エンタープライズ:ニュース 2002/11/26 20:24:00 更新


オラクルのCollaboration Suiteはトロイの木馬

日本オラクルが「第4の柱」と位置付ける「Oracle Collaboration Suite」を国内でも7500円という戦略的な低価格で投入する。その背景には同スイートをテコに、Oracle9i DatabaseやOracle9i Application Serverの利用拡大が見込めるという読みがある。それは本来の意味でいう「トロイの木馬」なのだ。

 日本オラクルは11月26日、電子メール、カレンダー、およびファイルの管理を統合し、エンタープライズ規模のコラボレーションを支援する「Oracle Collaboration Suite」を国内でも正式発表した。米国では7月に発表され、10月から出荷が始まっている。今月上旬にカリフォルニア州サンフランシスコで行われたユーザー年次カンファレンス「OracleWorld 2002」では、リアルタイムコラボレーション機能を追加するRelease 2が早くも発表されている。

 都内のホテルで行われた発表会で新宅正明社長は、「Oracle9i Database、Oracle9i Application Server、E-Business Suiteに次ぐ、第4の柱」としてCollaboration Suiteを位置付け、コラボレーションソフトウェア市場に本格的に取り組んでいくことを明らかにした。

 オラクルがメッセージングやカレンダーのスイートを市場に投入するのは、今回が初めてではない。1990年代半ば、Lotus Notesがグループウェア市場を席巻し、Microsoft Exchangeがその牙城を切り崩そうとデビューしたころ、オラクルも「InterOffice」スイートを開発・出荷していた。

 ただし、新宅氏によれば、Collaboration Suiteは、そうした「グループウェア」製品の焼き直しではないという。

「21世紀最大の資源は情報。それを堅牢で拡張性のあるデータベースに格納して、エンタープライズレベルで活用していくのがオラクルのアプローチ」と新宅氏。

 インターネットの標準的なプロトコルをサポートしているため、例えば、OutlookやWindowsエクスプローラーといったクライアント環境は変更する必要がないのも大きな特徴だ。

 電子メールサーバやファイルサーバは、その情報の重要性が高まっているにもかかわらず、依然としてバラバラに運用されているのが実情だ。新宅氏と共に発表会に同席した山元賢治専務執行役員は、「(ExcelやWordの文書)ファイルは、ほとんど管理されていないに等しい」とし、Collaboration Suiteには新しい市場が開けている点を強調した。

 Collaboration Suiteが数年間に渡ってオラクル社内で業務に使われていることはよく知られている。エリソンCEOが、アプリケーションやデータの統合によるTCO削減について話をするとき、しばしば同社の電子メールサーバに言及しているからだ。オラクルでは、3年前まで世界で97台あった電子メールサーバも今ではコロラド州とカリフォルニア州のデータセンターに置かれている2台に集約しており、そうした努力が営業利益率の継続的な改善に結びついているという。

ベースは堅牢なOracle9iインフラ

 今回、国内で正式発表されたRelease 1のCollaboration Suiteは、Oracle Email、Oracle Calendar、およびOracle Filesを中核とし、さらにディレクトリ、検索、ポータルの各種コンポーネントから構成されている。

 Oracle EmailはやOracle Filesは、もともと同社がインターネットコンピューティング対応を進める中でOracle9iに組み込んだ「Internet File System」の一部の機能だ。Oracle9i環境にInternet File Systemをインストールすると、情報を格納したり、取り出したりするプロトコルとして、Windows SMB、HTTP、FTP、IMAP、POP3、SMTP、WebDAVといった標準がサポートされる。

 つまり、Oracle9i DatabaseとOracle9i Application Serverに機能の一部として組み込まれ、既に出荷されているコラボレーション機能を改めてパッケージングし直した製品ともいえる。これは、先ごろ米国で発表されたRelease 2の目玉となる機能も、E-Business Suiteに組み込まれているリアルタイムコラボレーションソフトウェアの「iMeeting」だということからも分かるだろう。

 1指名ユーザー当たり7500円という価格は、コラボレーションの機能を利用するのに必要なOracle9i DatabaseとOracle9i Application Serverのライセンスも含まれたものだ。そればかりか、「Unbreakable」(不死身)をキャッチフレーズに、その堅牢さをアピールするオラクルは、Collaboration SuiteをUnbreakableにする機能もすべてこの価格の中に組み込んでいる。つまり、国際セキュリティ評価基準を15も満たしていると認定されている堅牢なOracle9iの機能をそのまま使えるだけでなく、さらにOracle9i Real Application Clusters(RAC)によって電子メールシステムをクラスタ構成にしたり、Oracle Data Guardを利用してスタンバイ構成にしても7500円という価格に変わりはない。

 逆に言えば、コラボレーション以外の機能を使いたい、ポータル機能を利用してさらに使い勝手の良いユーザー環境を構築したい、となれば本来のOracle9iライセンスが必要となる。オラクルがCollaboration Suiteで戦略的な価格を打ち出した背景には、同スイートをテコに、Oracle9i DatabaseやOracle9i Application Serverの利用拡大が見込めるという読みがある。いわば「トロイの木馬」だ(もちろんウイルスではない)。

 Oracle Collaboration Suiteは、1指名ユーザー当たり7500円でライセンスされるほか、企業向けにサービスとしてコラボレーション機能を提供するインターネットデータセンターやASPへのライセンスも行うという。2月24日のSolaris版を皮切りに、Linux、Windows、およびHP-UXの各バージョンが順次出荷される予定。なお、Calendarのコンポーネントの出荷は遅れるという。

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関連リンク
▼日本オラクル

[浅井英二,ITmedia]