シン・クライアントが不況に打ち勝つコスト削減を果たせる理由

クライアントPCの管理において発生するコストや負荷、そして内部統制上のリスクなどに悩む情報システム担当者は少なくないはず。その課題を抜本的に解決するソリューションとしてシン・クライアントという選択肢があるが、まさに決定版ともいえるシン・クライアント方式が登場したようだ。コスト削減の特効薬となり得る「統合型」シン・クライアントの特長を探る。

» 2009年05月25日 10時00分 公開
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シン・クライアント導入の理想的なモデルとは

 日常的に適切なセキュリティアップデートが必要、もしトラブルがあれば迅速な対応が要求される、なのにエンドユーザーはポリシーに則った使い方をしてくれない……。企業内でクライアントとして使われるPCの管理には、手間もコストもかかる。しかもPCは、ローカルにデータを置いておくことができ、エンドユーザーもそれを当然と考えているから、情報漏えいリスクを低減するのは難しい。といって、情報漏えい対策としてPCの持ち出しを禁止すれば、ユーザーの使い勝手が悪化する。そして、PCの故障や災害など不測の事態で使えなくなれば、通常業務にも支障が出る……。

 今やPCクライアントは、情報システム部門やエンドユーザーにとっても、もちろん経営層にとっても、多くの課題を抱えている存在だ。シン・クライアントを活用したソリューションは、こうした課題を抜本的に解決する選択肢として認知が進んでいる。端末の管理を効率化し、データやアプリケーションソフトは情報センターに集約できるからトラブルからの復旧も容易、情報漏えいリスクの低減にも役立ち、内部統制対策にもなるし、コスト削減も期待できる。

 しかし、多くの企業が、さまざまなメリットを認識しつつもシン・クライアントの導入に踏み切れないでいる実情もある。導入障壁の1つに、シン・クライアントを実現するための方式が多様であり、それぞれ一長一短であることが挙げられる。

 ここで、シン・クライアント導入の代表的な2つの方式について紹介しよう。まず、ターミナルサービス(TS)方式では、サーバ上にユーザーの業務環境を集約できるため管理が容易でTCO(Total Cost of Ownership)低減効果も大きい反面、しばしば従来使用していたアプリケーションソフトウェアの互換性が課題となり、その検証に時間がかかる上に、非定型業務を行うユーザーを除外しなければシン・クライアント化が難しい。一方、ブレードPC(あるいはクライアントブレード)方式では、ほぼすべてのアプリケーションを利用でき、ユーザーごとに高度にカスタマイズした環境を提供することも可能で、普通のPCと比べても遜色ない業務環境を提供できる反面、集約度は低く、コスト削減の効果もTS方式ほど上がらない傾向にある。

画面転送方式 メリット デメリット
ターミナルサービス(TS)方式 シン・クライアントの実装方式としては普及しており、安心感がある サーバリソースを複数ユーザーで共有することによるパフォーマンス低下のリスクがある。アプリケーション側の対応を確認する必要性がある
ブレードPC(クライアントブレード)方式 TS方式のメリットに加え、アプリケーションのインストールなど、クライアントユーザー側の自由度が高い 搭載されるCPUが低速な場合が多い
仮想PC方式 より高密度なシンクライアント環境の構築が可能となる TS方式以上に仮想マシンのパフォーマンス管理がシビアになる
シン・クライアントシステムで主流の画面転送方式とそのメリット・デメリット

 つまり、どちらの方式を選んでも何らかの問題が付きまとう。部門によって業務内容が大きく異なるような企業の場合、TS方式では全社的なシン・クライアント化を実現できず、ブレードPC方式ではコスト削減の効果が今ひとつとなってしまう。自社に適した方式を選ぶ時点で逡巡してしまい、実際の導入まで踏み切れない企業も少なくないことだろう。

二つの方式の“いいとこ取り”を実現した「統合型」

 こうしたユーザー側の反応を受けて、シン・クライアントを提供するベンダー側でも、導入の敷居を低くするべく工夫を開始した。

 日立製作所では、「セキュアクライアントソリューション」と呼ぶ同社のシン・クライアントソリューションにおいて、TS方式を用いた「センター型」と、ブレードPC方式を用いた「ポイント・ブレード型」を柱としていたが、それに加えて2009年1月より「統合型」の提供を開始した。

