エンタープライズ:インタビュー 2002/11/19 17:43:00 更新


Interview:オラクルのジャービスCMO、アコースティックだが丸腰ではない (3/3)

ZDNet どうしてOracleWorldがLinuxフェスティバルなんですか?

ジャービス インテルもそうですが、オラクルにおけるLinux採用も、「最高レベルのパフォーマンスと信頼性を最低レベルのコストで」という狙いがあるからです。IntelとLinuxの組み合わせは「Windows 2000」よりもかなりコストを抑えられるし、もちろん現時点のUNIXの各バージョンと比較してもそうです。

 さらに、オラクルのOracle9i Real Application Clusters(RAC)技術を使って、ローコストなPCを何台も接続して稼動することができる。これなら決して停止しない。

 現在のOracle.comにおけるLinuxダウンロード数は、UNIXを遥かに上回り、Windowsをわずかに下回っている状態だ。この傾向が続けば、今後2、3カ月のうちにLinuxはトップのダウンロード・プラットフォームになるだろう。

Oralce9i RACの顧客は700に

ZDNet 約1年前、盛大な宣伝とともにOracle9i RACをローンチしたとき、オラクルはこの技術に将来を賭けていた。これまでのこのイニシアティブの過程をどう評価していますか。

ジャービス 今日、Oracle9i RACを稼動させている顧客数は700以上です。多くがミッションクリティカルな分野で同技術を採用しています。例えば、エレクトロニックアーツは全オンラインゲームをOracle9i RAC技術ベースで運営しています。

 今年の末には、Linux版Oracle9i RACで動作するミッドティアのアプリケーションを発表します。受注処理、人事、電子メールのようなアプリケーションです。

ZDNet Oracle9i RACのコスト削減効果について教えてください。

ジャービス コスト削減で最も大きな部分はハードウェアです。アプリケーションを動かすためにSMPマシンを購入する必要があるとすると、100万ドルかかります。IntelとLinuxの組み合わせなら、同様のハードウェアにかかるコストはサーバ1台当たり4万〜5万ドルです。

ZDNet オラクルもそうですが、データベースベンダーらはベンチマークへ高い関心を寄せています。顧客はどうでしょうか? 顧客はベンチマークを信頼していると思いますか?

ジャービス 私の見方では、顧客はベンチマークを信じていないと思います。ハードウェアベンダが最も気にしていて、その次がオラクルのデベロッパグループです。言ってしまえば、もし本気で競争するならば、(競合相手に)はっきり示すでしょう。

ZDNet 「Unbreakable」というフレーズがここ数年のマーケティングのテーマとなっているようですが、新しいキャンペーンやテーマを打ち出す予定はありますか。

ジャービス ありません。しばらくは「Unbreakable」でやっていきます。気が付いたかもしれませんが、Unbreakableから「Unbreakable Linux」へと変えています。また、「電子メールをUnbreakableに」といったバリエーションもあります。非常に良い効果を生んでいます。

ZDNet IBMがつい最近発表したオン・デマンド・イニシアティブをどう思いますか。

ジャービス オラクルは3年前からビジネスのアウトソーシングにこの言葉を使っています。IBMはまたオラクルを真似しようとしているのです。

来年はOracle9i ASの年に

ZDNet 来年に期待を寄せていますか。最大の目標は何でしょう。

ジャービス 技術に関しては、アプリケーションサーバ事業の方向性を強めていきます。現在の顧客数(1万5000)はBEAシステムズを上回っています。だが、データベースの顧客数は20万ですから、残りの18万5000の顧客にオラクルのアプリケーションサーバを提供できるということになります。ほとんどがBEAの顧客となっている、われわれの既存のインストールベースをOracle9i Application Serverへ移行させることは大きな仕事です。

ZDNet ベンダーの中には、アプリケーションサーバをソリューションの一部として提供するところも出てきていますね。

ジャービス それはIBMの全体戦略です。WebSphereを無償で提供してIBMグローバルサービス部門で利益を得る、というものです。

 これに対するオラクルの答えとしては、ライセンス価格ではIBMやBEAより安い価格設定をしています。マーケットシェアの数字はあまり気にしていませんが、収益はきちんと見ています。もしBEAよりも売り上げが半分なら、彼らと同じくらいの販売数ということです。なぜならオラクルの価格は半分だからです。オラクルは、アプリケーションサーバ市場において、人が思っているよりも良くやっています。後はインストールベースを増やすことです。

ZDNet ほかに来年の課題はありますか。

ジャービス 来年1年間は、「Oracle Collaboration Suite」が大きな意味を持つでしょう。マイクロソフトのライセンス体系変更に対して顧客は怒っています。また、マイクロソフトは「Windows NT」と「Exchange 5.5」のサポートを中止しようとしています。このため、顧客らは嫌が上でもアップグレードしなければならない状況です。オラクルは、アップグレードよりも安く移行できることを知っているし、ここ数カ月のマーケティング活動と営業面でのプッシュを見ると、「Oracle Collaboration Suite」の幸先は良さそうです。

 同時に、アプリケーションを中堅および小規模の企業層へ売り込んでいきます。中国で中堅市場への大きな取り組みを発表しました。米国以外の地域では、この中堅市場が成長しており、米国にもその波が及ぶとみています。

ZDNet IBMがミッドレンジにおけるDB2の価格を下げたことはオラクルに影響を与えていますか?

ジャービス 影響はないと考えます。「DB2 Workgroup Server」限定版を見てみると、オラクルのスタンダード版とは比較になりません。支払った価格に応じた機能しか提供されません。これに関しては、全く心配していません。

ZDNet それでは、来年最大の課題は何でしょう。

ジャービス 経済です。われわれには1つ強みがある。大きいということです。厳しい経済環境の下、オラクルも競合他社も砂漠で苦しんでいる状態です。ただ、われわれにとっての救いは、オラクルの水筒は他社の水筒より大きいということです。現在の景気で、競合他社のうち何社かは一掃されてしまうでしょう。

ZDNet バブルの状態にあるベンダーはどこでしょう。

ジャービス アリバ、コマース・ワン、i2はもう消えてしまったと思っていいでしょう。シーベルももうすぐです−−3年も持たないでしょう。われわれの予想では、アプリケーション事業においては、オラクルとSAPだけになると考えています。技術においては、IBM、マイクロソフト、そしてオラクルに絞り込まれていきます。



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▼OracleWorld 2002 San Francisco Report

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[Dan Farber,ITmedia]