「GX戦略地域制度」の企業投資向け支援 補助金等を脱炭素電源地域への貢献度で調整へ:「GX産業構造実現に向けたGX産業立地WG」(4/4 ページ)
データセンターの急増など電力分野への影響の大きい経済活動の変化が進む中、政府は脱炭素化と経済成長の両立を目指して「GX戦略地域制度」を創設する方針を掲げている。こほのど同制度における各種の規制・制度改革と支援策の方針が公開された。
自治体向け「GX産業団地」に係る支援
まず「GX産業団地」の造成に取り組もうとする脱炭素電源自治体については、一定の基準を満たすことを前提に「GX戦略地域」として国がその計画全体の総合サポートを行うとともに、既存の制度枠組みも活用しつつ、「①『GX産業団地』の整備」「②脱炭素電源等の整備」「③当該団地への進出企業支援」を一体的に提供していくこととする。
「脱炭素電源活用型(GX産業団地)」の選定については、1段階の選定プロセスとして、要件に合致する自治体については、可能な限り多くのチャレンジを支援することにより、さまざまな創意工夫のある取り組みを引き出すこととする。
企業向け「脱炭素電源活用型」GX戦略地域に係る支援
また、GX産業団地への企業立地の誘導を図る観点から、「GX産業団地へ進出(立地)し、脱炭素電源を活用しながらGX関連投資を行う事業者」に対する投資支援を行うこととする。
このとき、脱炭素電源立地地域に対する企業の貢献の度合いには濃淡が生じ得るため、当該企業に対する支援の強度(補助金等の大小)は、貢献度合いに応じて調整することとした。
「脱炭素電源地域への貢献・裨益」という評価軸では、企業が実際にGX産業団地へ進出・立地することが最も望ましく、域外に立地しながら、地域共生基金への寄付や企業版ふるさと納税等を通じて脱炭素電源立地地域に貢献する方策も一定の評価が行われる。
また、「脱炭素電源との紐付き」という評価軸では、自家発自家消費やPPA等の直接契約が最も望ましく、小売電気事業者を通じた脱炭素電力メニューや証書の利用も評価される。なお、脱炭素電源の導入にあたっては、地域との共生が大前提となる。また、「脱炭素電源の供給増への貢献」という評価軸では、新設・再稼働電源の活用が最も望ましいとされる。
以上より、当該電源地域(GX産業団地)に企業立地/PPAの活用/新設・再稼働電源の活用、という組み合せが最も高い評価を得た場合、当該企業への支援額が最大となる。
このようなGX投資支援方式とすることで、企業の立地はGX産業団地内に限定されず、全国で活用可能となるため、企業側では使い勝手の良い仕組みと考えられる。一方、電源地域側では産業用地としての総合的な魅力を高めることが求められる。
「GX戦略地域」制度に関する提案募集
経済産業省は「GX戦略地域」制度の開始に向けて、自治体や事業者からの具体的な事業計画や希望する規制・制度改革の意見等を募集しており、2025年10月6日時点での受付件数は、コンビナート等再生型で9件、DC集積型で52件、脱炭素電源活用型で16件、合計77件である。
経産省はこれらの提案を踏まえて本制度の詳細を策定し、具体的な「GX戦略地域」の公募・選定手続きを実施する予定としている。
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