「どこでもオフィス」の実現で業務効率アップ:モバイルシンクライアントがPHP研究所にもたらした真のメリットとは

PHP研究所は、NECが提供する仮想PC型シンクライアントシステム「VirtualPCCenter」を導入した。検討当初は情報漏えい対策や重要データ保護などが目的だったが、「いつでも、どこでも、自分の環境で仕事ができる」仮想PCのモバイル活用が大きな決め手となった。実際に運用を開始してみると、セキュリティ強化のみならず、営業活動のスピードアップや残業時間の削減などの効果も現れた。PHP研究所の取り組みは、シンクライアントシステムがセキュアな環境を確保した上で、業務効率の向上に大いなる効果を発揮することを教えてくれる。


各利用者に応じた環境を構築できる仮想PC型シンクライアントシステムを検討

 1946年の創設以来、研究活動、出版・普及活動、啓発・実践活動の3つの柱に基づき、数多くの実績を上げてきたPHP研究所。京都・東京の本部と研修開発センターを擁し、派遣やアルバイトも含めると400人以上が日々業務にいそしんでいる。同社では業務を進める中でセキュリティ強化を課題とし、対策を検討していた。情報システム本部 本部次長の森口孝幸氏はその背景を次のように説明する。

 「情報漏えい防止の観点から社外でのPC利用を制限したり、重要データの取り扱いなどにも細心の注意を払って運用していましたが、システム面での基盤作りが追いついていない状況でした。また、万一の事故や機器トラブルなどによるデータ損失の対策も講じる必要があり、セキュリティ強化のためにシンクライアントシステムの導入を検討したのです」

PHP研究所 情報システム本部 本部次長の森口孝幸氏 PHP研究所 情報システム本部 本部次長 森口孝幸氏

 検討にあたり、森口氏はまず社内PCの利用状況を調査した。調査の過程で聞かれたのは「セキュリティを強化するあまり、アプリケーションの利用に制限がかかると、業務が滞ってしまう」という声だ。同社の事業特性上、頻繁な外出や出張、深夜残業や休日出勤が多い、作家の原稿や顧客情報などの重要データを多数扱う、編集作業で様々なアプリケーションを使用する――など、社員によって就業形態や利用環境が大幅に異なる。こうした中で、画一的に利用制限をかけるのはかえって生産性を下げてしまう。社員が安心して業務に従事できるよう、セキュリティが強固でかつ、柔軟性の高いシステム基盤が求められていた。

 「このような状況から、当社のシンクライアントシステムは、各社員のPC環境をこれまでと同様の使い勝手を維持しながらサーバ上に集約し、端末側にはデータを持たせないことでセキュリティを保持できる『仮想PC型』が最適だと判断しました。利用者に応じたPC環境を個別に提供できるため、業務効率を下げずに移行できると考えたのです」(森口氏)

VirtualPCCenter導入を決定――決め手はNECの総合力

 この要件を踏まえ、森口氏は具体的な製品・システムの議論を始めた。そして3社から提案を受け、3カ月の検討期間を経て導入を決定したのが、NECの「VirtualPCCenter」だった。森口氏はその理由をこう話す。

 「3社の製品を検討しましたが、NECおよびNECネッツエスアイの製品とサポート力を高く評価しました。当社の業務に合った運用が可能であり、部門ごとに導入パターンを考案する際も密にサポートしてもらいました。また、技術的な疑問や問題点にも迅速かつ、きめ細かく対応いただいたことで、大きな安心感を得たからです。こちらもいろいろ無理をお願いしましたが、これなら一緒にやっていけると思いましたね」

「業務効率向上」に真価を発揮するモバイルシンクライアント

 その後、情報システム部は、VirtualPCCenterの必要性や導入効果について役員に説明したが、結果は意外なものだった。

 「セキュリティが重要であることは理解してもらえましたが、それに加えてほかのメリットもなければ費用対効果が低く、導入はできないと言われてしまったのです」(森口氏)

