プライム市場上場企業 2027年3月期からサステナビリティ開示基準の適用義務化へ:「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG」中間論点整理(2/5 ページ)
金融庁が2024年3月に立ち上げた「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」は、有価証券報告書における情報開示や第三者保証制度 などについての中間論点整理を公開した。
日本におけるサステナビリティ開示基準
日本におけるサステナビリティ開示基準の設定主体であるサステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2025年3月に、サステナビリティ開示に関する「適用基準」「一般基準」「気候基準」の三つのSSBJ基準を公表している。
SSBJ基準では、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る、報告企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報(それらのリスク及び機会に関連する企業のガバナンス、戦略及びリスク管理並びに関連する指標及び目標に関する情報を含む)を提供する開示を「サステナビリティ関連財務開示」と定義し、これについての情報開示を求めている。
各国でサステナビリティ情報開示の制度化が進む中、日本企業が開示するサステナビリティ情報についても国際的な比較可能性を確保することで国内外の投資家から評価を得ることや、グローバルに展開する日本企業が各国における開示に係る実務負担を軽減することは重要である。
この点、SSBJ基準は、ISSBから、ISSB基準との機能的な整合性が確保されている旨の確認を受けており、国際的な比較可能性を確保し、投資者に有用な情報を提供するための開示基準として妥当なものと言える。
よってWGでは、SSBJ基準を金融商品取引法令に取り込み、有価証券報告書においてSSBJ基準に準拠したサステナビリティ情報の開示を義務付けることが適当と結論付けている。
SSBJ基準の適用対象企業
ISSBは、ISSB基準と機能的な整合性が確保された基準に基づくサステナビリティ開示制度を導入する際の指針「法域ガイド」を公表しており、各法域における導入プロセスを2029年末までに完了すること等を求めている。
同ガイドでは、公的説明責任のある企業の全て又は大半(all or most)に対して、ISSB基準又はISSB基準と機能的な整合性が確保された基準を適用した状態を持ってISSB基準が完全に導入された状態と捉えており、「大半(most)」とは企業数ではなく、各法域におけるGDPや主要な株式指数銘柄の時価総額全体に対するサステナビリティ情報開示が強制されている企業の割合によって判断することしている。
東京証券取引所のプライム市場では上場企業間の規模の差が大きく、株式時価総額1兆円以上のプライム市場上場企業(171社)が、東京証券取引所全上場企業の株式時価総額合計の7割超を占める状況となっている。
このためWGでは、当該企業までをSSBJ基準の適用対象とすることにより、「法域ガイド」にいうISSB基準が完全に導入された状態が達成されたと言い得ると想定し、議論が行われた。
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