「地方は不利」――そんな常識を覆す手段はあるのだ:地域活性化伝道師が語る(1/4 ページ)
2017年は地方創生政策がスタートして3年が経過。計画ではなく実績が問われるようになりました。従来のように人口だけでどうにか地方を保持しようとするのではなく、新たな地方の持続可能な仕組みを考えるというテーマに地方創生はシフトしていくはずです。そうした中で地方は何をすべきでしょうか。
明けましておめでとうございます。いよいよ2018年が始まりました。
昨年は地方創生政策がスタートして3年が経過。計画ではなく、その実績が問われる1年となりました。例えば、地方創生先行型交付金、加速化交付金、推進交付金というカタチでさまざまな支援先が講じられました。若者を地方に移住させて出生率を改善するという狙いから始まり、高齢者を病院不足の都市部から地方部に移住させるといった話も展開されました。
地方から人がいなくなり、地方自治体が消滅するといったセンセーショナルな人口論からスタートした地方創生政策ですが、実態としては大都市部にいまだ人口は続々と流れ込んでいます。
地方自治体が互いに人口を減らさないように、限られた日本人の取り合いをするのではなく、むしろ人口が減ったとしても自治体が破たんせず、地方に住み続ける人の生活が一定担保されることの必要性を感じます。従来のやり方で人口だけでどうにか地方を保持しようとするのではなく、新たな地方の持続可能な仕組みを考えるというテーマに地方創生はシフトしていくのが本筋ではないか、と思わされる1年でした。
地方創生議論は数年前から盛り上がり、その後、個別事業について国の予算がつけられ、さまざまな事業が行われてきました。しかしながら、このような方式は決して新しいものではなく、地方が計画を立てて、それを国が審査・認定し、予算をつけるというのは伝統的な地方政策の方式です。
戦後、GHQのシャウプ勧告から中央集権型によるあらゆる地域での予算平準化を目指した「地方交付税交付金」をはじめとして、地方に足りない予算を、国を通じて稼ぎが大きい東京などから分配することによって、地方を発展させてきたのです。
支援が支援にならなくなった「地方政策」
そのような支援策は、1970年代〜80年代の人口増加や経済発展などに伴い国全体、また地方に需要がある時期には機能しました。国を通じ、地方で不足する道路、公共施設、宅地、工場用地を予算の力で作り上げるという供給支援が、地方での雇用拡大、経済発展、財政改善につながりました。
しかし、90年代以降は地方部の人口減少傾向が強くなり、さらに生産性改善が伴わない非効率な構造がそのまま放置され、需要がない中で支援による供給を継続した結果、使われない宅地、工場用地、インフラなどが地方にとって負担となりました。支援が逆効果となったわけです。
本来の市場取引であれば需要が減少するときには、併せて供給が減少し、経済効率は自律されるはずなのですが、財政的支援は市場とは異なる論理で展開されてしまうため、どんどん供給だけがなされて効率が悪くなっています。
例えば、地方の不動産などには大きなマイナス効果を生んでいます。既に空き家、空き店舗などが問題視されているにもかかわらず、区画整理、再開発、農地の商業・住宅への転換利用といった「供給を支援する政策」を継続、一部拡大しており、結果として空き家や空き店舗がさらに増加。地方不動産の下落を加速させてしまっています。
また、中心部の活性化を目的に大きな再開発施設を建設したら、それが大きな廃墟ビルとなってしまい、結果として地元自治体がそれを税金で購入したり、借りることになったりしてしまった事例も後を絶ちません。
有名な事例としては、青森市中心部に開発された「アウガ」という複合施設は、開発したもののテナントが思うように入らず運営赤字が続き、債務超過に至りました。結局、市役所が資産買取することとなり、今後、青森市民は施設維持、行政機能維持に必要な負担を強いられ、その分、ほかの事業予算を圧迫することになります。経済が活性化し税収が改善するはずが、そんな施設の需要は民間には存在せず、地方の財政負担が拡大する結果となってしまったわけです。
時代の局面が変わり、かつて効果があった地方政策も、資産価値の低下、財政負担の拡大につながる「衰退加速政策」となってしまっている側面があるのです。
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