エンタープライズ:ニュース 2003/11/07 22:28:00 更新


「これが真のグリッド」──日本IBMがDB2 Dayでオラクルを牽制

日本IBMが「DB2 Day Autumn 2003」を開催した。今回は、Oracle 10gを強く意識し、「データグリッド」にテーマが絞り込まれた。「データの仮想化は、IBMが長年培ってきた技術。ライバルたちに追従できるのだろうか?」と余裕を見せる。

 日本アイ・ビー・エムは11月7日、都内で「これが本当のデータグリッドだ」をテーマに「DB2 Day Autumn 2003」を開催した。これまでDB2 Dayでは、その時点の最新情報を紹介することが多かったが、今回のセミナーでは情報統合ソリューションの核となる「データグリッド」に的が絞り込まれた。先月、国内でも正式発表されたOracle 10gを強く意識したもの。

 冒頭、オープニングの挨拶に立ったインフォメーションマネジメント事業部の中川いち朗事業部長は、「オラクルが10g構想を発表したが、われわれの土俵に上がってきただけ。IBMが既に提供している真のデータグリッドを理解してほしい」と話した。

nakagawa01.jpg

「DB2は拡張性も可用性もOracle9i RACを上回る」と中川氏。この日はDB2 Integrated Cluster Environment(16ノード)のデモも行われた


 IBMのDB2は2002年、新規ライセンス収入で世界と国内どちらにおいても市場シェアが首位だったほか、日経コンピュータ誌の「顧客満足度」においてもトップの評価を得ている。オープン系のプラットフォームでは依然としてOracleの後塵を拝しているものの、ISVやシステムインテグレーターといったパートナーを介したビジネスが急速に拡大しており、「21世紀のデファクトに向けて、大きな変化が起こっている」と中川氏。現在、チャネル経由の売り上げが44%と半分近くまで迫り、アプリケーションの数も2万6000本に達している。

 こうした原動力になってきたのがOracleの約1/2というライセンス価格だが、中川氏によれば、最近では機能面での評価も大きく後押ししているという。そうしたテクノロジーアドバンテージの一つが、今回のDB2 Dayのテーマともなった「データグリッド」だ。

オンデマンドを支えるグリッド技術

 パルミサーノCEOの下、全社を挙げて「e-ビジネス・オンデマンド」を推進するIBMは、それを支える技術として、「オートノミック」「Webサービス」、そして「グリッド」(仮想化)という3本の柱を位置付けている。「オンデマンド」とは変化に即応できる力であり、システムインフラの側面から支援することがIBMの使命となっている。

 中川氏に続いて基調講演に登場したグリッドビジネス事業部の関孝則技術理事は、「変化の激しい21世紀には、ダーウィンの進化論ではないが、“強者ではなく、変化に適応したものが生き残る”。生き残るために企業は組織を超えてダイナミックに統合され、例えば、生産計画を迅速に変更したり、ビジネスプロセスを柔軟に変えていかなければならない」と話した。

 グリッドコンピューティングというと、どちらかという科学技術分野での応用が先行しているが、「異機種」「分散」環境で、なおかつ「組織を超えた」コンピュータ資源の仮想化をもたらすグリッド技術は、ビジネス分野にも大きな恩恵をもたらす。分散化によって企業のシステムは必然的に「異機種」「分散」環境となっており、さらにインターネットの普及は「組織を超えた」動的な連携を迫っているからだと関氏は話す。ネットワーク上のあらゆる資源、つまりプロセッシング能力、データ、およびストレージの仮想化は、メインフレームでは当たり前の一元管理を異機種分散環境でも実現し、さらには「QoS」(サービス水準)も維持できる仕掛けへと進化するはずだ。

 IBMは、こうしたグリッド機能をWebSphereをはじめとするさまざまなミドルウェア製品に組み込む作業を進めており、データの仮想化、すなわちデータグリッドを実現すべく今年6月、「DB2 Information Integrator」を発表している。Oracleなどライバル製品はもちろん、Excelファイルのような既存のデータもそのまま仮想統合できる機能は、他社の追従を許していない。

 今回のセミナーでは、DB2 Information Integratorの導入事例として、パイオニア・ディスプレイ・プロダクツや七十七銀行が紹介されている。いずれもOracleデータベースが導入されており、それを含むデータの仮想化を図っているところが面白い。

 「データの仮想化は、IBMが長年培ってきた技術。ライバルたちに追従できるのだろうか?」と中川氏は余裕さえ見せる。

 IBMでは、ライバルたちとの差を広げるべく、Webサービスをベースとしたグリッド標準「OGSA」(Open Grid Services Architecture)をGlobusアライアンスと共同提案しており、すべてのハードウェアとミドルウェアを対応させていくとしている。

 関氏は、「1990年代半ば、コンテントへのアクセス手段として登場したHTTPがビジネスに使えるとは思えなかった。ネットワーク上のさまざまなリソースにアクセスするOGSAも想像を超えた変化をもたらすに違いない」と話す。

関連記事
▼Interview:真のデータグリッドを実現するDB2──「オラクルとの戦いに勝算あり」
▼第8回 オートノミック機能を組み込んだIBM DB2こそ「データグリッド」の先駆け
▼IBMがインテグレーションの切り札、DB2 Information Integratorを第2四半期に
▼Oracle vs. DB2――仁義なき戦い データベース編

[浅井英二,ITmedia]