地熱発電の開発プロジェクト、資源が豊富な大分県・九重町で:自然エネルギー(2/2 ページ)
九州電力は新しい地熱発電所の建設に向けて、大分県の九重町で5月から資源調査を開始する。九重町は日本最大の地熱発電の集積地だが、これまで開発対象になっていなかった地域で調査に乗り出す。地下の構造を推定する地表調査や温泉のモニタリング調査を実施して地熱発電の可能性を探る。
近隣の地区でも地熱発電所を開発中
日本では地熱資源が豊富な地域の多くが国立公園などの保護地域に含まれている。九重町の一部は「阿蘇くじゅう国立公園」に指定されているため、指定地域内では地熱発電所の建設にも制約がある。
九州電力が地表調査を実施する山下池の周辺も国立公園の特別地域に入っているが、池の南側は2キロメートルほどで国立公園からはずれる(図5)。九州電力は詳細な調査地点を公表していないが、規制対象にならない場所で開発を進めていくとみられる。
同じ九重町の別の場所でも九州電力は開発プロジェクトを進めている。山下池から南へ10キロメートルほど離れた「平治岳(ひいじだけ)」の北部が対象だ(図6)。2013年度に地表調査に着手して、現在は第2段階の探査に移行している。
開発対象の平治岳の北部は国立公園の特別地域に含まれている。ただし環境保護の重要度が低い第2種・第3種地域のため、地熱資源の開発が認められている。大分県のほかに全国各地の国立公園の内部や周辺地域で地熱発電所の開発プロジェクトが数多く進行中だ(図7)。すでに運転を開始した事例も出始めた。
九重町内では九州電力グループの九電みらいエナジーが「菅原バイナリー発電所」を2015年6月に稼働させたのに続いて、出光興産グループが滝上発電所の構内に「滝上バイナリー発電所」を2017年3月1日に運転開始した。いずれも発電能力は5000kW級の中規模な地熱発電所である。
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