介護事業者の淘汰(とうた)に歯止めがかからない――。
東京商工リサーチによると、倒産件数は11年から増えていて、14年は54件、15年は76件、16年は108件と急増している。コンサルティング事業などを展開する日本介護ベンチャー協会の代表理事、斉藤正行氏によると、「介護ビジネスへ参入する事業者が増え、競争が激化していることが要因」だという。
競合が増えたことによって、「他社との差別化やサービスの質を高めなければ生き残れない時代になった。利用者にとって魅力が感じられない事業者の淘汰(とうた)は今後も加速していくだろう」(斉藤氏)としている。
17年の倒産件数は111件で、2000年に介護保険制度が始まって以来、過去最多となった。負債総額は約150億円。
業態別に見ると、訪問介護と通所・短期入所(いずれも44件)が多く、倒産原因については「販売不振」(51件)が最も多かった。
人手不足が深刻化
また、深刻化する人手不足によって人材の確保が困難になっていることも、経営を圧迫している大きな要因だ。
「特に景気が良いときは、他の業界に働き手が流れてしまうため、人材確保が困難になる。いかに働きやすい環境をつくるかが求められている。例えば、介護サービス大手のツクイは、介助を行う専門業務と、掃除や配膳といった一般業務の2つに職種を分けることでスタッフの業務負担を軽減している。人材を確保するためには、こうした工夫が必要になる」(同)
また、事業者は、設立5年以内の新規事業者や、従業員数5人未満の小規模事業者が多い。東京商工リサーチは「安易な起業や、本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小規模の業者が思惑通りに業績を上げられず、経営に行き詰まったケースが多い」と分析している。
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