災害時の防災対策、太陽光や蓄電池を低コストに導入するには?――群馬県吾妻郡の事例:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
災害時に命を守る大きな役割を果たす防災施設。非常時を想定し、太陽光発電や蓄電池などを導入したいが、コストが課題――そうした際に活用したいのが、国の助成事業だ。パナソニックが手掛けた群馬県吾妻郡の助成事業活用例を紹介する。
町の公共施設の防災他応力も向上
高山村の保健福祉センター、東吾妻町の役場庁舎・コンベンションホールでは、以下のような設備が導入された。これらによって、災害時の対応力が上がると同時に、年間のエネルギーコストと排出CO2が削減できるようになった。
高山村保健福祉センターは、保険・福祉業務の事務所、デイサービスセンター、児童館・保育所の機能を持つ。施設の供用から20年以上が経過し、設備の老朽化が目立っていた。これをリニューアルすることで災害に強い施設となると同時に、運用コストも大幅に減少した。
この施設では、約3億4000万円の総事業費のうち、約2億4600万円の助成金が受けられた。
中学校は避難時の安全性と利便性を向上
嬬恋中学校は、今回のリニューアルで校舎内と体育館の照明をLED化。リモコンで明るさを調節できるタイプで、体育館は舞台に近い箇所と遠い箇所を別々にON/OFFできるようになっている。これによって、文化祭の出し物などで照明の演出が可能になったという。
発電・蓄電関係では、古いタイプの太陽光パネルを新しいものに交換している。また、33.6kWhの蓄電池を導入し、避難所としての機能を強化した。スマートフォンを同時に60台充電可能な非常用コンセントも設置された。
状況や目的に応じて、必要な設備を柔軟に導入可能に
災害発生時の避難所には、学校や役所などの公共施設が指定されていることが多い。2019年の台風19号でも役場や学校などに避難所が開設された。しかし、当時は停電で照明が使えず、スマートフォンも充電できないような状況での避難は、住民に大きな不安を与えたようだ。
パナソニックが取り組む「防災対策リニューアル」の活動では、そのほとんどで太陽光発電と蓄電池を導入する。また、照明には消費電力が少ないLEDを使う。これによって、災害時に停電が発生しても照明が確保できる。災害時にスマートフォンなどを充電できる非常用コンセントも装備可能だ。施設や目的に応じ、最適な設備を選択できるのが、この施策の利点だという。
もちろん、これらの設備は平時にも稼働する。太陽光による発電やGHPによる空調、さらにエネルギーマネジメントシステムによる制御などによって、CO2の排出を抑えると同時に年間のエネルギーコスト削減にも大きく寄与することになる。省エネを実現しつつ災害時の避難施設としての機能が強化される仕組みだ。
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