上司は「ムリゲー化」する仕事に立ち向かっている:常見陽平のサラリーマン研究所(2/2 ページ)
マネジメントの難易度が上がっている中で、上司の仕事が「スペランカー化(ムリゲー化)」している。部下は、このような「スペランカー上司」を支えなくてはならない時代となっているのだ。
「上司のマネジメント」が大切な時代
よく「最近の若者は〜」という話になるが、職場においては管理職の問題も浮上している。リクルートワークス研究所が発表した、日本企業の人材マネジメント上の現状と課題をまとめた「人材マネジメント白書2015」をもとに確認してみよう。これは、東証1部上場企業176社から回答を得ている。
同調査によると、「認識している課題と特に重要な課題(3つまで)」という質問項目において、「マネジメントスキルの向上」は77.8%で6位である。なお1位は「次世代リーダーの育成」で94.3%だった。マネジメントとリーダーシップは一部重なるものの、異なるものではある。ただ、マネジャー、リーダーの育成が日本企業の課題となっていることは明らかだ。
他にも管理職が直接的・間接的に関わる「ダイバーシティ(女性等)の推進」(2位・92.0%)「メンタルヘルスへの対応」(4位・86.9%)「ワークライフバランスの強化」(5位・77.8%)などの項目も上位にランクインしている。
このように、現代社会の管理職が果たすべき役割が「スペランカー化(ムリゲー化)」しているのだ。こんな時代においては、このような上司を支える力が必要だと言えるだろう。部下であっても「上司のマネジメント」という視点を持つことが期待されるのだ。
「上司のマネジメント」の視点とは何か。上司の視点に立って行動することである。これは、自分を成長させる上でも案外正しい。上司の動きをチェックし、「しんどくなっていないか」を常にチェックしておきたい。「俺、やりますよ」と、先手先手のサポートこそが必要なのだ。
例えばあなたが営業マンで、所属している事業部の新商品を顧客に提案しているとする。一メンバー視点で言うならば、その受注が取れるかどうかしか考えないことだろう。しかし、上司視点ならば、違う。その案件が受注できるかどうかだけでなく、仮に受注し成果が出たならば、顧客の同業他社や、他業界にも展開し、一大市場を作れるのではないかと考える。そのために社内外でセミナーを行う必要がないかとか、営業ツールの整備を考えるようになる。
あるいは、同僚が休みがちになっているとしよう。上司視点ならば、事業部の士気が下がってないか、目標に対する疲弊感が漂ってないかと考える。つまり、点を見るだけでなく、線や面を見て俯瞰して見れるようになるわけだ。
「いや、メンバーのサポートを担うのは上司だろ」と思う人もいるかもしれないが、スペランカー化する社会においては、チームワークが必要なのだ。スペランカーは孤独な戦いだった。しかし、仕事には仲間がいる。上司をスペランカー化させないためにも、上司のマネジメントという視点をもっておこう。
常見陽平のプロフィール:
1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。
リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『僕たちはガンダムのジムである』『エヴァンゲリオン化する社会』(ともに日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)『普通に働け』(イースト・プレス)など。
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