厚労省が「裁量労働制データ捏造」に走った根本的な理由:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
厚生労働省の「データ捏造(ねつぞう)」で安倍政権が炎上している。国民の生命にダイレクトに関わってくる問題なのに、なぜインチキデータが提出されたのか。厚労省が同じような問題を繰り返す背景に、何があるのかというと……。
厚生労働省の「データ捏造(ねつぞう)」で安倍政権が炎上している。
裁量労働制の労働者が一般の労働者より残業時間が少ないという厚労省のデータが、実は不自然に操作したものであることが明らかになり、それを用いて答弁をした安倍首相や閣僚が野党から厳しい突き上げをくらっているのだ。
加藤勝信厚労相は「わざとじゃない」と釈明をするが、調査対象となっている1万1575の事業所のなかで、現時点で少なくとも93事業所のデータに異常な数値があることが分かっている。意図的でないなら、厚労省が出しているさまざまな調査・統計をすべて疑ってかからねばならないほどの惨状だ。
1年近く続いた野党の森友・加計学園問題の「疑惑」追及キャンペーンにへきえきしていらっしゃる方などは、「どうせまたいつもの揚げ足とりかよ」という印象を抱くかもしれないが、残念ながら今回はそういうレベルを超越した深刻さがある。
国民の生命にダイレクトに関わってくるインチキだからだ。
よく批判されているように、今回の裁量労働制の対象拡大は、経営者側に「定額働かせ放題」というお得なプランが増えるだけになってしまう可能性が高い。重いノルマを課した社員に対して、面倒臭い労務管理をすることなく、「あなたの裁量内で結果を出してね」の一言で延々と働かせることができるようになるからだ。
そういう厳しい競争環境をつくれば、仕事をやらないのに定年まで会社にしがみつこうとする「正社員主義者」が自然と肩身が狭くなるので、雇用の流動性を高められるという狙いなのかもしれないが、「相性の悪い会社はサクサク辞めていくのが当たり前」という労働文化が醸成されなければ、単に「合法的ブラック企業」がのさばる結果しか生まない。
こういう欠陥のある政策がインチキな現状把握調査を基に進められている可能性がある、というだけでも大問題なわけだが、今回がより深刻なのは、「捏造データ」に森友学園問題における財務省と同様に「忖度」の影がちらついていることだ。
関連記事
- 大東建託が「ブラック企業」と呼ばれそうな、これだけの理由
電通、NHK、ヤマト運輸など「ブラック企業」のそしりを受ける大企業が後を絶たないが、ここにきて誰もが名を知る有名企業がその一群に加わるかもしれない。賃貸住宅最大手の「大東建託」だ。なぜこの会社がブラック企業の仲間入りするかもしれないかというと……。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。 - モスバーガーが「創業以来の絶不調」である、もうひとつの理由
業界第2位のモスバーガーが苦戦している。「創業以来2度目の絶不調」とも言われ、あれが悪い、これが悪いとさまざまな敗因が取り沙汰されている。どれも納得のいく話であるが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。それは……。 - 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「ウィルキンソン」が売れている。躍進のきっかけはハイボールブーム。割り材としての需要が増えたことでブランド認知が上がったそうだが、大事な要素が欠けているのではないだろうか。どういうことかというと……。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.