 この「統合型」は、単純にいえばTS方式とブレードPC方式を組み合わせて利用できるようにしたものだ。ユーザーが得られるメリットは大きく、まさに“いいとこ取り”となる。例えばTS方式を検証の容易なオフィスアプリケーションなどに限って利用し、それ以外の非定型業務ではブレードPC方式を採用するというように、ユーザーの業務内容に応じて2つの方式から選択すれば、検証の手間や時間を節約できる。また、当初は一方の方式で導入しつつも、将来的に別の方式を追加するといった柔軟な導入スタイルも可能となる。シン・クライアントの導入方式で悩まずに済むというメリットは大きい。

 「統合型」では、TS方式とブレードPC方式のクライアント管理を一元化しているため、クライアントの接続先を切り替えたり、1つのクライアント上で同時に2方式を併用したりすることもできる。同じデスクトップ画面上で、ブレードPC上のアプリケーションと、TSから提供されるアプリケーションを混在させ、シームレスに使えるのである。システム構成的には、日立と長年のパートナー関係にあるCitrix社が開発したCitrix XenDesktopと日立のFLORA bd Linkという統合管理用ソフトウェアを搭載した接続管理サーバが、こうしたクライアント管理を可能にする。

 また接続管理サーバ導入により、クライアントへの画面転送プロトコルに、10年以上の実績があり転送効率の良さなどで高い評価を得ているCitrix社のICAプロトコルが利用できる。

 なお、ユーザー端末となるクライアント装置に関しては、日立では「FLORA Seシリーズ」を推奨しているが、ICAに対応できれば端末の種類は事実上問わない。まずは既存のPCを端末としてそのまま活かしながらシン・クライアントを導入できるよう情報センターに業務環境を集約し管理コストを低減、その後はPCの更新サイクルに合わせてFLORA Seシリーズを導入しセキュリティを強化していく、といった選択肢もある。この点も、シン・クライアント導入の敷居を下げるのに役立つといえよう。

 ちなみに、FLORA Seシリーズは言うまでもなくHDDは非搭載で、なりすまし防止用にUSB接続の認証デバイス「KeyMobile」を使うことにより、万が一装置自体の紛失や盗難があっても、情報漏えいを防げる。指静脈認証装置やスマートカードもオプションで利用可能だ。日立ではFLORA Seシリーズを、まず自社内で2005年から大規模に活用している。敷居を下げる取り組みは、4年以上におよぶ同社のシン・クライアントシステム運用経験から編み出されたものなのだ。

シン・クライアントが不況に打ち勝つコスト削減を果たせる理由-1 「セキュアクライアントソリューション統合型」の概要

導入障壁を下げコスト削減も果たす新型ブレードPC

 「統合型」によるコスト削減の効果は、一般的なクライアント・サーバ環境と比較した場合、従業員2,000人規模の企業でTCOにして30%(*1)と日立では試算している。TS方式とブレードPC方式を組み合わせることで、社内に散在するPCのうち95%という高い割合をシン・クライアントに移行でき、さらに情報センター内でPC資源の集約・共用化を進めることで管理すべき資源そのものも削減できる。その両方の効果を合わせての削減効果だという。

*1 従業員2,000人の企業において、デスクトップPCである日立の「FLORA 300W」シリーズによるシステムと、「FLORA bd500」を活用した「セキュアクライアントソリューション 統合型」によるシステムについて、導入後4年間のTCOを比較。

 さらに日立では、統合型という新しいシン・クライアント方式の長所を伸ばすことを狙って、よりTCO削減を期待できるハードウェアを投入する。

 5月にリリースされた新型ブレードPC「FLORA bd500」は、従来から販売している「FLORA bd100」の上位モデルとして開発された製品で、ラック当たりの収容台数は最大320台、FLORA bd100と比較して約2.3倍という、業界最高(*2)の高集積化を実現した。また、FLORA bd100に引き続きインテル社製プロセッサーを採用し、最新のCPUと大容量メモリーによって、ビジネス向けノートPCの最新モデルにも遜色のない処理能力も実現している。CPUの種類やメモリー容量などの選択も可能なので、ユーザーのニーズに合わせて適切な構成を作り上げられる。

*2 2009年5月現在、(株)日立製作所調べ

 FLORA bd500では、筐体にも工夫が凝らされている。単に多数のブレードを搭載できるようにしただけでなく、電源や冷却ファンの冗長化をより高め、サーバに迫る高い信頼性を実現した。ブレード故障はもちろん、電源ユニットや冷却ファンの故障でも、動作を止めずメンテナンス可能となっているので、クライアントのダウンタイムも一層抑えることができる。

