エンタープライズ:ニュース 2002/11/05 23:11:00 更新


オートノミック・コンピューティングを強化した「Tivoli」、そのゴールは?

日本IBMは11月5日、システム管理ソフトウェア群「Tivoli」の機能拡充を発表した。オートノミック・コンピューティング実現に向けた機能が多く追加されたことが特徴だ。

 日本アイ・ビー・エム(IBM)は11月5日、企業プラットフォーム/システム管理ソフトウェア群「Tivoli」の機能を強化し、ラインナップの一部を拡充した。

 Tivoli製品群は今年4月に、日本チボリシステムズから日本IBMへの移管に伴い、ブランド名を変更するとともに製品ラインナップを刷新。「パフォーマンス&アベイラビリティ」「コンフィグレーション&オペレーションズ」「セキュリティ」および「ストレージ」という4つの軸に沿って再編している。ここで同社が強調するのが「ビジネス・インパクト管理」というコンセプトだ。

 今回の機能拡充においても、その基本ラインは変わらない。「個々のリソース、個々のコンポーネント単位ではなく、ビジネスの観点からシステム全体の最適化を図っていく」(同社Tivoli事業推進、鈴木和洋氏)。

 そのために大きな武器となるのが、IBM全体としても力を注いでいる「オートノミック・コンピューティング(自律的コンピューティング)」だ。これは、システムが自ら最適な状態を作り出し、状況に応じて設定・構成変更や修正作業、セキュリティ対応などを行うことにより、適切な稼働を維持し、複雑化の一途をたどっているITインフラの運用管理負担を軽減していこう、という取り組みである。

 同社の説明によれば、Tivoliはもともとオートノミック・コンピューティングを意識した製品なのだが、今回はその機能をいっそう強化した。例えば「Tivoli Configration Manager V4.2」では、各種リソースやデバイスの構成変更を自動的に管理するほか、必要なソフトウェアの自動配布などを実現。オートノミック・コンピューティングにおける4つの機能のうちの1つである「自己構成」をサポートする。

 さらに「Tivoli Service Level Advisor V1.2」や「Tivoli Business System Manager V2.1」ではバージョンアップにともない予測機能を強化。極力人手を介さずに、プロアクティブに障害を予測し、ビジネス上の優先順位に基づく管理を実行し、「自己最適化」を可能にする。他にも複数製品のバージョンアップによって、「自己修復」「自己防御」といったオートノミック・コンピューティングの各側面が実現されるという。先月リリースされた「Tivoli Storage Manager V5.1.5」をはじめとするストレージ管理ソフトウェア製品群も、やはり自己修復機能を実装したものだ。

IBM製品との連携を強化

 今回の機能拡張においては、オートノミック・コンピューティングの強化と同時に、Linux対応の拡充とパーベイシブ・コンピューティングへの対応も目玉になっている。Tivoli製品群はこれまでも、監視対象としてLinuxをサポートしてきたが、今回は監視サーバシステムそのものが稼働するプラットフォームとしての対応が図られた。これによりオープンプラットフォームでのシステム管理が実現できるとしている。

 またパーベイシブ・コンピューティング環境への対応では、「Tivoli Configration Manager V4.2」がPalmOSやPocket PCを搭載したPDAをサポートしたほか、SyncMLにも対応し、モバイル環境も監視対象に加えた。

 表立って強調されてはいないが、WebSphereやLotus Domino、DB2といった、IBMが柱とする他のソフトウェア製品との連携が強化されたこともポイントの1つだろう。新たにリリースされた「Analyzer for Lotus Domino 1.1」は、つい先日リリースされたばかりの「Lotus Domino 6」に特化した製品で、収集した稼働状況を基に、Domino 6のパフォーマンスを最適化する役割を果たす。また「Tivoli Monitoring for applications, middleware and databases」では、項目や閾値設定などについてWebSphereに対する最適化が図られているという。

 同社ソフトウェア事業部長を務める堀田一芙常務も、「WebSphereやDominoとの連携を強化することによって、(顧客にとって)より受け入れやすい製品になったのでは」とコメント。だが一方で、決して囲い込みを図るのではなく、IBM製品以外の幅広いミドルウェアをサポートしていく方針とも言う。

 ちなみに同社は今年12月に、東京・渋谷事業所内に「Software Center of Competency」(SW CoC)を開設する予定だ。同社のソフトウェア群と、パートナー各社のサーバやストレージ、ネットワーク機器などを用いて、各種ソリューションの検証や実証実験、それらのデモンストレーションなどを行う拠点となる。ここで得られた成果は、Webベースの技術データベースなどの形でパートナー向けに公開し、テクニカルサポートを充実させていく計画だ。Tivoli製品群は、この環境もフルにサポートする。

「ITがライフライン化するにつれて、Tivoliはますます目立たない存在となるが、その役割の重要性は増していく」(鈴木氏)。そしてこれが、「e-Business On Demand」というコンセプトを支える大きな柱になるという。

関連記事
▼日本IBM、自己修復機能を強化したストレージ管理ソフトウェア製品3種を発表
▼Notes/Domino 6、3年半ぶりのメジャーバージョンアップ
▼チボリ,IBMとの統合を見据えてラインナップを一新
▼ストレージとセキュリティに力を入れるチボリ

関連リンク
▼日本アイ・ビー・エム

[高橋睦美,ITmedia]