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なぜオープンハウスの都心戸建て住宅は飛ぶように売れるのか?ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(1/4 ページ)

都心で好立地の戸建て住宅が今売れている。しかも主な買い手は年収500万〜1000万円の平均的な会社員だという。こうした物件を販売するのがオープンハウスとはどのような会社なのだろうか。そしてなぜそれが可能なのか。

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 「都心の一軒家」と聞いて、多くの人は「高そう」「買えない」「金持ちが住む家」などと思うかもしれない。ところが今、好立地で手の届く価格帯の戸建て住宅を年収500万〜1000万円の平均的な会社員が相次いで購入しているのだという。

 そうした物件を提供するのが、1997年設立のオープンハウスだ。同社は2001年に新築戸建て物件の販売をスタートし、売り上げをぐいぐいと伸ばしていく。2013年9月には東証一部への上場を果たした。2016年9月期の業績は売上高2472億1000万円(対前年比37.9%増)、営業利益313億2000万円(同47.0%増)と急成長を遂げている。

 オープンハウスはなぜ都心の戸建て住宅を一般的な相場よりも安く販売できるのだろうか。他社にはない同社の強みとは何だろうか。一橋大学大学院 国際企業戦略研究科(一橋ICS)の大薗恵美教授が、オープンハウスの荒井正昭社長にインタビューした(以下、敬称略)。

消費者ニーズをくみ取った商品で急成長しているオープンハウス
消費者ニーズをくみ取った商品で急成長しているオープンハウス

都心に住みたいというニーズ

大薗: オープンハウスは、「東京に、家を持とう。」をキーワードに、従来は通勤の便利なところでの家は無理だと思っていた人が戸建てを持てるという価値提供を掲げて事業展開しています。私自身もそうだし、業界全体も、皆が無理だと思っていたことを成し遂げた結果、急成長を遂げています。どういうきっかけでこの事業に取り組み始めたのですか?

荒井: 最初は仲介業からスタートしました。私は起業する前に10年間、不動産仲介の会社でサラリーマンをしていて、顧客のニーズを把握していました。彼らは都心に近い場所ほど喜ぶものの、自分たちが買えるような商品がないと思っていました。

 そうした中、1987年に建築基準法が改正されて、準防火地域においても木造三階建てが解禁になりました。その結果、土地がそれほど広くない都心部でも3LDKの家が作れるようになったのです。それ以前ならばもう少し広い土地が必要でしたが、土地の値段が高くなるので顧客が望むような商品は提供できませんでした。

 実は木造3階建ての販売は当社だけでなく、地場の不動産会社は昔からやっていたことです。ただし大手デベロッパーが手掛けていなかったので、あまり世の中に知られていなかったのだと思います。いくつかの小さな会社がやっていた中で、当社だけが大きくなっていったのです。

大薗: 規制が変わって、木造三階建てのビジネスができるようになった。この事業機会は誰にも等しく与えられたもので、実際にそれを生かした地場の不動産会社もあったわけですね。なぜ彼らはオープンハウスのように大きく成長しようと思わなかったのですか?

荒井: これは人間の心理で、普通はそこそこ成功したら満足してしまうのです。成功するまでは努力するけれども、ある程度まで達成すると、もっと欲張ってやろうという人は少ないのではないでしょうか。例えば、東京大学に入るまでは必死で勉強するけれど、入学後も継続して寝る間を惜しむような勉強をする人が少ないように。

 もう1つ、当社と他社が異なるのは人材戦略です。私が起業したときは大学卒の22歳人口が200万人いましたが、今は120万人にまで減っています。当時、街の不動産会社は採用はいつでも簡単にできると思っていたので、先を見据えた人材採用をするような備えはありませんでした。一方で、当社は今でも年間200人以上の採用を行っています。

大薗: 会社を大きくしたいという思いは最初からあったのですか?

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