系統用蓄電池による「空押さえ」対策 契約申請の「土地取得」を要件化へ:第5回「次世代電力系統WG」(2/4 ページ)
系統用蓄電池の系統アクセス手続きが急増する中で課題となっている「空押さえ」の問題。資源エネルギー庁の「次世代電力系統ワーキンググループ」の第5回会合では土地取得を申請条件に加えるなど、その新たな対応策が議論された。
「接続契約」の申し込み時点における土地取得の要件化
現行の接続契約申し込みプロセスでは、申込者は系統接続を行う予定の土地の取得は必須ではなく、事業用地における使用権原の確認は行われていない。これが、系統接続の権利(契約)だけを確保する「空押さえ」増加の一因となっている。
他方、FIT/FIP制度の再エネ電源については、事業の確度を確認する観点から、認定時において事業用地の使用権原を証する書類の提出が原則求められている。
よって今後は、系統用蓄電池による「空押さえ」を避けるため、接続契約申し込みの時点で、事業用地における使用権原を証する書類の提出を契約要件として、使用権原の取得が確認できない場合は、申し込みを取り下げ扱いとすることとした。
土地取得要件化の適用開始時期や対象電源、使用権原を証する書類の提出タイミング等については、引き続き検討予定としている。
他方、自社では蓄電池の設置・運用をせず、先行的に土地を確保したうえで、接続契約申し込みを行い、土地と系統接続の権利(契約)をセットで他社へ売却する新しいビジネスモデルも現れている。
これ自体は問題とならないが、蓄電池等が長期間にわたり連系されない場合、実質的に仮押さえと同じ状態となるため、他の事業者の迅速な系統接続の妨げとなるおそれがある。
エネ庁では、系統容量確保時の保証金や系統容量開放ルールの強化等を含め、このようなビジネスモデルへの対策の必要性について検討を深める予定としている。
系統用蓄電池の接続検討に資する情報公開
蓄電池等の系統接続を円滑化するためには、接続検討申し込みにおける規律強化だけでなく、蓄電池等の立地検討に役立つ情報公開を進めることも重要である。
これまで一般送配電事業者は、逆潮流(発電側)の把握に役立つ情報として空き容量(予想潮流)マップや潮流実績等の情報公開を行い、順調流(需要側)に役立つ情報として「ウェルカムゾーンマップ」を公開してきた。
充放電を行う系統用蓄電池では、逆潮流・順調流両方の情報が重要であり、一層の情報の拡充が期待される。例えば、東北エリア(東北電力ネットワーク社)では、系統用蓄電池の接続検討申し込みに対する154kV以上の系統増強工事の要否に関する回答状況を公開している。
「系統増強工事が必要」とされた県で系統接続できないわけではないが、154kV以上の系統増強に要する工期は一般的に5〜10年以上であるため、蓄電池等の事業者は立地選定の参考情報とすることができる。他エリアでも同様の情報公開が進むことが期待される。
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