エンタープライズ:ニュース 2003/02/20 20:17:00 更新


IBMがインテグレーションの切り札、DB2 Information Integratorを第2四半期に

日本IBMが情報統合を実現するミドルウェア、DB2 Information Integratorを第2四半期に正式発表することを明らかにした。企業に散在するさまざまなタイプのデータに対する統合的なアクセス手段を提供してくれるもので、インテグレーションのコストを削減することができるという。

 日本アイ・ビー・エムは2月20日、都内のオフィスでプレスブリーフィングを行い、リアルタイムなデータ統合を実現するミドルウェア「DB2 Information Integrator V8」の製品概要をプレビューした。

 IBMでは、企業顧客らのニーズが高まっている「インテグレーション」を、情報レベルで支援すべく、シリコンバレー研究所、トロント研究所、そして大和研究所の3拠点でXperanto技術を開発してきた。「Xperanto」は、国際語の「エスペラント」(Esperanto)とキーテクノロジーである「XML」を組み合わせた造語。その成果の一部は昨年初め、ベールを脱いでいる。

 日本IBMソフトウェア事業部でデータマネジメントソリューション事業部長を務める安田誠理事は、「情報統合を実現できるDB2 Information Integratorの機能は他社にはなく、われわれには大きなアドバンテージがある」と話す。

 Xperanto技術の第1弾としてこの日紹介されたDB2 Information Integratorは、企業に散在するさまざまなタイプのデータに対する統合的なアクセス手段を提供してくれるもの。従来の手法であれば、例えば、ETL(Extract、Transform、Loading)ツールを使い、さまざまなデータベースやファイルからデータを抽出し、変換後、データウェアハウスに流し込むことが必要だった。DB2 Information Integratorを使えば、ライバルベンダーのRDBMSはもちろん、ExcelシートやXML形式のデータなどをそのままに、単一ビューの仮想統合データベースを実現できるという。

 ブリーフィングに同席した日本IBMソフトウェア事業部のITスペシャリスト、菅原香代子氏は、「過去の手法では、いずれにせよデータの“移動”が必要だったが、Information Integratorでは、ネットワークバンド幅拡大の恩恵もあり、データをそのままリアルタイムに有効利用できる」と説明する。

 DB2には既に、他社RDBMSも含む仮想ビューを実現するフェデレーション(連邦化)機能が組み込まれている。IBMは、それらを切り出し、Information Integrator製品群でさらに拡張しようとしている。

 単一ビューの仮想統合データベースへのインタフェースとしては、SQLのほか、XML照会言語として標準化が進められているXQueryやWebサービスが使える。アプリケーション開発者は、使い慣れたSQLのスキルを生かすこともできるし、IBMが将来の本命として力を注いでいるXQueryを採用することもできる柔軟さがあるし、何よりもミドルウェアによって1つのデータソースのように見えるため、アプリケーションの開発が容易になる。

 IBMでは、ライバルのRDBMSでもリード/ライトできるラッパーや、オフィスツールのExcel向け、類似度の高い遺伝子情報を検索するツールであるBLAST向けなど、さまざまなラッパーを提供するほか、将来は開発キットも用意し、顧客がラッパーを書くこともできるようにするという。

 ブリーフィングでは、旅行代理店が海外スキーツアーをコーディネートするデモも行われた。来店した顧客の会員番号から年齢や嗜好を知り、それ基に類似する顧客たちが過去のどのようなツアーに参加したかを割り出し、最適なツアーを薦めるものだ。

 デモでは、顧客情報はDB2に、過去のツアーの参加履歴はOracleに、そしてツアーの詳細情報はExcelに、それぞれ格納されていると仮定した。そうした場合、これらの情報を統合するアプリケーションはかなり複雑になる。通貨や治安などの情報を提供するWebサービスやホテルの情報が蓄積されたXMLデータベース、地図データベースなどが統合できれば、さらにきめ細かなサービスとなるが、従来の手法ではシステムはそれに伴い複雑さも増してしまう。

 IBMは昨年秋、「e-ビジネス・オンデマンド」戦略を掲げ、生き残りを賭けてダイナミックな企業連携を図る顧客をソリューションプロバイダーとして支援しようとしている。安田氏は、「今後の企業システムでは、ユーザーインタフェース、ビジネスプロセス、アプリケーションというさまざまな領域でインテグレーションの機能が求められてくるが、Information Integratorはデータに近いレベルでそれを実現し、インテグレーションの鍵となるものだ」と話す。

 DB2 Information Integrator V8製品群の正式発表は第2四半期に予定されており、その際、価格や出荷時期なども明らかにされる。なお、IBMでは、今月26日から都内のホテルで「IBM FORUM 2003」を開催するほか、5月29日には「DB2 Day 2003 Spring」の開催も予定している。

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関連リンク
▼IBM FORUM 2003
▼日本アイ・ビー・エム

[浅井英二,ITmedia]