排出量取引制度、上限価格への張り付き予防に「過度なバンキング」を制限へ:第9・10回「排出量取引制度小委員会」(3/4 ページ)
2026年4月からスタートした排出量取引制度(GX-ETS)の第2フェーズ。2027年秋頃に予定する「排出枠取引市場」の開設に向けて、経済産業省の「排出量取引制度小委員会」第9・10回会合では、上限価格に係る「みなし保有措置」、下限価格に係る「リバースオークション」、過度な「バンキング(繰越し)」を予防するための措置などについて検討が行われた。
「バンキング」適正化措置の必要性
国があらかじめ税率を定める炭素税やこれに類する「化石燃料賦課金」とは異なり、排出量取引制度において、炭素価格は市場取引により事後的に定まるものである。制度対象者は自社の単位削減コストと排出枠価格を比較し、経済合理的に排出枠を売買することにより、制度全体としての適正な炭素価格が発見されることとなる。
一般的に排出削減が進むにつれ、企業の限界削減費用は上昇するほか、カーボンニュートラルに向けて次第に制度が強化されるに伴い、排出枠価格も上昇すると想定される。
よって、異なる時点間の排出枠コストと削減投資を平準化するための一つの措置として、排出枠の「バンキング(繰越し)」が認められている。バンキングの活用により、合理的なタイミングでの削減投資や事業活動の変動に対応することが可能となり、義務履行に柔軟性が与えられる。
GX-ETSでは、制度初期におけるセーフティバルブとして、2030年度までの間は、現時点の削減対策費用を基礎として相対的に安価な「上限価格」を設定しているのに対して、2031年度以降の扱いは未定であり、予見性に欠ける状態となっている。
制度対象者がリスク回避的に行動するならば、現在無償で配布される排出枠をなるべく手元に残すため、必要以上にバンキングすることも想定される。
無制限にバンキングが認められる場合、十分に排出枠が市場に供給されず、適切な価格形成が阻害されるおそれがある。排出枠が上限価格に張付く場合、先述の「みなし保有措置」により、実質的に排出枠が追加的に割り当てられ、排出枠の需給バランスを中長期にわたりかく乱することも懸念される。
よって排出量取引制度小委員会では、バンキングに一定の上限を設ける「バンキング適正化措置」を導入することとした。
バンキング適正化措置のイメージ
バンキングなどによる排出枠の余剰に対し、EU ETSのように市場全体のオークション供給量を調整する方法も考えられるが、GX-ETS第2フェーズでは、国による排出枠オークションは実施しないため、制度対象者個社に対して余剰排出枠の売却を促す方式を採用することとした。
具体的には、全制度対象者に共通して一定割合のバンキング可能量を設定し、これを超える余剰量のうち、市場売却を行わなかった量を後年度における割当量から控除する。割当量の削減を避けるため、制度対象者は自主的にバンキング量を閾値以下に抑えると予想される。
バンキング可能量の閾値
GX-ETS第2フェーズでは、排出枠の割当に際し、活動量が過去2年度平均で基準年度から7.5%以上、増加・減少した場合には、翌年度の基準活動量を直近2年度平均に更新して割当てを行うこととしている。逆に言えば、2年間合計で活動量が14.9%増加したとしても、活動量の更新は行われず、排出枠の追加割当も行われないことを意味する。
企業が脱炭素投資を行ってもなお起こり得る、このような排出枠の不足に備えたバンキングを行うことは合理的であるため、年間割当量(控除量算定の2年度前)の「15%」をバンキング可能量の閾値とすることとした。
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