エンタープライズ:ニュース 2003/07/17 19:39:00 更新


基調講演:WebLogic Serverを基盤に「ノウハウ」の部品化を進めるソニーグループ

2日目を迎えたBEA eWorld Japan 2003の基調講演にソニーのシステム会社、ソニーグローバルソリューションズの大野氏が登場した。同社のSGS javaFramework Methodologyは、開発プロセスやアーキテクチャの共有を目指している。

 7月17日、都内のホテルで開催されている「BEA eWorld Japan 2003」カンファレンスは2日を迎え、パートナーや顧客企業らが基調講演に登場した。Hewlett-Packardと並ぶ盟友、Intelのワールドワイド ソフトウェアプログラム&アライアンスディレクター、ジョン・スキナー氏がステージに上がったほか、BEA WebLogic Serverで基幹業務の標準化を進めるソニーグローバルソリューションズが、「J2EEアプリケーションのプロジェクトとメソドロジー」をテーマに講演を行った。

 ソニーグローバルソリューションズ(SGS)は、ソニーが傘下に収めたシステムインテグレーターのシーアイエスをソニーシステムインフォメーションシステムソリューションズ(SISS)に合流させたもの。7月1日から社名も変更し、新たなスタートを切っている。

 同社(当時SISS)は今年2月、ソニーグループ向けのJavaベースシステム開発を効率化するため、J2EE開発で国内有数の実績を持つイーシー・ワンと業務提携した。BEA WebLogic Serverとイーシー・ワンのJ2EE開発フレームワークである「cFramework」を基盤とし、コンポーネントの共有を進め、開発効率を高めるのが狙いだ。

 同社プロジェクトマネジメント事業部でディレクターを務める大野豊氏は、マネジメントが時代とともにピラミッド型からプロジェクト中心に変化する中、システム構築におけるマネジメントスタイルも変化すべきだとする。

「組織から個人にパワーがシフトしている。個人の知識を生かせるマネジメントがシステム構築にも必須になる」と大野氏。

sony01.jpg

Playstation.comをはじめとするe-ビジネスアプリケーションの開発をマネジメントしてきた大野氏


 ただ、やみくもに個人のパワーに頼るのでは、開発リソースの点からも、開発生産性の点からも得策とはいえない。組織=求心力とは開発手法や方法論であり、クルマのブレーキにたとえられる。一方、個人=遠心力はアクセルであり、そのバランスが重要になるという。

 また、企業を取り巻く環境が絶えず変化を続ける中、仕様を決めてから開発に取り掛かるというのでは、顧客とコミュニケーションができないと大野氏は考えている。

「従来は仕様が決まることが前提となっていたし、決まったら途中で変わらないものだったが、インターネットアプリケーションは仕様が決まらないこと、そして途中で変わることを前提にプロジェクトをマネジメントする必要がある」と大野氏。

 SGSが開発した新しいJavaベース開発のメソドロジーは、こうした個人のパワーを生かすマネジメントスタイルや前提条件の変化に対応すべく作成された開発プロセスだ。Rational SoftwareのRUP(Rational Unified Process)を自社の開発プロセスに取り入れ、いわゆる反復型開発方法論も実践している。

 大野氏によれば、ユーザーはJavaによって開発を依頼すれば、自動的に「部品化」されると考えがちだという。しかし実際には、例えば「販売管理」といった業務ロジックのような粒度の高い部品の再利用は難しい。ERPがそのまま使えないのと同じだ。逆に入出力のようなライブラリレベルになれば、再利用しやすい。

「目的は短期間で安く開発することであり、部品の共有がゴールではない。われわれが新しいメソドロジーで目指したのは、開発プロセスの共有であり、アーキテクチャの共有で、いわば“ノウハウ”の部品化といえるものだ」と大野氏は話す。

 SGSのメソドロジーは4つのレイヤーから構成される。先ずは、WebLogic Server上に載せられたイーシー・ワンのcFrameworkで、これを「Core Layer」と呼ぶ。これをベースとし、すべてのプロジェクトに共通となるモジュールをJ2EEのアーキテクトが「System Base Layer」として用意する。アーキテクトは、その上にプロジェクトごとに共通となる「Application Common Base Layer」も開発する。これはパターンガイドであり、サンプルアプリケーションといえるものだ。いわゆるプログラマーは、これらを参考にしながら、業務アプリケーション「Application Layer」を開発する。

 「難しい作業はアーキテクトに、逆にやさしいものだけをプログラマーに開発してもらう」というのが基本的な考え方となる。

 こうした役割を明確に定義することで、社員に求められるスキルも明確になると大野氏は話す。人材育成は、同社のメソドロジーの重要な柱ともなっているという。

 なお、ステージでは、WebLogic Serverを基盤として2001年に開設されたPlaystation.comや、ソニーが開発した非接触ICカード技術、FeliCaのデモも行われた。Playstation.comでは、My Sony Card(FeliCaを採用したeLIOクレジットサービス)による決済にも対応しており、安全にネットショッピングが楽しめるという。

sony02.jpg

PCにUSB接続されたICカードリーダーにMy Sony Cardを置くだけ


関連記事
▼WebLogic Serverで知るJSP/Servlet入門
▼BEAが先制パンチ、J2EE開発を簡素化するWebLogic Workshopの実績をアピール
▼Interview:「次はプロセスベースのプログラミングモデル」とBEAのチュアングCEO
▼日本BEA、「WebLogic Server 8.1J」を発表
▼基調講演:BEAとの協業でRISC陣営を引き離しにかかるインテル
▼「過去」を生かし「未来」をもたらすBEA WebLogic Platform 8.1発表
▼BEA eWorld Japan 2003 レポート

関連リンク
▼ソニーグローバルソリューションズ
▼BEA eWorld Japan 2003オフィシャルサイト

[浅井英二,ITmedia]