拡大する日本の最大電力需要 系統容量確保の実態と見直しの方向性:第2回「次世代電力系統WG」(3/4 ページ)
データセンター投資や半導体工場の新設などの影響により、今後さらに拡大する見通しの最大電力需要。これに対処するための効率的な電力系統運用の確立に向け、「次世代電力系統ワーキンググループ」の第2回会合では、需要家側の系統接続に関する課題が議論された。
需要側の設備形成・費用負担の在り方
印西・白井エリアの例のように、大規模需要の局地的な立地が進むと、上位系統の大規模な対策工事が必要となる。現在、上位系統は、特定の需要家だけではなく幅広い系統利用者が利用するものであるという整理により、上位系統の増強工事費用は全額を一般負担としている。
大規模需要家が上位系統における工事費用の大小を考慮することなく立地することは、需要家間の公平性を損なうとともに、非効率な設備形成となるおそれがある。また、系統設備とDC等の設備では、実際に使用可能な期間や減価償却期間が異なることにも留意が必要となる。
すでに電源側では、受益者負担を基本とした上位系統増強の費用負担割合が整理されており、今後は需要側についても、公平な費用負担の在り方について検討することとした。
自治体との連携
第7次エネルギー基本計画では、「一般送配電事業者が地方公共団体等の関係機関と連携し、適地における先行的・計画的な系統整備を促す仕組みを検討する」と記されている。
産業政策の観点から、DCを誘致し立地の公募を行っている自治体もあるが、系統の空き容量のない地域の場合、非効率な系統整備を招くおそれもある。一般送配電事業者が系統の空き容量のある地域の自治体に対して、系統情報等の提供を行うことにより、効率的・合理的な系統整備のもとで、DC等の大規模需要家の速やかな誘致が可能となると期待される。
一般送配電事業者各社は、短期に電力供給を開始できる場所を示した「ウェルカムゾーンマップ」の公開を行っているが、自治体との連携では、より詳細な情報を提供することが想定されている。
こうした取組を進めるに際しては、需要家間の公平性を確保するとともに、投機的な土地確保や容量確保を誘発しないようにすることが重要であり、一般送配電事業者から自治体への情報提供に当たっては、情報の利用に関して条件を付す等の対応を取ることが考えられる。
系統設備の最大限活用(系統容量確保の適正化)
印西・白井エリアの例のように、現行制度では、実需要の裏付けが乏しい場合であっても、DC等の需要家は、過大な系統容量を確保することが可能となっている。これは後発事業者を不利にするおそれがあり、非効率な設備形成により、託送料金の上昇も懸念される。
よって、DC等の大規模需要家が、将来的な自社設備の拡張性を確保することだけを目的とした過大な接続申込みを抑制していくことも必要であると考えられる。
この対策としては、実態の伴わない系統容量確保分については、一般送配電事業者によって解放出来る仕組みを設けることや、系統増強工事の施工開始後に自社需要計画の下方修正や送電開始日を延期した大規模需要家に対して、計画の変更に伴う追加の費用負担を請求する仕組みを設けることなどが考えられる。
次世代電力系統WGでは、まずは、DC等の大規模需要家に対して任意での協力を求め、託送供給等約款の見直し等の対応を検討することとした。
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