豊田章男「生きるか死ぬか」瀬戸際の戦いが始まっている:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
定例の時期でもないのに、トヨタ自動車はとてつもなく大掛かりな組織変更を発表。豊田章男社長は「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている」と話すが……。
日本人の閉塞感を救え
ここしばらく、日本の家電メーカーの敗北がどれだけ日本人のトラウマになっているかが骨身に染みた。日本の自動車メーカーが電動化に遅れているどころかリードしているのだという話をいくら丁寧に数字を挙げて説明しても、「いやそういう油断で電気メーカーは負けた。クルマも負けるに違いない」という人が後を絶たない。
内燃機関だってなくなるのはどんなに早くても2050年レベルで、それまでは何らかのハイブリッドでエンジンとモーターを両方使う時代になる。それは欧州のメーカーだってはっきり言っていると話しても「エンジンなんかにいつまでも固執しているから敗北するのだ」と言って聞かない。彼らは酷い閉塞感の中を生きている。
筆者は今回のトヨタのヒリヒリするほど徹底した自己改革を見てトヨタの覚悟に後ずさるような恐れを感じた。まったく負けていないことをわきまえつつも、絶対に手遅れにしないためにトップグループを保って全力疾走を続けている。
かつて英国が政府主導で自動車メーカーの合従連衡を進めて、力を落としていったのと反対に、トヨタのこの民間企業ならではのエネルギーでオールジャパンを活性化させていく流れに筆者は大いに期待している。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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