ストレスなき電子情報管理術:電子の世界で実現した紙の使い勝手――DocuWorks開発責任者に聞く

文書の扱いを効率化すべく電子文書化による管理手法が登場して久しい。しかし、電子文書は慣れ親しんだ「紙」とは異なり、ITリテラシーによって利用のしやすさに差が生じるため、必ずしも全員がメリットを享受できるわけではない。その中で富士ゼロックスは、「紙の持つ価値」を電子の世界で実現する挑戦を続けている。ドキュメントハンドリング・ソフトウエア「DocuWorks」は15年以上にわたって全国のユーザーから多くの支持を獲得し続けてきた。


 電子化された情報は検索や再利用が簡単容易であり、物理的な保管場所を最小限にできるなど、紙に記録された情報と比べて多くのメリットがある。しかし、情報を整理したり、管理したりするためにはソフトウエアを利用しなければならず、取り扱いに慣れる必要がある。利用者によっては、電子化された情報の利用はストレスに感じる場合もある。一方、紙は、情報を伝えたり残したりするためのメディアとして、古くから使われてきた。

 紙文書は、IT環境が整った現代のオフィスにおいても利用されている。しかし情報管理の点ではIT化のメリットに目が向いてしまい、長年にわたって紙がもたらしてきた価値や便利さは無視されがちである。富士ゼロックスのDocuWorksは、「電子の紙」を実現するソフトウエアとして1996年の登場からバージョンアップを重ね、海外進出も果たし、国内では累計出荷が280万ライセンスを超えるなど、多くのユーザーから支持を集めている。DocuWorksがなぜ紙にこだわって開発し、それがユーザーにとってどのような価値をもたらしてきたのか。DocuWorks開発プロジェクトの当初からメンバーで、現在は開発責任者の富士ゼロックス ソリューション開発部 一力英樹氏に聞いた。

思考の邪魔をしないソフトウエア

一力氏 富士ゼロックス ソリューション開発部 一力英樹氏

 一力氏によると、同社における「電子の世界に紙を作る」という新たなコンセプトに向けた挑戦はDocuWorks誕生のさらに3年前にさかのぼる。

 「1993年にいろいろな商品開発チームから技術者を集めたプロジェクトが発足しました。その中には幾つかのタスクチームがあり、そのうちの1つで、わたしが所属していたタスクチームが後のDocuWorks開発チームに発展していきます」(一力氏)

 当時はまだインターネットは普及しておらず、PCも一人1台という環境には程遠く、PCを使いこなすことは簡単なことではなかった時代だ。その頃のタスクチームのミッションは、文書をいかに管理すべきかという課題について、その方法論を検討することだった。

 「当時の上司から、“今あるアプリケーションの範囲で考えている間はダメだ。オフィスにおける紙の価値や役割について徹底的に考え抜き、他に比べるものがない新しいコンセプトを持ってこい”と、何度も何度も提案を突き返されました」(一力氏)

 タスクチームに求められたのは特定のニーズにだけ対応するものではなく、汎用性のある普遍的な商品を作り出すことだった。つまり、情報を単に管理できればいいというものではなかった。一力氏らが試行錯誤の末にたどり着いたのが「紙を模倣する」ことだったという。

 「基本は“紙”のようになること。オフィスで紙は当たり前のように使われます。電子の世界で、紙のように触れる感覚を与えたらPCの使い方はどう変わるのか。情報の中身に左右されることなく、同じように扱えるメディアが紙であり、電子の世界に欠けていたものではないのか。慣れ親しんだ紙と同じような感覚で扱える仕組みを電子の世界に実現したい、と考えました」(一力氏)

 「紙とは何か?」そんな哲学的な考察からDocuWorksの研究は始まった。紙そのものの持つ普遍的な価値の追求には2年もの歳月が費やされ、「電子の世界に紙を作る」という当時としてはとても斬新なコンセプトが固まっていった。

 紙の特徴には、情報の記録だけではなく、束ねたりばらしたり、自由に書き込んだりといった使い勝手の良さもある。人間にとって紙とは思考の道具であり、コミュニケーションの手段なのだ。一力氏は、「電子の紙」というコンセプトから具体的にDocuWorksのプロトタイプを作り上げていく過程で、紙のように何気なく使える直感的なユーザーインタフェースを目指したという。

 「人は仕事をする時、紙やペンの存在を意識せず、本来のやるべき仕事の中身に意識を向けています。直観的なユーザーインタフェースを検討していく中で、判断に迷った時には“紙を模倣する”という基本方針に立ち返り、“紙と同じように思考を中断させず扱えるようにする”ことを、メンバー共通の判断基準として設計していきました」(一力氏)

DocuWorksの進化の歴史 DocuWorksの進化の歴史

紙の良さを継承しながらシステム化する“ドキュメントハンドリング”

 電子文書タスクチームは、このようなコンセプトに基づいてプロトタイプの試作を重ね、技術確立を行なった。そして1996年、「DocuWorks」として市場に登場する。最初のバージョンは卓上サイズの複合機に同梱するソフトウエアだった。

 「当時からすでに“ドキュメントハンドリング・ソフトウエア”という冠がついていて、カタログにも記載されています。ドキュメントハンドリングとは、“文書を紙のように扱うことで、快適に仕事をするための場や道具を提供する”という想いを込めて、富士ゼロックスが提唱した言葉です」(一力氏)