 セキュリティはいわば「守り」の投資だ。会社の利益に直結するものではない。重要性は認められるものの、それだけで導入に結び付けるという判断は難しいのも確かだろう。

 森口氏は、セキュリティ強化以外の面でも効果を見いだすために、他社の事例を調べ始めた。大きなヒントが得られたのは、ある税理士法人の取り組みだった。そこでは、客先での打ち合わせや自宅、移動中にデータ通信カードを使ってサーバ側の仮想PCにアクセスすることで、外出先でも社内と同じセキュアな業務環境を作っていたのだ。

PHP研究所 情報システム部 部長の森行夫氏 PHP研究所 情報システム部 部長 森行夫氏

 当時のPHP研究所、特に出版部門では夜間や休日の対応も多く、メールチェックのためだけに休日出勤するというケースも少なくなかった。また、営業部門でも得意先訪問や商談などの外出後、報告書作成や経費精算といった事務処理のために会社に戻らなくてはならず、社員の利便性が損なわれていた上に、移動する時間の分だけ余計に残業代が掛かるなどの課題も抱えていた。情報システム部 部長の森行夫氏は当時の印象をこう振り返る。

 「社外でも社内と同じ環境が使えるので、仕事の途中で外出したとしても、移動先で続きをすぐに再開できます。つまり、時間や場所を選ばずに仕事ができるのです。業務のスピードも上がりますし、これだと確信しましたね」

 「いつでも、どこでも仕事ができる環境」を体感した両氏は、仮想PC型シンクライアントシステム導入がもたらす真のメリットは利便性の向上による業務効率化だと見いだしたのだ。

「どこでもオフィス」の実現に向けて

 シンクライアントシステムの導入が大きな業務効率化につながると確信した情報システム部は、ノート型シンクライアント端末「US60*」を用いた検証を開始。社内のイントラネットやメインフレームにアクセスし、実際の業務に使える仮想PC環境を構築した。森口氏はこれを「どこでもオフィス」を実現するシステムとして役員会で発表したという。

 「役員会でのデモは大成功でした。VirtualPCCenterによって業務効率が向上することを全員が理解してくれたのです。その結果を受けて社長にも上申したところ、すぐにメリットを理解され、その場でGOの判断が出たほどです」(森口氏)

 社長は、後日開かれた経営会議で自らシンクライアントシステムの必要性を解説するほど真剣な姿勢を見せ、「シンクライアント化は社長のプロジェクトとして進めるように」と導入を後押しした。

 全社導入にあたって同社は以下のシステムを構築した。VirtualPCCenterを基盤とし、470台の仮想PCはIntel® Xeon® プロセッサー搭載のPCサーバ「Express5800/120Rh-1」上で稼働する。また共有ストレージとしてSAN対応の「iStorage D3-10」、統合管理サーバには高い可用性を持つ無停止型サーバ「Express5800/320Fd-LR」を採用している。

 社内のクライアント端末には、手のひらサイズのデスクトップ型シンクライアント端末「US110E」のほか、既存のPCからも仮想PCに接続するなど、資産の有効活用も図っている。社外使用にはUS60をデータ通信カードとセットで50台導入。これらは共有使用の端末として各部署に割り当てられた。

PHP研究所のシステム構成イメージ PHP研究所のシステム構成イメージ (クリックで拡大表示)

社員の反響からも導入の正しさを実感

 最初にシンクライアントシステムが導入されたのは営業部門だった。割り当てられたノート型シンクライアント端末は2部署の合計で20台。社外でも社内と同様の環境で仕事ができることが浸透してくると、常時貸出中の状態が続き、すぐに台数が足りなくなるほどの人気になったという。

 情報システム部門ではその後、各部署に順次展開を進めていった。部門ごとに段階的な導入を実施したことが功を奏し、シンクライアントへの移行は順調に進んだ。システム構築と同時に、運用手順やシンクライアント環境以外の社内セキュリティルールの周知を含めた社員への説明会を計画的に実施していった。結果、大きな反発もなく、最初に営業部門に導入してから4カ月後には全社でシンクライアント環境が整う形となったのである。

