エンタープライズ:インタビュー 2003/07/01 22:19:00 更新


Interview:N+IやCOMDEXを進化させる新生Medialive

「IT業界の変化に合わせ、われわれはカンファレンスを進化させていく」と話すのは、新生MedialiveのCEO、プリーストヘック氏。企業バイヤーのニーズにこたえ、N+IやCOMDEXの新しい役割を追求する新CEOに話を聞いた。

米国破産法第11条による再建申請からわずか4カ月後、COMDEXやN+Iの主催者で知られるKey3Mediaは財務的な建て直しの完了を宣言するとともに。ヨMedialive International」として再出発することを明らかにした◆。今週、千葉・幕張で開催されているNetWorld+Interop 2003 Tokyoのために来日したロバート・プリーストヘック新CEOとインターナショナル部門のプレジデント、キム・マイヤー氏に話を聞いた。

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6月中旬、新会社のCEOに昇格したプリーストヘック氏(右)とインターナショナル部門を統括するマイヤー氏


ZDNet Key3Media Groupが米国破産法第11条(いわゆるChapter 11)による再建を2月に申請するなど、ネガティブな状況の中、東京で「NetWorld+Interop 2003 Tokyo」が開幕しました。新CEOとして今回のカンファレンスをどう評価しますか。

プリーストヘック 先ず、負債によって財務的な問題を抱えたのは米国の親会社です。日本の子会社であるキースリーメディア・イベントは、対象外となっています。ビジネスモデルもしっかりとしており、強固な体制が維持できています。したがって東京のN+Iには何ら影響はありません。

 また、われわれはChapter 11を申請し、財産を保護したうえで再建計画を進めてきましたが、2週間ほど前にそれを完了し、新たに未公開会社として再出発することを発表しました。

 確かに資産保護の対象となるということはネガティブな印象を与えるかもしれませんが、ビジネスモデルに問題はありません。むしろ、われわれにとってはチャンスだと考えています。2月以降、負債を約90%減らし、新たな未公開会社「Medialive International」として再出発します。ブランドや資産をそのまま引き継ぎ、運営もモダンになり、本来の課題に取り組めるようになりました。

ZDNet N+I Tokyoに点数をつけるとすれば、何点でしょうか?

プリーストヘック 私は素晴らしいカンファレンスになると評価しています。いたずらに大規模なイベントを追求するのではなく、出展すべきベンダーが出展し、参加すべき人が参加している、つまり「relevant」な(関連性の高い)カンファレンスといえるでしょう。

 もちろん、日本においてN+Iが最大級のテクノロジーイベントであることに変わりはありませんが、参加者のニーズに応じて的が絞られています。「relevant」は、新会社のキーワードであり、フィロソフィーの一つでもあります。

マイヤー われわれのイベントは、テクノロジー市場の大きな変化を反映したものになっています。単なる一つのテクノロジーや製品を選ぶのではなく、「テクノロジーや製品を組み合わせ、実際にビジネスをドライブするためにどのように活用すればいいのか」へとバイヤーの関心は変化しており、それだけ意思決定も複雑になってきています。

 今回のN+Iでは、セキュリティやIPv6といったテーマごとにショーケースを用意し、新しいテクノロジーをライブで体験できるようにしています。企業バイヤーにとっては、価値の高いカンファレンスといえるでしょう。

ZDNet COMDEX/Fall Las Vegasについてお聞きします。1990年代の半ばまでは私もしばしば出掛けましたが、最近は足が遠のいています。今後、COMDEXが目指すものは何でしょうか?

プリーストヘック COMDEXに限らず、われわれが目指しているのは、バイヤーの求めていることを把握し、それにこたえていくことです。

 24年の歴史を誇るCOMDEXですが、最初の10年、15年はテクノロジーの開発や利用を促進するための触媒として大きな役割を果たしてきました。それは、世界中がテクノロジーによってインフラを構築していた時代だったからです。しかし、今や企業バイヤーは、ITへの投資をどのように経営に生かすか、どのように生産性を高めるのか、どのようにコストを節約するのか、といったことを自社のCEOやCFOに対して説得しなければなりません。

 ここ数年は、テクノロジー業界にとっては極めて厳しい状況が続いたため、よりその傾向が強まっています。言い換えれば、1980年代から1990年代は「スピード」「マインドシェア」「目新しいもの」がキーワードでしたが、より高い「精度」「ROI」「安定性」「サービス」といったものに変化しています。

 テクノロジーの変化というよりは、「進化」といえるでしょう。COMDEXの重要さが低下するということはありません。新しいニーズが生まれ、それにこたえるべくCOMDEXも進化しているのです。成功を収めているJavaOneカンファレンスも、そうした進化の典型的な例といえるでしょう。

マイヤー IT業界は劇的な変化を遂げています。多くのテクノロジーや製品が登場した過熱期を経て、再編期を迎えています。ベンダーは統合によってその数が少なくなっています。ちょうど自動車産業と同じです。自動車産業は50を超えるメーカーが乱立した時代、業界再編の時代を経て、成熟した安定成長期を迎えています。

 しかし、成熟してしまったからといって、自動車の重要性が低下したわけではありません。それと同じようにテクノロジーがどこかへ消えてなくなることもありません。どうやってテクノロジーによってビジネスをドライブさせるのかに企業バイヤーの関心が移っているのです。

 カンファレンスではファンシーで目新しいテクノロジーが姿を消しつつありますが、むしろ、深みが増しているといえるでしょう。さらにカスタマイズされ、さらに関連性が高まり、さらに高い価値にフォーカスした取り組みとなっています。

プリーストヘック われわれは、今年からCOMDEX Innovation Forumというワンデーセミナーを全米で展開し始めています。最近ではロサンゼルスで「ワイヤレス」をテーマに開催したばかりです。このほか、「オートノミックス」「セキュリティ」「バイオ」など、先端技術に的を絞り、参加者は各領域のソリューションをライブで体験できるようにしています。企業バイヤーの求めていることに対して反応良く、きちんとこたえていくことがますます重要になっています。それが「relevant」というわれわれのフィロソフィーなのです。



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[聞き手:浅井英二,ITmedia]