能動的に電力の出し入れをする仮想電力網、アクティブグリッド)」を挟み込む仕組みだ。
電力システムを見た場合、上層側の既存電力システムにとっては、計画的な発電と需要が望ましい。一方で下層側の需要家・分散電源にとっては、必要なときに必要なだけ電力を消費・発電するというのが理想だ。電力システムとして、これらの要求レベルが異なる需要と供給を常に一致されることが求められる。これらの需要と供給の調整池としてアクティブグリッドを活用するというわけだ。
アクティブグリッドにより上下層の要求を両立させつつ、既存電力システムと融合した仮想的なマイクログリッド(小規模な地域内で太陽光発電や蓄電池などを組み合わせて電力を合理的に供給する地域インフラ)を実現する。併せて、地域PPSの需給インバランスの抑制を行い、再生可能エネルギーが持つ「自然エネルギーとしての不安定性」を緩和し、計画利用が行えるようにするという。アクティブグリッドは仮想網であるため、規模の拡大が容易で、規模が大きくなればなるほど調整力が増すという利点も備えている(図3)。
福岡県みやま市は、農業を主業とした人口4万人の小都市だが、2015年4月には電力小売事業を開始するなど、電力自由化の動きに合わせてさまざまな先進的取り組みを行っている(関連記事)。
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