エンタープライズ:ニュース 2003/10/22 10:36:00 更新


OracleWorld 2003 Paris開幕、「グリッド」が海を渡り欧州へ

欧州で「OracleWorld 2003 Paris」が開幕した。Oracleが当地でカンファレンスを開催するのは3年ぶり。今回は、新戦略の下でフラグシップ製品が3年ぶりにバージョンアップしたこともあって、欧州各国から約7000人の顧客やパートナーらの来場が予想されている。

 仏パリ郊外 ラ・デファンスにあるCNITで10月21日、米Oracleはユーザーカンファレンス「OracleWorld 2003 Paris」を開催した。9月上旬、本拠地のサンフランシスコで大々的にグリッドコンピューティング戦略を発表したOracleだが、今度は欧州ユーザーに向けてアピールする。

 10月、花の都パリは落ち葉が舞い、街並みは秋の装いとなる。最もパリらしい、美しい季節だ。今年の夏は異例の猛暑に見舞われたパリだが、今となっては良い出来が期待される今年のワインの話で持ちきりだ。

 そんなパリにOracleが上陸し、3日間にわたって最新戦略のエンタープライズグリッドを説く。Oracleが当地でカンファレンスを開催するのは3年ぶり。今回は、新戦略の下でフラグシップ製品が3年ぶりにバージョンアップしたこともあって、欧州各国から約7000人の顧客やパートナーらの来場が予想されている。

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凱旋門の北にあるビジネスエリアで開幕したOracleWorld。ハイテク企業も多く、高層ビルが建ち並ぶ


 21日、「Welcome to the grid」のメッセージとともに登場した同社EMEA(欧州・中東・アフリカ地区)担当執行副社長のセルジオ・ジャコレット氏のリードの下、同氏と同社CEO室担当上級副社長、チャールズ・フィリップス氏が基調講演を行った。

 ジャコレット氏は先ず、「グリッドはインターネット以来の“Big Thing”(大事件)だ」とし、Oracleがどうしてグリッドというソリューションに行き着いたのかを簡単に説明した。

 「以前、人間が作り出した情報は、2001年までで6エクサバイトあるという調査結果を聞いたとき、それをOracleに格納しようと冗談を言っていたが、これは実現している。現在、Oracleのデータベースは単体で8エクサバイトが格納できる」とジャコレット氏。その後、情報はさらに増え、現在24エクサバイトと推定されている。

 「OracleのDBが3台。悪くない」と彼は笑う。

 ジャコレット氏が言わんとしていることは、情報量が爆発的に増えつつあるという現状だ。現在、携帯電話の加入者は固定電話の数を上回り13億人に達しており、そのうちの4割弱が、携帯電話を使ってインターネットなどの情報にアクセスしている。また、テレマティクス技術により、クルマも情報化が進んでおり、近い将来、モバイルインターネットポイントとなるだろう。その次は、すべてのオブジェクトに小さなRFIDのタグが付けられる時代が控えている。こうなると、情報はインクリメンタルに増え、それにアクセスしようとする人も増える。情報を効率良く格納・管理することは不可欠となる。

 「需要は増えているが、予算は減っている。企業のIT部門はジレンマに陥っている」とジャコレット氏。これを解決するのがエンタープライズグリッドだ。

 「パワフルな最新技術を安く手に入れることが可能となる」(ジャコレット氏)。

ブレード、Linuxとの組み合わせを推奨

 続いて登場したフィリップス氏は、まずOracleのグリッドを明確に定義することからスピーチを始めた。科学学術分野から発達したグリッドだが、コンピュータベンダー各社はこれをさらに改良している。学術分野グリッドの概念を採用しつつ、QoS(サービス品質)などを維持する機能などが加わったものだが、フィリップス氏は、Oracleの定義はさらに踏み込んだもので、「調和のとれた形で小型サーバを多数接続し、一台の大規模なコンピュータのように利用すること」と定義する。

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フィリップス氏は具体的にブレードサーバへの統合、Linuxなどの標準化の利用、自動化と3ステップでのグリッド実現を推奨した


 現在のようにピーク時の負荷に備えてシステムを構築した場合、時期やアプリケーションによって稼動していないサーバが出てくるため、どうしても無駄が生じてしまう。フィリップス氏は、「サーバの平均稼働率は60%といわれている。また、75%のコストはスタッフとメンテナンスに充てられている」と現在IT部門が抱える無駄を指摘し、クラスタとグリッドの組み合わせにより負荷ベースでのシステム最適化を実現し、この問題を解決できるとした。

 航空業界では空席のままフライトを飛ばすことが非効率と考えられているが、コンピューティングも同じ問題を抱えており、対処が必要だという。

 「コスト削減のプレッシャーはもちろん、サーバやOSの低価格化、NASやSANなどストレージとサーバの分離、Infinibandなどの高速接続技術……、(グリッド導入の)環境は整いつつある」(フィリップス氏)

 グリッドのメリットは、コストだけではない。開発者はコードを変更する必要がない上、データベースのセルフチューニング機能や自動化プロセスにより、管理作業も大幅に軽減するという。

 IBMやSun Microsystemsなど、ベンダー各社はさまざまな名称を付けて、電気や水道などの公共サービスのようなコンピューティングサービスを目指しているが、Oracleのグリッドの差別化は、サービスとしてのソフトウェア提供にあるようだ。これまで、Unbreakble Linux、RAC(Real Application Clusters)などに取り組んできたOracleは、グリッドで顧客を次のステージへと導く。

 同社のグリッド戦略を実現する製品は「Oracle Application Server 10g」「Oracle Database 10g」「Oracle Enterprise Manager 10g」の3製品となるが、現在のところ、アプリケーションサーバは11月、データベースと管理ソフトウェアは12月末に提供される予定という。

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[末岡洋子,ITmedia]