井岡一翔を「善戦マン」にしてしまったTBSの罪:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)
4月23日のWBA世界フライ級タイトルマッチ。チャンピオンの井岡一翔が同級2位のノクノイ・シットプラサートを判定で下したが、疑問の声が出ている。井岡は「超攻撃型」を目指しているはずなのに、試合では違った。なぜこのようなことになったかというと……。
久しぶりにボクシング世界戦を記者席ではなく観客席から見た。知人3人とともに4月23日、訪れた会場はエディオンアリーナ大阪だ。お目当てはメインイベントのWBA世界フライ級タイトルマッチ。チャンピオンの井岡一翔が同級2位のノクノイ・シットプラサート(タイ)を判定で下した一戦である。
3階級制覇を成し遂げている井岡はこれで元WBA世界ライトフライ級王者・具志堅用高氏の持つ世界戦14勝の日本タイ記録に並んだ。ところが偉業達成にも井岡の地元のはずの会場はそれほど盛り上がらず、どことなく微妙な空気が漂っていた。知人の1人はこの日がボクシング初観戦。リング上でベルトを巻き、V5に笑顔を見せる井岡に目を配りながら彼はポツリとこう漏らした。
「井岡の試合ってスリリングじゃなかったなあ。全然面白くないし、金返してほしいよ」
これは正直、私も同感だった。会場にいた観客の中にも、おそらくそれなりの数の人が井岡の試合を「期待外れ」と感じていたと思う。だから、防衛を果たしても会場には何となく微妙な空気が漂っていたのだろう。
激しい打ち合いなどの見せ場もなく、両者はダウンもないまま試合は終了。負けたシットプラサートから試合後に「井岡は超一流ではない」と酷評され、具志堅氏の記録に並んだはずのチャンピオンはネット上でも賞賛どころか激しいバッシングの嵐にさらされている。
確かにここ最近の井岡は慎重なファイトスタイルに徹底し過ぎている感は否めない。相手が出てくると後ろに下がって手数や有効打だけを稼ぐ、いわゆる「ポイント狙い」の戦い方ばかりが目立つ。この日の試合は、まさにそれが顕著だった。ここまで3戦連続でKO勝ちを果たしていたとはいえ、そのすべてはやはり打ち合いを徹底して避け続けた中で相手のスキを突いての結末だ。
「アウトボクシング」と言えば、聞こえはいいかもしれない。だが、真の強豪ならまだしも格下の相手ばかりにこのような“逃げ”の姿勢をいつまでも貫いているようではボクシング関係者や目の肥えたファンからはいずれ完全にソッポを向かれてしまうだろう。
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