ペロブスカイトなど次世代型太陽電池の普及促進へ エネ庁が実装加速連絡会を開催:第1回「次世代型太陽電池の実装加速連絡会」(3/3 ページ)
ペロブスカイト太陽電池などの次世代型太陽電池の導入拡大に向けて、資源エネルギー庁が新たに「次世代型太陽電池の実装加速連絡会」を開催。その第1回会合では、自治体、民間の需要家や太陽電池メーカーを中心とした実務担当者の間で情報共有が行われた。
アンケート調査から見る次世代型太陽電池の導入課題
環境省は、次世代型太陽電池補助事業の円滑な実施につなげるため、官民協議会に参画している自治体・民間企業279者を対象に、アンケート調査を実施した。回答数は148者(自治体104者、民間44者)である。
アンケートの回答では、自治体の39%、企業等の36%において、次世代型太陽電池の導入について「予定あり」又は「検討中」としており、それらの設備容量は合計で、2025年度828kW、2026年度1,728kW、2027年度以降 91,470kWであった。
なお、現在のフィルム型ペロブスカイト太陽電池導入補助事業の要件の一つが、「設置場所の耐荷重が10kg/m2以下相当であること」である。これは屋根自体の積載荷重ではなく、既存の設置物等を考慮した上で太陽電池を設置する際の差分の耐荷重を意味している。
耐荷重に関するアンケート結果は図5のとおりであり、設置予定場所の耐荷重が「計算困難」や「不明・回答なし」との回答が8割を超えており、耐荷重要件により補助事業に応募できないことが課題とされている。
フレキシブル太陽電池の設置・施工ガイドライン
太陽光発電設備の設置・施工に際しては、台風・積雪・豪雨などの災害に対する安全性等を十分に考慮することが求められる。このためNEDOではこれまでも、「地上設置型」「傾斜地設置型」「営農型」「水上設置型」「建物設置型」「壁面設置」等の太陽光発電システム設計・施工ガイドラインを作成・発行してきた。
ペロブスカイトを含むフレキシブル太陽電池についても新たな知見が必要とされるため、国は有識者ワーキンググループにおいて、モデルケースとなる設置・施工方法や安全性に関する事項を整理し、今年度中に、設置・施工ガイドラインを作成・公表することとした。ガイドラインは、今後も製品の仕様や設置・施工技術の進展を反映し、随時アップデートを行う予定としている。
タンデム型太陽電池の競争激化
タンデム型太陽電池とは、太陽光の異なる波長を吸収する、異なる材料を積層させることにより、従来のシリコン太陽電池と比べると変換効率が1.5〜2倍程度向上する次世代型太陽電池の一つである。同じ設置面積から、より多くの電力が得られるため、新規設置だけでなく、既設のシリコン太陽電池からのリプレース需要も期待されている。
タンデム型の一例として、最も安価な結晶シリコンをボトムセルとして、これに重ね合わせるトップセルやミドルセル太陽電池として、ペロブスカイトやCIGS(カルコパイライト)等の様々な素材の研究開発が進められており、国内ではカネカが、ペロブスカイト/結晶シリコンのタンデム型で変換効率32.5%を達成している。
ただし、タンデム型太陽電池、特にペロブスカイト/結晶シリコン(ガラス型)ではすでに世界的に研究開発及び商用化に向けた競争が激化しており、今後、日本メーカーがどのようなポジションを確保すべきか検討が求められている。
官民協議会では、2030年度のコスト目標として、住宅用シリコン太陽電池相当の14円/kWhを下回る水準を念頭に、時間軸を踏まえた産業戦略や重点を置くべき市場・技術目標などについて、検討を行う予定としている。なお、次世代型太陽電池の「実装加速連絡会」は、官民協議会のメンバーか否かを問わず参加可能であり、関係者の積極的な参加が期待される。
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