国内初の「再エネ・クロス発電」が始動、1つの系統枠で太陽光と風力を同時運用:自然エネルギー
東光電気工事が1つの系統連系枠内で、太陽光発電と風力発電を同時に運用する「再エネ・クロス発電」を行う国内初の発電所の運用を開始。単独で発電を行うより、設備利用率を高められるのが特徴だという。
東光電気工事は9月4日、福島県飯舘村で1つの系統連系枠内で太陽光発電と風力発電を同時に運用する「再エネ・クロス発電」を行う「いいたてまでいな再エネ発電所」が営業運転を開始したと発表した。
再エネ・クロス発電とは、太陽光発電所に風力発電設備を増設することで、発電効率を向上させる仕組み。連系枠の契約電力量を超えないように太陽光発電と風力発電の出力を制御することで、発電所のポテンシャルをフル活用することができるという。
同発電所の太陽光発電設備の出力は11.8MWで、ここに出力6.4MWの風力発電設備を増設した。これらの2つの設備を、10MWの連系枠の中におさまるよう運用していく。
太陽光発電と風力発電の単体での設備利用率はそれぞれ約14〜15%、約22%前後だが、2つを連系させることで全体の利用率を30%近くまで引き上げられるという。既設発電所の連系枠を活用して他の再エネ電力を連系する事業は、国内初の取り組みになるとしている。なお、東光電気工事では再エネ・クロス発電の仕組みおよび名称について、特許と商標登録を取得している。
発電所の年間発電量は2万7000kWhを見込み、これは一般家庭約4100世帯分の消費電力に相当するという。
いいたてまでいな太陽光発電所は、東光電気工事が55%、飯舘村が45%を出資して設立した特別目的会社が運営を行っている。EPCは東光電気工事が担当した。飯舘村は東日本大震災の影響で大きな被害を受けた地域で、復興計画の柱に再生可能エネルギーの活用を掲げており、同発電所の売電収益は村の復興に生かされる。
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