エンタープライズ:ニュース 2002/11/15 10:49:00 更新


基調講演:エリソンCEO、アメリカズ・カップへ快走中の南太平洋から衛星中継

「海のF1」と呼ばれるアメリカズ・カップの挑戦権を南太平洋で争うエリソンCEOは11月13日、「OracleWorld 2002 San Francisco」の基調講演をニュージーランドのカークランドから衛星回線を通じて行った。同氏はIT業界が直面している3つの課題を挙げ、それらに取り組むオラクルをアピールした。

 セールスのキックオフミーティングをWebカンファレンスで行うというオラクルのラリー・エリソンCEOが、「OracleWorld 2002 San Francisco」を締めくくる基調講演も衛星中継でやってのけた。

「海のF1」と呼ばれるアメリカズ・カップの挑戦権を南太平洋で争うエリソン氏は11月13日、ニュージーランドのカークランドから衛星回線を通じて、サンフランシスコのモスコーニセンターに集まった5000人を超える聴衆に語りかけ、IT業界が直面する課題に対処するオラクルをアピールした。

ellison02.jpg
モスコーニセンターからの質問にも答えるエリソン氏

 エリソン氏は、IT業界が直面している課題として、「データの分断」「アプリケーションの分断」、そして「システムの不完全な自動化」(例えば、ERPとCRMが連携できない)を挙げる。どれも莫大な管理コスト、システム開発やインテグレーションのためのコストと時間を顧客企業に強いるものだ。また、これらの問題を解決できなければ、意思決定のための正しい情報を手に入れることすらできない。

 オラクルは、「Oracle9i」や「E-Business Suite 11i」の発表以降、「統合化」を掲げ、ライバルらが顧客に薦める「ベスト・オブ・ブリード」の欠点を突いてきた。

「(ベスト・オブ・ブリードのアプローチでは)何千、何万という組み合わせがあり、コンポーネントがうまく連携することをだれがテストできるだろうか? この業界は完成度の低いものを25年間も提供し、顧客に負担を強いてきた」とエリソン氏。

 同社は、Oracle9iブランドの下にミドルウェアを統合し、完全に動作することをテストし、信頼性を高めたうえで顧客に提供する。

「わずか数百ドルしかしないソニーのテレビが、なぜ数百万ドルもするコンピュータよりも信頼性が高いのか?」(エリソン氏)

 不完全な自動化への取り組みも同様だ。会計、人事、SCM、CRM……、こうしたシステム間連携の不完全さを補うために、顧客企業はIBMグローバルサービスやアクセンチュアを頼らなければならない。その労働コストは、ソフトウェアの価格の比ではない。

 エリソン氏によれば、かつては顧客の85%がカスタマイズしていたが、E-Business Suite 11iに顧客らの要望をすべて盛り込んだことによって、今では逆に85%がその標準的な機能を利用しているという。

「オープン標準やJavaを全面的に採用しているのも、プログラムを変更するのではなく、簡単に機能を付け足すことができるからだ」(エリソン氏)

 6月に中国・北京で行われたOracleWorldでエリソンCEOは、「E-Business Suite 11iのコードを変更するのではなく、ISVパートナーらが、特定の業界に特化した機能を簡単に追加できるようにしていく」と話している。この日、ニュージーランドでも同じ言葉を繰り返し、既に医療業界では医師のユニークなニーズをISVがうまく取り込んでいる例を紹介した。

マイクロソフトのExchangeを一蹴

 最も多くの時間を割いて強調したのが、「データの分断」に対処する取り組みだ。

 エリソン氏は、「かつて1つの顧客に関するデータが400のデータベースに分散していた。CEOの私でさえ、顧客の情報が分からなかった」と過去を振り返る。

 同社が電子メールのサーバ統合を進めているのはよく知られている。3年前までは世界で97あった同社の電子メールサーバは、現在、コロラド州のデータセンター(とバックアップのためのカリフォルニア)に集約されている。

「1カ所に集約するということは、それが堅牢で壊れないシステムでなければならない」とエリソン氏。

 発表されたばかりの「Oracle Collaboration Suite」についてモスコーニセンターの聴衆から質問を受けると、「部門レベルから製品の開発が始まったマイクロソフトのExchangeとは、元々比較にならない」と一蹴した。

「電子メールでは、機密性の高い人事関連情報も飛び交う。それを信頼性の高いOracleに格納しておけば、Exchangeよりも遥かに低いコストで管理できる」(エリソン氏)

 現在は、400もあったデータベースの統合を進めており、今後12カ月でそれも完了するという。エリソン氏によれば、オラクルはこうしたプロジェクトによってIT予算を半減できたという。それが営業利益率の改善に寄与していることは言うまでもない。

 また、Collaboration Suite以上に今回の重要なテーマとなったLinuxについて聞かれると、Oracle9i Real Application Clusters(RAC)によってLinuxは「Unbreakable」(不死身)になり、オラクル社内のシステムのうちミッドティアに位置するサーバも、すべてデルのLinuxを走らせるPowerEdgeサーバにリプレースしていくと話した。しかも、4プロセッサや8プロセッサよりも割安でXeonプロセッサの動作クロック数もより高速なデュアルプロセッサモデルを大量に導入するのだという。

「パフォーマンスや信頼性が高く、コストが安い。“Unbreakable Linux”はITマネジャーが抱える課題への回答だ」(エリソン氏)

関連記事
▼基調講演:早くも新版が登場するOracle Collaboration SuiteはExchangeを狙い撃ち
▼基調講演:成長軌道回帰の起爆剤は「Unbreakable Linux」や「Collabolation Suite」
▼OracleWorld 2002 San Francisco Report

[ITmedia]