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容量市場を補完する「予備電源制度」――調達量と費用負担の概要法制度・規制(4/5 ページ)

2024年度以降に本格的な運用がスタートする容量市場。政府では容量市場を通じた調達量の抑制と、控除量のリスクをカバーするための対策として「予備電源制度」の創設を検討中だ。このほど同制度の調達方式や費用負担に関する詳細が議論された。

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必要供給力と容量市場における調達量、予備電源の関係

 ここで、日本全体の必要供給力と容量市場における調達量、予備電源の関係を図示したものが図5である。今後、必要な供給力は、容量市場メインオークションと追加オークションにより調達することが原則である。

 「予備電源A」の部分は、大規模災害等、もともと容量市場が想定していない事象への備えとして調達される予備電源である。

 「予備電源B」は、先述のように容量市場から「控除」した供給力相当量に対する、供出の蓋然性を高めるための「保険」的な位置付けの予備電源である。


図5.必要供給力と容量市場における調達量、予備電源の関係 出典:制度検討作業部会

 制度検討作業部会では、予備電源Bは、実需給に近い段階で立ち上げの判断を求められるため、短期(3カ月程度)で立ち上げ可能な予備電源を充てることとしている。

 他方、予備電源Aは、長期(10カ月〜1年程度)で立ち上げる予備電源を中心に充てていくこととされてきたが、大規模災害等の発生時には、実際には短期立ち上げ電源を含むあらゆる電源を活用することと考えられる。

予備電源A・Bの調達量

 上述のとおり、2023年度(実需給2027年度)容量市場メインオークションからの控除量は約120万kWとした。予備電源Bは、この控除に対する「保険」であるため、必ずしも控除量全量に相当する予備電源を確保する必要はない。

 ただし、予備電源は東西のエリアでそれぞれ確保することや、短期立ち上げの予備電源は大規模災害等が発生した場合でも活用し得ることから、短期立ち上げの予備電源の調達量は、100〜200万kW程度とする案が示された。現時点、具体的な調達量は未定である。

 なおこの場合、予備電源Bの調達量は、当初の「保険」目的を大きく超えて、容量市場メインオークション控除量と同水準〜2倍近くの規模となる。この点に関してエネ庁事務局では、約定価格の低下を通じて容量市場における調達費用が抑制され、総コストではメリットがあると説明している。

 長期立ち上げの予備電源Aの必要量については、大規模災害時等の備えという位置付けに鑑み、東日本大震災や2022年の福島県沖地震の事例に加え、容量市場での稀頻度リスクがH3需要の1%であることも踏まえ、300〜400万kW程度(H3需要の2〜3%程度)とする案が示された。

 ただし、短期立ち上げの予備電源も大規模災害時に活用することを見込むならば、「長期立ち上げ」として調達すべき予備電源は、200〜300万kW程度に抑制できる。

 以上のように、現時点の事務局説明では予備電源A/B、短期/長期立ち上げ、の仕分けが明確ではないが、概ね図6のような関係性であると考えられる。予備電源の目的と、それを達成するための手段について、一層の明確化が望まれる。


図6.予備電源A/B、短期/長期立ち上げの関係性 出典:筆者作成

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