 また、ブレードPCの動作状況に応じて電源やファンの動作を効率的に制御することで装置の省電力を実現した。省電力という観点では、オプションの(ただしFLORA bd500には無償試用版がバンドルされている)省電力運用ソフトウェア「SAVINGDA Pro」(セービングディーエープロ)を活用すれば、夜間や休日に電源が入ったまま使われていないブレードを自動的に休止状態にするなどの運用が可能になり、電力消費を抑えることで、さらなるコスト削減が期待できる。ちなみにSAVINGDA ProはブレードPCの稼働状況を集計・管理する機能も備えており、どれだけの省電力効果が得られたかをシステム管理者ばかりでなくユーザー自身も確認できる。

 さらにFLORA bd500では、導入を一層容易にする「オールインワンパック」のラインアップも予定されている。

 セキュアクライアントソリューション「統合型」においては、管理サーバがいくつか必要になる(Citrix XenDesktop™/Desktop Delivery Controller、ActiveDirectory®、日立のFLORA bd Linkを搭載するサーバ)。これらの機能は別途サーバ装置を用意して稼働させるのが一般的だが、管理対象クライアントが少数ならばブレードPCの性能でも対応できる。そこで、サーバ機能も同じ筐体内のブレードPC上に搭載し、ワンセットで導入できるようにするというわけだ。これは、小規模事業所での利用や試験的な導入の際に役立つと期待される。また、各サーバソフトウェアの導入や基本設定も出荷時に済ませてあるので、設置時の設定も簡単にでき、迅速に利用を開始できる点も大きなポイントとなるだろう。

シン・クライアントが不況に打ち勝つコスト削減を果たせる理由-2 新型ブレードPC「FLORA bd500」。1台のPCに相当する「クライアントモジュール」は、インテル® Core™ 2 Duoプロセッサー(P9600、P8600のいずれか)あるいはインテル® Celeron® プロセッサーを搭載。メモリーは標準1GB、最大4GB。HDDは120GB。筐体となる「ベースユニット」は5Uサイズで、クライアントモジュールを40台まで搭載可能。1U=44.45mm

シン・クライアント導入は「守り」と「攻め」の両面で

 シン・クライアントのメリットには、セキュリティ強化やTCO削減などの“守り”の側面だけでなく、エンドユーザーの利便性向上をはじめとする“攻め”の側面もあることは、いうまでもない。

 通信インフラの充実により、今や日本中ほとんどの地域でより安定した高速データ通信が可能になっている。この環境を活用すれば、遠隔地や出張先のシン・クライアントで自分の業務環境を利用することも容易だし、在宅勤務やサテライトオフィスといったいわゆるテレワークも、セキュリティを保ったまま実現できる。

 さらに、シン・クライアントが契機となり、ビジネスのスタイルも大きく変わってくる。セキュアクライアントソリューションと組み合わせて使用できる日立の「座席ナビ」という在席管理ソリューションでは、スクリーンセーバーが動作すれば離席したものとしてプレゼンス情報を更新するなど、エンドユーザーが意識しなくても利用できる機能が盛り込まれている。またIPテレフォニーと組み合わせて、ログインした端末で自分の内線電話も一緒に利用できる。例えば出張でも、認証情報を記録したKeyMobileだけ持って行き、出先に用意されている出張者用クライアントを使うだけ。つまり出張先のクライアントを使って作業していても、自席にいるのと変わらないのだ。実に手軽だといえよう。

 シン・クライアント導入ニーズの潜在的な高さを物語る一つの証明として、日立によれば、提供開始されたばかりのセキュアクライアントソリューション「統合型」に、早くも採用事例があるという。その企業では、業務の特性上、情報漏えい対策は非常に重要な課題だった。加えて膨大な数のPCクライアントがあり、その管理を効率化していきたい考えもあるという。長期的にみればクライアントOSの進化などにも対応していく必要があるし、より効率的なワークスタイルを考えていく必要もあるだろう。このような環境の中、セキュアクライアントソリューション統合型は、“守り”と“攻め”を両立させるクライアント環境として重要な役割を果たしていくことになるはずだ。

 昨今の厳しい経済環境の中、まずは急いで“守り”を固め、コスト削減を行う必要があるのは間違いない。しかしその先に明るい兆しが見えたとき、再び“攻め”に転じられる力をシン・クライアント採用により蓄えておくことも、自社のIT戦略を考える上で忘れてはならない布石ではないだろうか。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2009年6月24日