「MOW」を救った大リニューアルの裏側:ブランドロゴも一新、売上V字回復(2/2 ページ)
2015年にパッケージを大々的にリニューアルした森永乳業の「MOW(モウ)」。下降傾向にあった売り上げはV字回復を果たした。MOWが歩んできた道のりとリニューアルの裏側とは?
社内の反発も強かった大リニューアル
そして迎えた13年目。15年に、MOWは大々的なリニューアルに踏み切った。
「味もパッケージも変えました。世の中の価値観も変わっている。消費者の商品を見極める力も上がっています。MOWが価格以上においしく、消費者にとっての“いいもの”であることをアピールすると決めました」(蓮沼氏)
マダガスカル産のバニラを採用し、MOWの持ち味であるミルクをベースにしながら、バニラの味がより強く感じられるようにした。他の人気フレーバーも、生チョコとエクアドル産のカカオマスを使用した「生チョコ仕立て」や宇治抹茶を採用した「抹茶」など、さらにおいしく消費者に好まれる味づくりをしたという。
最も大きな変化はパッケージだ。10年以上使われていた丸くて可愛らしいブランドロゴを、シンプルで大人なイメージのものに刷新した。
「従来の親しみのあるものから、おいしさと品質が伝わるものにしました。大人の女性が『これは自分向けの商品だ』と思ってもらえるように。アイスの写真も、03〜12年のパッケージはソフトクリームをイメージしたもの、13年はアイスをスプーンですくっているものですが、15年は丸型のシズル感が強いものに切り替えました」(蓮沼氏)
10年以上も親しまれてきたロゴとイメージを変えるのは、かなり大胆な変化だ。社内での反発はなかったのだろうか。
「もちろんありました。でも、お客様が付いてきていないなら、思い切って生まれ変わるべき。本質価値を守りながら、それ以外は自在に対応していく必要があります」(蓮沼氏)
MOWの本質は、素材本来のおいしさ、コク、くつろぎ感にある。この“本質価値を守る”は、森永乳業の他ブランドでも同様だ。蓮沼氏はリニューアルを行った15年当時はピノのマーケティングを担当していたが、「ピノはあの独特の形が変わらないことが価値。実は味を少しずつ変えているのですが、形が変わらないことで支持していただける」という。
この15年のリニューアルで、売り上げはV字回復した。
「トライアルやリピーターも増え、売上伸長率も非常に高く勢いが出ています。まだデータは取り切れてはいないのですが、一過性のものではなく、お客様が付いてきてくれていると実感しています。『おいしくなった』という評価も得ています」(蓮沼氏)
リニューアル後は、期間限定品を定期的にリリース。16年冬は、12月12日から期間限定・コンビニエンスストア限定で「MOW イタリアンマロン」を売り出す。“イタリア産の栗粒”や“隠し味の洋酒”で、リッチ感を出したアイスだ。価格は165円(税別)とやや高価格帯で、大人の冬アイス需要を狙う。
関連記事
- なぜ「アイスクリーム」市場は伸び続けているのか
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は3年連続で過去最高を記録したアイスクリーム市場と有力ブランドを読み解く。 - 発売3年で売上2.5倍! アイス「パキシエル」の開発秘話を聞いてきた
マルチパックのアイス「パキシエル」の売り上げが好調だ。発売してから3年で、2.5倍に拡大。「超激戦」とも言われているアイス市場で、なぜパキシエルは売れているのか。森永製菓の開発担当者に話を聞いた。 - 「いろはす」ブランドが支持されるワケ
11月28日に新商品「い・ろ・は・す なし」を発売し、ますますラインアップを拡大する「いろはす」ブランド。ミネラルウオーター市場をけん引し、日本コカ・コーラの他ブランドのマーケティングにも生かされる“強さ”の秘密はなんだろうか。 - “再び”「ポッキー」が急成長できた理由
横ばい状態が続いていた「ポッキー」の売り上げを5年間で50億円も伸ばしたチームリーダーがいる――。チョコレートマーケティング部の小林正典部長だ。彼はどのようにしてポッキーの売り上げを伸ばしたのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.