エンタープライズ:ニュース 2003/05/14 23:57:00 更新


UNIXサーバキラーのT-レックス「z990」

IBM eServer zSeriesの最高峰「z990」は、9000MIPSを超える処理能力を持ち、従来型のレガシーアプリケーションだけでなく、WebアプリケーションやERPも1台のzSeriesに統合できるのが特徴。SAP R/3、WebLogic、Oralce9iが稼動し、他社UNIXサーバのリプレース/統合も可能だ。

 日本アイ・ビー・エムは5月14日、「T-レックス」のコードネームで開発されてきたIBM eServer zSeriesの最高峰「z990」を発表した席上、4月から5月にかけて発表された一連のサーバ製品群に関するブリーフィングを行った。

 eServerとストレージを担当する同社システム製品事業部では年初来、e-ビジネス・オンデマンドに基づくハードウェアの提案、TCO削減を目的としたサーバ統合、そして他社機のリプレースによるシェアの向上を図っているという。この日発表されたz990でも、9000MIPSを超える処理能力を持ち、従来型のレガシーアプリケーションだけでなく、WebアプリケーションやERP(IBMでは“ニューワークロード”と呼ぶ)も1台のzSeriesに統合できるのが特徴となっている。

 メインフレームの流れを汲んだ信頼性の高いオープンサーバを目指すz990は、もはやレガシーアプリケーションを念頭に置いた旧来型メインフレームではなく、ニューワークロードのためのプラットフォームや、UNIXサーバ統合を実現するLinuxサーバとして位置付けられているのだ。T-レックスを最高峰とするzSeriesでは、z/VM上で複数の仮想マシンを作り出し、その上でz/Linuxを稼動させることができる。ちなみに廉価版メインフレームのz800は、z/VMとz/Linuxのみをサポートし、レガシーアプリケーションの稼動に必要なz/OSはサポートされない。

橋本孝之常務執行役員

橋本孝之常務執行役員


「ミッドレンジとローエンドのサーバは思い切った価格戦略を打ち出し、一方のハイエンドはテクノロジーと付加価値によって価格を据え置いてハイパフォーマンスを提供することを目指している」と話すのは、日本IBMでシステム製品事業を担当する橋本孝之常務執行役員。

 5月7日以降に発表されたpSeriesの最上位機である「p690」はプロセッサの高速化によって性能を65%向上させ、xSeriesの「x450」では同社で初めて64ビットのItanium 2プロセッサを搭載した。

SAP R/3、WebLogic、Oralce9iが稼動

 e-ビジネス・オンデマンド時代のための「プレミア・プラットフォーム」とIBMが位置付けるz990は、8CPUが搭載される「MCM」(マルチチップモジュール)を最大4個まで拡張でき、32ウェイSMPで9000MIPS以上を叩き出す。いわゆるレガシーアプリケーションと呼ばれるバッチ処理やオンライントランザクションでは到底持て余す処理能力だ。

 IBMでは、従来型のレガシーアプリケーションに加え、ニューワークロードも統合することで、顧客のTCO削減の要求にこたえていく考えだ。これは、他社機のリプレースという点でも有利に働く。メインフレームをz990に更新することで、複数台の他社UNIXサーバも統合できるためだ。

 エンタープライズサーバ製品事業部長を務める星野裕氏によれば、zSeriesの処理能力の50%(MIPSベース)はニューワークロードに割り当てられ、また、Linuxが稼動している処理能力の比率も17%に達しているという。

 SAP R/3やBEA WebLogic Serverに続き、この2月にはOracle9iがz/Linuxで稼動するソフトウェアのリストに追加された。これにより、アプリケーションを変えずにそのままサーバ統合できるようになった。

 橋本常務は、z990にはこうした他社UNIXサーバのリプレース/統合という点で競争力があるとし、営業的にも力を注いでいきたいとする。

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▼日本IBM

[浅井英二,ITmedia]