エンタープライズ:ケーススタディ 2003/08/12 20:27:00 更新


リースプロセスもすべて電子化、ASTERIAでAribaやSAPとつなぐ昭和リース

インフォテリアのASTERIAを利用し、リース業界で初めてリースプロセスすべての電子化を実現した昭和リース。「1社だけでは意味がない」と競合他社へパッケージ販売することも検討しているという。

 総合リース業大手の昭和リースが、「EC Lease Station」構想を掲げ、リース関連業務の電子化に取り組んでいる。顧客がリース契約をWeb上で管理できる「Customer Platform」や、サプライヤー向けの「Vendor Platform」などを整備する一方、昨年11月、電子調達システムとの連動も競合他社に先駆けて実現している。電子調達とリース業務が連動することで、見積もり、契約、解約、変更、再リース、終了といった顧客から見たリースのプロセスすべてが電子化された。

 「企業は電子調達システムの導入によって、間接材の調達コストだけでなく、調達プロセスにかかるコストの低減にも努めているが、PCや事務機器をリースする場合は、従来どおり、ペーパーベースで処理するしかなかった」と話すのは、昭和リースで営業推進部EC推進チームを率いる藤本裕哉課長。

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「リースの電子化はここまでできる」と藤本氏


 例えば、Ariba Buyerを導入している企業の購買担当者が電子カタログからPCを探し出しても、リースとなると、リース会社に電話やFAXで見積もりを依頼するという書類ベースの手続きになってしまう。Ariba Buyerであれば、社内の承認プロセスも電子化されているためにスムーズに行くのだが、リースだけは非効率で時間のかかるプロセスに逆戻りだ。

 なんとかリースにも電子調達のメリットを生かしたいと考えていた企業の1社に松下電工があった。彼らは、Ariba Buyerに対応できるリース会社を探しており、白羽の矢が立ったのが、電子購買コンソシアムに参加するなど、電子化に積極的だった昭和リースだ。

 とはいえ、昭和リースには、当然ながら既存の基幹システムが存在した。電話やFAXで受けた見積もり依頼を処理し、契約がまとまれば、会計システムにもその情報を引き渡すなど、受注全般を管理するものだ。

 「松下電工グループの要望にこたえるため、Ariba BuyerのAriba Supplier Networkと既存システムをつなぐ必要があったが、将来を見据え、SAPやOracle、あるいは大手企業が自社開発した電子調達システムにも対応できるものにしたかった」と藤本氏。

 Ariba Buyerと社内システムの仲立ちをするシステムは、「LeasePro3」(リースプロスリー)と名付けられ、データ連携を統合するハブとしてインフォテリアの「ASTERIA 2」が採用された。ASTERIAは、RosettaNetやAribaなどですぐに使えるB2Bのターンキーソリューションとして産声を上げたが、バージョン2にあたるASTERIA R2では、異なるデータフォーマットやネットワークプロトコルが混在する企業内や企業と企業にも目を向け、そこでのデータ連携を統合するハブへと進化していた。

 ASTERIA 2では、アイコンをベースとした直観的でプログラミングが不要な設計環境も併せて提供されており、システム連携のためのインタフェース開発期間を大幅に短縮できるという。

 実際、昭和リースのLeasePro3では、システム提案から運用まで、わずか2カ月半という極めて短期間で漕ぎ着けることができた。既に松下電工インフォメーションシステムズ(NAIS-IS)が、ASTERIA 2を利用してAribaやSAPの電子調達システムとつなぐサプライヤー向けのソリューションで実績を重ねていたことを割り引いても、そのスピーディーさには驚かされる。

 LeasePro3によって、松下電工グループのリース調達にかかるプロセスが大幅に短期化されたことは言うまでもない。

 購買担当者がAriba Buyerから商品を選択し、画面で「リース」の項目をチェックしておくだけで、購入金額ではなく、リース見積もり額が表示される。あとは、購入の場合と同様、申請および承認のプロセスへと移る。書類ベースでは、昭和リースからサプライヤーに内容や条件を確認する作業も発生するし、顧客企業でも承認プロセスが電子化できないため、最短でも1日、手間取れば1週間はかかっていた発注までのフローが、わずか10分で済む。

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Ariba Buyerからシームレスに昭和リースの見積もり画面に移る。確認ボタンを押せば、再びAriba Buyerの申請、承認プロセスに戻ることができる


 昭和リースでは、リースの契約、検収、変更、解約を電子署名で処理できるWebベースのCustomer Platformも提供しており、松下電工はこれを併せて利用することで、電子調達におけるリースプロセスすべての電子化を目指している。

 電子化への早期取り組みが、それまで取引のなかった松下電工グループとの契約に結びついたが、藤本氏は「ネットでリースできるのは確かに昭和リースだけだが、われわれ1社だけで顧客の要望にこたえられるわけでもない」と話す。

 同社では、3年間で100社以上の企業と接続していくことを目標に掲げる一方、LeasePro3のパッケージ販売も検討している。

 「1対1でつないでも仕方ない。リース業界の競合他社も接続されなければ、顧客はリースの恩恵を十分に得られない」(藤本氏)

 電子購買コンソシアム標準へ準拠し、リース業界における汎用的なサーバ製品としてLeasePro3を売り込んでいきたいという。

 なお、インフォテリアでは9月12日、都内で「INFOTERIA DAY 2003」カンファレンスを開催する。京セラや東芝セミコンダクターらとともに、昭和リースもユーザー企業として事例紹介セッションに登場する予定だ。

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関連リンク
▼昭和リース
▼インフォテリア
▼INFOTERIA DAY 2003カンファレンス

[浅井英二,ITmedia]