エンタープライズ:ニュース 2003/05/13 12:48:00 更新


IBM Software World直前レポート:第1回 WebSphereは信頼のブランド

ガートナーの最新の調査によると、IBMがついにJavaアプリサーバ競争でライバルのBEAから首位の座を奪った。IBMはブランド戦略に長けているわけでない、着実に顧客をサポートしてきた結果だと日本IBMの山下晶夫WebSphere事業推進部長は話す。

 ガートナーの最新の調査によると、IBMがついにJavaアプリサーバ競争でライバルのBEAから首位の座を奪った。WebSphereは2001年の31%から2002年は37%にその市場シェアを伸ばし、一方、BEA WebLogicは34%から29%に減らしている。インテグレーションソフトウェアやポータル単体のカテゴリーでも、IBMは2002年、首位となったほか、これらを含めたアプリケーションプラットフォームスイートのカテゴリーでも20%のシェアで首位に立つというオマケまで付いている。

 IBMは、Javaの正式デビューからわずか2年後の1997年、まだまだよちよち歩きだった新しい言語をすべてのサーバラインでサポートすることをコミットした。CORBAサーバであるComponent Broker技術をベースとしたEJB(Enterprise JavaBeans)のオリジナル仕様書をジャバソフト(当時)に提出したほか、Java開発がJCP(Java Community Process)に移って以降も、J2EE標準化を中心に主導的な役割を演じていることはよく知られている。

「IBMはブランド戦略に長けているわけでない。着実に顧客をサポートしてきた結果だと思う」と話すのは、日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部の山下晶夫WebSphere事業推進部長。

 山下氏は、4月にWebSphere事業推進部長に就いたばかり。それまではソリューショングループでISVのパッケージアプリケーションを販売していたという。

「アプリケーションを販売する立場からすると、ミドルウェアの品質やサポート体制は極めて重要だった。不具合があると、それがよく分かる。その点、IBMは信頼のブランドであり、品質やアフターサービスはIBMが支えていく」と山下氏はWebSphereの強みを話す。

 山下氏によれば、顧客らの関心はポータル、そしてインテグレーションへと拡大しているという。Webアプリケーションサーバの数が増えれば、それだけパスワードの管理も厄介になる。システムが分散化すれば、「今日どれくらい売れた?」という簡単な質問に答えるのも難しくなる。

「1つひとつのWebアプリを点と点で作り上げてきたが、ここへきて線になる動きが見えてきた」と山下氏。

 また、ビジネス環境の変化を反映し、企業の分社や統合が加速しているが、経営層の判断で決まったものの、ITがそれに追従できていないのも事実。山下氏は「Javaで標準化しておけば」とその重要さを指摘する。

「みんなが同じ標準をベースにしていけば、日に1回程度のルーズな接続なら、XMLメッセージングによってファイアウォールを越えて実現できる」(山下氏)

 それは、メジャープレーヤーで唯一Javaを採用していないマイクロソフトを排除するものでもない。

「(Webサービス標準では協力しており)マイクロソフトを否定するものではないし、Windows上でわれわれのミドルウェア群がきちっと動作するようにしなければならない。ソフトウェアインフラで激しく競合するつもりもない」(山下氏)

 山下氏がそう話す背景には、ソリューショングループでの経験がある。「顧客は必ずしもアプリケーションサーバにこだわっているわけではない。新しいシステムで何ができるかだろう」と山下氏。

 ただし、「何が何でもIBMにリプレースしてほしいというわけではない」としながらも、「PCサーバの世界を一歩出てしまえば、顧客はWindowsを望んでいない」と確かな自信も見せる。メインフレーム、UNIX、そして台頭するLinuxと異機種が混在する世界をつなぐには、Java標準が顧客には自信を持って勧められると話す。

 同社が5月27日から開催する「IBM Software World & developerWorks Live!」では、3日目に「オンデマンドへの道」というトラックを用意する。Javaはビジネスアプリケーションを開発する事実上の標準となりつつあるが、とはいえ、取っ掛かりはどうすればいいのか? どのようなデザインをすればいいのか? といった疑問を抱える開発者は多い。そんな参加者を対象にした、1日を通して行われる「オンデマンドへの道」は、Webサービスが1日で分かる中身の濃いトラックだという。

 もちろん、入門編もある。27日から2日間にわたって行われる「サーバサイドJava入門」は、Javaを始めたばかりのデベロッパーすべてにお奨め。日本IBMのソフトウェア技術者らが分かりやすいセッションを心掛けてくれるという。

「先ずはJavaの世界を紹介し、啓蒙していきたい」と山下氏は話す。

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関連リンク
▼IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003

[浅井英二,ITmedia]