東芝が“燃えない”リチウムイオン電池を新開発、低コスト化の実現も:蓄電・発電機器
東芝がマイナス30℃でも運用できる水系リチウムイオン二次電池を世界で初めて開発したと発表。電解液に水を用いる電池で、外部要因で火災が起きた際にも安全なのが特徴だという。今後早期のサンプル提案を目指すとしている。
東芝は2020年11月19日、マイナス30℃でも運用できる水系リチウムイオン二次電池(以下、水系電池)を世界で初めて開発したと発表した。電解液に水を用いる電池で、外部要因で火災が起きた際にも安全なのが特徴だという。今後早期のサンプル提案を目指すとしている。
太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、天候に左右される出力変動を吸収するため、蓄電池の需要が高まっている。蓄電池にはリチウムイオン二次電池が採用されるケースが多いが、3.7V以上の高い電圧を維持するため、一般的に電解液には可燃性有機溶媒が利用されている。
今回東芝が開発した水系リチウムイオン二次電池は、負極に黒鉛ではなく燃えないリチウムチタン酸化物(LTO)を採用。加えて、安全性をより高めるため、外部要因で火災が起きた際の安全性にも考慮し、電解液に不燃性水溶液を採用した。
これまでの水系電池は、長期間運用すると水溶液の電気分解反応が進行するため、充放電反応が進まない点が課題だった。そこで東芝はリチウム塩の濃度が高い高濃度電解液と固体電解質セパレーターを組み合わせた独自の電池構造を開発。正極側から負極側への水素イオンの移動を防ぐことで水溶液の電気分解を抑制した結果、従来技術の10倍となる約2000回以上の充放電を実現したという。また、水系電池としては高い2.4Vの電圧も達成。さらに、低温でも凍らない水溶液を使うことで、マイナス30℃でも充放電が可能となった。
可燃物を含まず消防法の危険物に該当しないため、設置する際の安全対策を従来よりも大幅に簡略化することが可能だという。また、設置場所の制限も緩和されるため、住居近くやオフィスビル内にも設置が可能となる他、電解液に水を使うことで、製造設備の簡略化による低コスト化も期待できるとしている。
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