驚愕の連続 マツダよそれは本当か!:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
マツダが2030年に向けた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表。この中で、最も注目されたのは「内燃機関の革新」の中核となるSKYACTIV Xだ。かねてよりマツダが研究中と伝えられてきたHCCIエンジンがいよいよそのベールを脱いだことになる。
(2)の安全については、基本となる視界やドライビングポジションの適正化に加え、センサーやカメラを用いた認知・判断をサポートする運転支援システムの標準装着化、さらにマツダが提唱する「マツダ Co-Pilot Concept」に基づく自動運転システムの研究開発が要旨となる。
(3)心の健康に関しては、マツダがかねてより提唱してきた「運転による心身の活性化」を目指し、「走る歓び」をさらに進めると言う。
(2)と(3)は明らかに筆者の説明不足だし、実はおもしろい話がたくさんあるのだが、それを書いていると今回のメインディッシュである「SKYACTIV X」に永遠にたどり着けないので、いずれ折りに触れてということでご容赦願いたい。
さて、長期ビジョン全体の中で、最も注目されたのは「内燃機関の革新」の中核となるSKYACTIV Xだ。かねてよりマツダが研究中と伝えられてきたHCCIエンジンがいよいよそのベールを脱いだことになる。
HCCIとはHomogeneous-Charge Compression Ignitionの頭文字を取ったもので、日本語で書けば「予混合圧縮着火」である。筆者が最初に意識したのは00年代初頭に現ダイムラーが次世代技術としてプッシュしたときだ。
さて、ここからはエンジンのお勉強だ。通常のガソリンエンジンは、理想的な空燃比(14.7:1)にした混合気にプラグで着火する。紙の端っこにマッチで火を付けて燃え広がらせる。つまり端から順番に延焼させていく燃焼メカニズムである。だから技術の核となるのはどうやって燃え広がり易い状態を作るかということになる。
少し前にリーンバーンエンジンが流行した。リーンバーンは少ないガソリンで燃焼を行い、燃費性能を上げようというシステムだ。あれの失敗の原因はまさに燃え広がり難さにあった。燃料が薄いということは燃え広がるのに都合が悪い。紙の例えに戻れば、部分的に湿っていて燃え難いために、途中で火が消えて燃え残ってしまう状態になる。燃料が少なくて空燃比が薄いにもかかわらず燃焼がくすぶり、まるで燃料が濃すぎるときと同様、煤が大量発生して燃焼室に堆積してしまうのだ。リコールの多さに辟易した自動車メーカーはリーンバーンから撤退した。
薄い燃料でも安定的に燃やす方法は無いのか? そこで考え出されたのが、圧縮着火である。気体は圧縮すると温度が上がる。物理で習ったPV=nRT。理想気体の状態方程式というヤツだ。数式の便利なところは分かる人にはそれだけで分かることだが、逆に悪い点は、分からない人には見ただけで嫌になるところだ。嫌になった人は単純に気体は圧縮すると温度が上がると理解しておけば、ここでは困らない。
関連記事
- 悪夢の「マツダ地獄」を止めた第6世代戦略
一度マツダ車を買うと、数年後に買い換えようとしたとき、下取り価格が安く、無理して高く下取りしてくれるマツダでしか買い換えられなくなる。その「マツダ地獄」をマツダ自身が今打ち壊そうとしているのだ。 - 歴代ロードスターに乗って考える30年の変化
3月上旬のある日、マツダの初代ロードスターの開発に携わった旧知の人と再会した際、彼は厳しい表情で、最新世代のNDロードスターを指して「あれはダメだ」とハッキリ言った。果たしてそうなのだろうか……? - トヨタとマツダが模索する新時代
トヨタとマツダが8月4日夜に緊急会見を開いた。その内容は両社が極めて深い領域での資本業務提携を行うもので、正直なところ筆者の予想を上回るものだった。 - ハンドルの自動化について考え直そう
クルマの自動運転はまだ実現できないが、運転支援システムを組み込むことによって、人のエラーを減らそうとしているのが現状である。そこで今回はハンドルの自動化について指摘したい。 - 地味な技術で大化けしたCX-5
マツダはSUV「CX-5」をフルモデルチェンジした。「すわ第7世代の登場か!」と勢い込んだが、そうではないらしい。マツダの人はこれを6.5世代だと意味あり気に言うのだ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.