モバイルシンクライアント活用によりお客様への提案もスピーディーに

 シンクライアントシステムの全社導入から半年以上が経ち、情報システム部には全社から多くの反響が寄せられている。特に多いのは、VirutalPCCenterのモバイル活用によって業務効率が向上したことだという。

 「外出先でメールチェックが可能になったので、移動中などの空き時間を有効活用できるようになりました。また、社内の業務アプリケーションにアクセスして在庫や受注状況をその場ですぐに確認できます。最新の情報をもとに商談を進められるのでお客様への提案もスピードアップし、顧客満足度が上がっています」(森口氏)

 モバイル利用による恩恵はそれだけではない。従来、在庫状況などは社外の営業から社内のスタッフに電話で問い合わせていたが、確認に時間がかかるだけでなく、社内スタッフは対応に追われ、本来の業務に支障が出てしまうなど負荷が掛かっていた。しかしシンクライアントシステムのモバイル活用により、社外の営業が直接データを調べられるようになったため、社内のスタッフは本来の業務に集中できるようになった。

 また、外出先でもすぐに資料を参照できるため、紙の資料を持ち歩くことが大幅に減ったという。印刷準備の手間を省けるだけでなく、コスト削減やエコにも貢献しているのだ。

 出版部門でも効果は現れた。社内に保存している原稿データを社外からでも閲覧、修正できるようになり、取材先から会社に戻る必要がなくなったのだ。また、締め切り前の多忙な状態でも合間の時間でどこにいても事務処理ができるなど、業務効率が大きく向上している。森口氏が社長に提案した「どこでもオフィス」がまさに実現したのだ。

社外での空いた時間でも社内と変わらない環境で業務を進められる 社外での空いた時間でも社内と変わらない環境で業務を進められる

情報システム部のクライアント管理負荷も低減

 VirtualPCCenterの導入は情報システム部にもメリットを与えている。これまでPCトラブルや問い合わせに応じて、現場に足を運んだり実機を郵送したりということもしばしば発生していたが、現在、社員のPC環境はサーバ上にすべて集約されているため、リモートでのサポートで済む。

 また、シンクライアントシステム検討当初は予定に無かった、オフィス移転の際にもメリットがあったという。

 「2カ所に分かれていた東京本部を1つのオフィスに統合したのですが、端末にはデータがないため、250人分を超えるPC環境でも情報漏えいのリスクもありませんし、バックアップや環境設定変更などの手間をかけることなく安全かつスムーズに移転作業を終えられました。これもVirtualPCCenterを導入していたからこそ実現できたことです」(森氏)

情報システム発展の礎となるVirtualPCCenter

 現在は、顧客情報や営業の進ちょく状況などを管理するSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)の導入検討を進めている。シンクライアントシステムとの融合により営業力を加速させる狙いだ。

 「今検討しているSFAなどは、モバイル利用できるシンクライアント環境があるからこそ力を発揮するシステムと言えるでしょう。VirtualPCCenterによって、これまでに構築した社内システムも、より有効活用できるようになっています。当社の情報システムはVirtualPCCenterが実現したモバイルシンクライアント環境を基盤としてステップアップしているのです」(森口氏)

 今回の導入で、PHP研究所の情報システムが活性化した姿を社員に見せることができたと森口氏は胸を張る。VirtualPCCenterは今後もPHP研究所の事業の発展を支えていくだろう。


* 後継機は軽量薄型のノート型シンクライアント端末「US10Na」です。(2010年2月1日現在)

ユーザー概要

php_photo.jpg

PHP研究所

・設立 : 1946年(昭和21年)11月

・資本金 : 7億5000万円

・本社所在地 : 京都市南区西九条北ノ内町11番地

・社員数 : 370人(平成20年10月現在)

・事業概要 : 20世紀の日本を代表する実業家である松下幸之助氏によって、1946年に創設された出版社。研究活動、出版・普及活動、啓発・実践活動の3分野の事業を展開している。研究活動では主に政策の研究や提言、出版活動では「月刊PHP」などの雑誌やビジネス、科学、児童文学などの書籍を発行、啓発活動では「PHP友の会」の支援を通じた社会活動などを手掛けている。




提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2009年2月28日