今後の太陽光・風力の出力制御はどの程度か? 長期見通しと低減策の試算結果:エネルギー管理(5/5 ページ)
再生可能エネルギーの大量投入に伴い、近年多くのエリアで実施されるケースが増えている「出力制御」。発電事業の運営にとって非常に重要な出力制御の今後の見通しが公開された。
今後の再エネ出力制御見通し算定結果
以上の前提条件を元に、東北エリアの2031年度の太陽光・風力(無制限無補償ルール)の出力制御見通しを算定したものが、表5である。需要等は年度ごとに変動するため、直近の2019〜2021年度算定結果を平均した数値である。
これまで出力制御の試算では、再エネ出力制御回避措置の一つとして、地域間連系線の活用を想定してきたが、上述のとおり、軽負荷期には中三社においても他エリアからの受電が出来ないことが予想されている。このため今回初めて、受電エリアの受電可能量を考慮した連系線活用における出力制御についても、試算を行った(※ただし、ケース1の2021年度算定結果のみ)。
この結果、特に北陸や四国エリアでは、受電エリアの受電可能量を考慮する場合、連系線が空いていたとしても、十分に他エリアに送電できないため、再エネ出力制御率が大幅に悪化することが明らかとなった。
再エネ出力制御の低減対策とその効果
再エネ出力制御を低減するための対策としては、上げDRなどの需要面での対策のほか、火力等の出力をさらに下げる供給面での対策や、地域間連系線を通じて他エリアへの送電量を増やす系統面での対策などが考えられる。
具体的には、以下の対策が講じられた場合に、各エリアの出力制御率がどのように変化するかを試算した。
東北エリアにおける、これらの出力制御低減策を踏まえた出力制御見通しは、表7のとおりである。ただし、この試算はケース2の2021年度算定結果であり、上記試算とは前提条件が異なることに留意願いたい。
これら3種類の対策の効果の大きさは、エリアごとに異なる結果となっている。例えば相対的に風力の導入量が多いエリアでは、蓄電した電力を放電する機会に乏しいため、蓄電池導入の効果が小さめとなる。また、すでに火力最低出力の引き下げが進んでいるエリアでは、追加的な最低出力引き下げの効果が小さめとなる。
今後の展望
再エネの出力制御「率」は、再エネ電源の設備容量の増加に伴い、増加傾向にある。他方、蓄電池価格の低下や、余剰電力を活用した水素・アンモニアの製造など、新たな電力需要の増加も見込まれている。
現在、電力スポット価格は0.01円/kWhが下限とされているが、ネガティブプライスが実現するならば、水素等の製造(Power to Gas)も拡大すると予想される。出力制御率の高いエリアには新しい商機があると捉えると同時に、その実現を阻害せぬよう制度改革が進められることを期待したい。
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