 そして、1998年にリリースしたバージョン3から初めて単体のパッケージ商品として販売されるようになった。DocuWorksが「ドキュメントハンドリング」というソフトウエアの新たな市場を作った瞬間だった。これまでにない製品だけに開発者も全国各地の営業拠点を回って、営業担当者に使い方を紹介していった。そして営業とともに、お客様にどのように説明すれば価値を理解してもらえるか知恵を絞ったという。下図の「内線番号表」はその説明に活用した一例である。

内線番号表 Web型の内線検索システムの利点は、一瞬でテキスト検索でき、書類配送も不要、情報一元管理や更新にも優れる。反面、個々に開発される機能や業務システムごとに操作手順を学習して使いこなす必要がある。もし、ユーザーインタフェースとしてDocuWorksを利用すると、従来の紙文書と同じように全体を見渡しながら直観的に探す操作を残しつつ電子的なテキスト検索も可能になる。さらに、一部のページだけ抜き出して手元に置いたり、付箋を貼って個別にメモ書きしたりなど、紙で行なっていた業務と同じ工夫を駆使し自分好みにカスタマイズもできる。

 「内線番号検索システムの多くは、名前で検索したり部門名をクリックして階層的に相手を探すには便利ですが、全体を見渡すことは難しいでしょう。昔から使われていた紙の内線番号表なら、無意識に眺めているだけで、自然に会社の組織構造まで分かってきます。これも“直感的”に情報が把握できるという紙の特徴のひとつです」(一力氏)

 オフィスワークに紙はなくてはならないものだが、情報環境のシステム化においては、紙の良さは置き去りにされがちである。DocuWorksでは、かつての紙文書の利点をそのまま取り入れて電子化できる。一力氏はあるユーザーから「DocuWorksは、右脳で使うことができるビジネスソフトだ」と評価されたことが心に深く残っているという。

DocuWorksがこれから目指すもの

荒井氏 富士ゼロックス ソリューションマーケティング部 荒井聡行氏

 DocuWorksはリリース後、個人、中小大手企業、官公庁にいたるまで、規模や業種を問わず幅広いユーザー層を獲得してきた。個人が使うケースもあれば、10万を超えるライセンスを導入したユーザーもある。DocuWorksが追求するユーザーの思考を邪魔しない紙のような直感的な使い勝手が理解されつつあるようだ。富士ゼロックス ソリューションマーケティング部 荒井聡行氏によると、DocuWorksは厳しい経済状況でも販売が好調である、という。

 「リリースまでの3年間に行なわれた紙の価値追求という研究は、DocuWorksの土台となっています。他の追随を許さず順調に販売が伸びているのも、その基礎がしっかりしているからだと考えています」(荒井氏)

 かつての電子文書タスクチームの目指した「普遍的な価値」は多くのユーザーに認められ、今ではユーザーが独自の使い方をさまざまに創造するようになった。「DocuWorksはユーザー自身のノウハウを盛り込むためのプラットフォームとして使われるようになっているようです」(荒井氏)

 一力氏は、組織の活性化にもDocuWorksを役立ててほしいという。「企業が持続的に活動し成長するためには、従業員一人ひとりの成果の最大化が重要だと思います。育てた人材が高いモラールとモチベーションを持って仕事をした結果、どれだけ顧客価値や社会貢献の価値をアウトプットできるかを追求する。これが企業活動の本質だと信じ、仕事をする“人”を支援するソリューションを考え続けています」(一力氏)

 DocuWorksでは、“電子の紙”というコンセプトをベースに、時代の変化や新たな顧客ニーズに応える価値を探索する開発が続けられている。

連携市場が盛り上がりつつある

 さて、ソフトウエアベンダーやシステムインテグレーターの中には、DocuWorksと連携したいと興味を示しているところが多く、すでに多数の関連ソリューションが各社からリリースされている。富士ゼロックスはDocuWorksの開発ツールキットを無償提供し、連携に必要なAPIの強化も進めている。

 「各社から、自社商品をDocuWorksと連携させたいというご相談を頻繁にいただきますが、DocuWorks活用の幅を広げていただけるので感謝しています。連携を実現する方法の相談に乗りながら、公開している開発ツールキットなどを自由に活用して、お客様に提供してくださいとお願いしております」(一力氏)

 また、既存の業務システムとDocuWorksを連携させるSI案件の事例も数多くあるという。「業務システムにDocuWorksの持つ良さを加えることによって、システム全体の使いやすさが向上します。また、一部の業務がシステム化されていても、全体のワークフローにおいては紙文書が多く残っている場合が多いのですが、この紙をDocuWorksに置き換えるだけで、紙文書までカバーできる業務システムになり大きな改善効果が期待できます」(荒井氏)

 DocuWorksにはユーザーによる活用ソリューションが多数存在する。また、富士ゼロックスの社内においては全従業員が利用しており、「DocuWorksは、あって当然」という意識に定着している。ソリューション事例を紹介する場合も、DocuWorks活用のみで紹介されるより、業務プロセスや文書管理の課題と解決を中心に紹介されるケースの方が増えている。一力氏は、それこそが、めざし続けてきたDocuWorksの理想の姿、「空気のような存在」だと語る。

 「紙がそうであるように、本当に重要な道具というのはユーザーに意識されるようではいけません。存在していることさえ忘れて使われる……。それが文化として定着した姿が、私のめざす理想です」(一力氏)

 「紙の普遍的な価値」によって、ユーザーの本質的な業務課題解決を追求し続けるDocuWorksの今後の展開に期待したい。

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提供:富士ゼロックス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年3月31日