FIP電源の出力制御順はFITの後に、エネ庁が「市場統合措置」の導入案を公表:第66回「再エネ大量導入小委員会」(3/4 ページ)
資源エネルギー庁はFIT制度からFIP制度への移行促進に向け、新たな施策の検討を開始した。はやければ2026年度から、再エネ電源に対する出力制御の順番を「FIT→FIP」の順に変更する。
「市場統合措置」の導入案の概要
FIP電源は、平常時においても事業者の収入が取引所スポット価格に連動するため、FIT電源と比べるならば、相対的に需給バランスへの貢献度合いが高いと言える。また、出力制御指令時には、先述のプレミアム単価の調整により、一段強いタイムシフトへのインセンティブを持つと考えられる。
よって、潜在的な電力需給バランスへの貢献可能性という価値を適切に評価するという観点から、出力制御の取扱いにおいて、FIT電源とFIP電源で一定の違いを設けること自体は、公平性に問題を生じないと考えられる。
そこでエネ庁事務局では、FITからFIPへの移行を促進する一つの策として、出力制御の順序を変更することを提案している。具体的には図5左のように、「バイオマス」及び「太陽光・風力」それぞれのカテゴリーにおける制御は、FIT電源→FIP電源の順とする。エネ庁では、この変更を「FIT電源とFIP電源の間の公平性を確保するため」と説明している。
この順序変更により、当面、FIP電源(太陽光・風力)は多くのエリアでは出力制御の対象とならないと想定されている。ただし、FIT電源だけでは制御量が不足する日には、安定供給確保のため、FIP電源も制御対象となる。
他方、FIT電源が出力制御される確率は大きく高まると考えられる。今回の見直しは、FIPへのインセンティブ付与と同時に、FITに残ることのデメリットを強める策であると考えられる。なお、無補償での出力制御の上限枠(旧ルール年間30日、新ルール360時間)は維持されるため、制度の遡及的変更には該当しない。
この出力制御順序の変更には一般送配電事業者のシステム変更が必要となるため、実施は早くとも2026年度になる見込みである。
さらに別途、FIT/FIP全体の約25%がFIP電源に移行するまでの当面の措置として、FIP電源に係る蓄電池の活用や発電予測などを支援することにより、FIP電源への移行を後押しする。
この補助原資としては、調達単価の高いFIT電源が出力制御されることによる調達費用総額の抑制メリットが充てられる。また現在、FIT電源(FIT特例)で生じた出力予測誤差は、三次調整力②にて対応しているが、FIT電源が減少することにより、三次調整力②調達費用も低減可能と考えられる。
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