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池田直渡「週刊モータージャーナル」2017総集編:

滅亡する50ccバイク、トヨタのGoogleキラー (1/3)

筆者が書いた記事で2017年のページビュー・ベスト5を取りまとめた。今回は昨年を振り返る意味でも、そのトップ3について改めて述べたいと思う。

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 年が明けた。その1本目はまず、2017年の総ざらいから始めよう。筆者が書いた記事で昨年のページビュー・ベスト5は次の通りだった。

(1)目前に迫った50ccバイクの滅亡

(2)驚愕の連続 マツダよそれは本当か!

(3)グーグル&Uberつぶしのトヨタ・タクシー

(4)地味な技術で大化けしたCX-5

(5)「マツダ ロードスターRF」はロードスターなのか?

 ここではトップ3について振り返ってみよう。

目前に迫った50ccバイクの滅亡

 17年はバイクの世界でも排ガス規制が厳しくなり、新規制が継続生産モデルに適用される前日の8月末日をもって数多くのバイクが生産終了となった。例えば、老若男女に親しまれ、わが国の文化にも多大な影響を与えた名車、ホンダ・モンキーである。パリ協定を背景としたグローバルな排ガス規制の波に飲み込まれる形で、存続できなくなった。

名作ホンダ・モンキーの初代モデル
名作ホンダ・モンキーの初代モデル

 バイクに対して厳しすぎると思う人もいるかもしれないが、パリ協定の長期プラン(2050年目標)は、バイクが狙い撃ちされているわけではなく、世界の人々がサステイナブルな社会を営めなくなる恐れさえある厳しいもの。というか、限りなく文明否定に近い。経済産業省はその厳しさを「農林水産業と2〜3の産業しか国内に許容されない」とレポートしている。

 さて、本題へ戻ろう。四輪車は昭和51年(1976年)、53年(1978年)排ガス規制などの厳しい環境規制をくぐり抜けてきたが、バイクは台数的にも排出ガスの総量的にも四輪車と比べると環境への影響が少なく、ある意味、お目こぼしを受けてきた。実質的に規制が強まったのは平成11年(1999年)からだ。この年にほぼ全ての2サイクル車が生産中止となった。

 今回の規制は99年と比べても非常に厳しく、考え方としては四輪車の規制値に2輪車の規制値も合わせようというものだ。ざっくりとした言い方になるが、99年比で一番厳しい一酸化炭素(CO)を10分の1以下に、一番緩い窒素酸化物(NOx)ですら4分の1にしろというハードルの高い規制である。

 そのため4サイクルエンジンであっても、三元触媒とインジェクションを使わない限りクリアできない。しかも四輪車より振動面で厳しいバイクの場合、触媒の担体に安価な陶器系が使えない。となれば、高価を承知で金属担体の触媒を使うしかない。価格の高い四輪車ですら高級部品である。規制開始前から一部の車両では既に先行して採用されてきたが、これは当然販売価格を押し上げることになる。

 また、排気ガス規制が緩かった当時は、掃気(内燃機関における排気と新気の入れ替えを技術用語ではそう呼ぶ)を重視した吸排気バルブのオーバーラップの大きなカムを使って出力も稼げた。しかし排ガス規制に適合させるためには四輪車並にお行儀の良いカムプロファイルを採用するしかない上、濃い目のパワー空燃比も使えない。これでは旧来の出力を出すことは不可能になる。

 排気量が比較的自由な四輪車なら性能ダウンの分を排気量アップで稼ぐことも可能だが、バイクの場合は排気量が運転免許とひも付いており、出力を補完するために排気量を上げるわけにはいかない。

 価格高騰と性能低下のダブルパンチによって価値が損なわれてしまえば、メーカーとしてはラインアップを整理するより他はなかった。それは排気量を問わず全てのバイクに当てはまる話だが、特に50ccという限界的小排気量では価格転嫁が難しい上に性能的にも余裕が少なく、惜しまれつつも多くの車種が生産中止となったのである。

 その後の展開として1つだけ福音だったのは、ホンダ・スーパーカブが新設計されてモデルチェンジしたことだろう。ホンダの大ベストセラーであり、働くバイクの大本命であるスーパーカブがなくならなかったことは非常に嬉しい。

 ただし一方で、ホンダは日本郵政と電動モデルの開発で提携を発表している。排ガス規制はまだゴールに到達していない。今後まだ厳しくなる可能性があるのだ。そうした状況でも事業を継続しなければならない日本郵政は、電動カブの開発を求めているわけだ。50ccバイクがかつての勢いを失ったとはいえ、一部でも存続できるかどうか、今後の規制の行方から目が離せない。

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