「イジメ」「逆風」に屈しなかったイチローのスゴさ:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)
大リーグのイチローが金字塔を打ち立てようとしている。メジャー通算3000本安打まで残り65本、日米通算でいえば、最多安打を誇るピート・ローズ氏の4256安打にあと43本。「やっぱりスゴいなあ」と思われたかもしれないが、そのイチローも海を渡った直後は苦労を味わっていた。それは……。
日本人プレーヤーを見下す風潮が残っていた
日本プロ野球で幾多もの記録を作り上げ、日本を代表する野手であったものの移籍当初、メジャーリーグでの成功については米国の有識者やファンの間で否定的な声も少なくなかった。
「日本でやってきたことがメジャーリーグで、そのまま通用すると思ったら大間違いだ」「内野安打ばかり打つスタイルは、3A(メジャーリーグの下部組織)と同等の日本プロ野球だからこそできたこと」「あんな細く小さい身体で一体何を見せられるのか」――。これらは2000年11月19日にマリナーズ入りが決まった直後、米スポーツ専門局『ESPN』に寄せられて同局番組内で匿名を条件に公開された複数のメジャーリーグ球団のスカウティング担当者たちからのイチロー評だ。
しかもその当時、ESPN解説者で現役時代にレッズなどで投手として活躍したロブ・ディブル氏は同局のラジオ番組内において「日米の野球にはレベルの差があるからイチローがメジャーリーグで成功することは有り得ない」と断じたばかりか「彼が首位打者を獲ったらニューヨークのタイムズ・スクエアを素っ裸で走る。3割を超えても競泳用の水着で同じことをやると約束する」とまで言い切っていたほど。よくもここまで酷評できるなと逆に感心してしまうが、まだ当時のメジャーリーグはこういう具合に日本人プレーヤーを見下す風潮が一部に残っていた。
ロサンゼルス・ドジャースに移籍して道を切り開いた日本人メジャーリーガーのパイオニア・野茂英雄氏が全米にトルネード旋風を巻き起こしてから5年が経過し、十分過ぎる実績を積み重ねていた。それにも関わらず「日本人は一流メジャーリーガーになれない」という概念のような妄想を自称“崇高な彼ら”は抱いていたのだ。そこには「日本人=黄色いサル」というようなタブーとされる人種差別的な要因が多少なりとも絡んでいたことは残念ながら否定できない。
そういう冷たい視線は当然、マリナーズに入団した直後のイチローに冷たく突き刺さった。アリゾナ州ピオリアで行われるマリナーズのスプリングトレーニング(春季キャンプ)に合流し、ここでチームメートたちと初めて顔合わせした時のこと。笑顔で手を差し伸べてシェイクハンドを求めてくる主力が大半だったが、中には無愛想な表情で目も合わせない選手も少なからずいた。
実際にこのころ、筆者は現地でイチローについてマリナーズの某選手から「まだメジャーリーグで何の結果も残していないジャ○プのくせに(3年契約の)1400万ドルももらいやがって。日本から来たオマエもヤツのサポーターなのか」と言い放たれている。複数人の他選手からもイチローに関する同じような陰口を何度か聞かされていた。
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