エンタープライズ:ニュース 2003/05/21 18:11:00 更新


IBM Software World直前レポート:第3回 主役を務めるのはラショナルのランボー氏?

日本IBMへの統合に向けて作業中のラショナルが、IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003ではひと足早く主役を務める。オブジェクト指向設計・分析の権威で、UML創設者のひとりであるランボー氏が基調講演のために来日する。

 日本アイ・ビー・エムへの統合に向けて目下作業中のラショナルソフトウェアが、5月27日から開催される「IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003」ではひと足先にIBMの顔を務める。

 昨年12月、ビッグブルーによる買収が発表されたラショナルは、オブジェクト指向設計・分析の権威であるグラディ・ブーチ氏、イヴァー・ヤコブソン氏、そしてジェームズ・ランボー氏の3大メソドロジストが参画している。彼らは「スリーアミーゴ」と呼ばれ、デベロッパーらの尊敬を集めている。

 IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003の基調講演のために来日するランボー氏は、そんな3人を代表してOMGでUML(Unified Modeling Language:統一モデリング言語)の改訂作業を続けている中心人物だ。基調講演では、「オンデマンド時代の開発プロセスとラショナル製品最新動向」をテーマに話す予定という。

 ラショナルの主力ツールである「Rational Rose」は、UMLの策定で主導的な役割を果たした同社が開発したビジュアルモデリングツール。大規模な開発プロジェクトには標準的に採用されるというほどの存在だ。米IBMとは共同販売で提携していたほか、IBM WebSphere Studioに統合されたビジュアルモデリングツール、「Rational XDE」も提供するなど、ラショナルとIBMの関係は深かった。

 ただ、ラショナルはマイクロソフトのVisual Studio .NET向けのXDEを提供したり、国内コンピュータメーカーでも社内のUML標準ツールとしてRational Roseが採用されるなど、日本IBMへの統合が進む中でも、そのオープンさが求められている。

「IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003」(有償)では、ラショナル関連のセッションが22に上り、かなりの比率を占める。しかし、その多くは必ずしもRationalツールに依存した内容ではない。

「UML入門」「UMLによるテストモデリング」「UMLによるデータモデリング」といったセッションはもちろん、アットマークITがコーディネートする「J2EEと.NETを統合運用するWebサービス時代の開発手法とは」(豆蔵のCTO、萩本順三氏)や「オブジェクト指向の罠」(ウルシステムズ社長、漆原茂氏)のようなオープンさを裏付けるセッションも多い。

 また、最終日の29日に予定されている特別トラック、「オンデマンドへの道」には、WebSphereのエバンジェリストとして知られる米持幸寿らにラショナルのランボー氏も加わり、そのUMLによるモデリングから「RUP」(Rational Unified Process)と呼ばれるメソドロジーをベースに実際のシステムを構築していく過程を1日かけて見せていく。

 RUPは、「反復開発」の手法として知られているが、実際にはどのように進めていくべきなのか理解していない開発者も多いだろう。日本ラショナルソフトウェアでマーケティングを担当する渡辺隆氏は、「プロトタイプによるアプローチはともすれば、とりあえず作り、ダメなら……ということが多いが、RUPでは次のステップに進むのに満たなさなければいけない明確なポイントがある。また、プロジェクトの初期段階に高いリスクの芽を潰していくという特徴もある」とし、2日目に用意されている「反復開発の進め方」というセッションを薦める。

「目からウロコが落ちるのでは」と渡辺氏が話す同セッションは、Rational RoseやRUPのユーザーに限らず、参考になるのではないだろうか。

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関連リンク
▼IBM Software World 2003 & IBM developerWorks Live! with WebSphere 2003

[浅井英二,ITmedia]