企業のグローバル化とクラウド活用を後押ししたい切磋琢磨するニッポンのソフトウェア

「日本発のソフトウェアを世界へ!」との掛け声の下、国内の有力ソフトウェアベンダーによって2006年に設立されたメイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)。以来、MIJSは海外に事務所を開設するとともにMIJS標準規格を発表。海外でワークショップも積極的に開催するなど、取り組みを年々深化させ、メンバー企業も今では50社を超える。では、MIJSは今後、何に軸足を置き活動を進めようとしているのか。MIJSで理事長を務める内野弘幸氏と、プロダクトビジネス推進委員会委員長を務める美濃和男氏との対談から、今、そして今後の取り組みを探りたい。

» 2011年05月11日 10時00分 公開
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海外展開という国内ベンダーの「志」を実現するために

MIJSコンソーシアムの理事長を務める、ウイングアーク テクノロジーズの内野弘幸代表取締役社長 MIJSコンソーシアムの理事長を務める、ウイングアーク テクノロジーズの内野弘幸代表取締役社長

内野 MIJSはパッケージ製品を中心に事業展開する国内の有力ソフトウェアベンダーによって2006年に設立されました。日本より規模も体力も小さな韓国などのベンダーが海外進出を積極化させているのを目の当たりにし、われわれも国内のビジネス基盤の強化のみならず、海外展開に注力する必要を痛切に感じていたことがその背景にあります。

 日本のパッケージ製品は個々に見れば、決して海外製品に対して劣っているわけでありません。そこで、われわれが連携し、パッケージ連携モデルを創り上げられれば、その利便性を高められ、グローバルで先行する大手ベンダーにも共同で立ち向かえると考えたのです。

美濃 私がMIJSのメンバーに加わったのは2007年のことでした。2009年からは委員会を運営する立場で活動に携わっています。参加の動機は、MIJSの設立とその意義深さを知って、これはぜひメンバーに加えてもらわなければ、と考えたことです。

 MIJSには「海外展開委員会」と「製品技術強化委員会」、そして私が委員長を務める「プロダクトビジネス推進委員会」という3つの委員会がありますが、取り組みは年々充実し、関わるメンバーも確実に増えています。経営者や部長クラス、現場で活躍されている方の中でも「志」のあるメンバーが中心となり委員会活動を行うことで、活動に好循環が生まれています。

内野 現在、海外展開委員会では海外でのマーケティングや流通のノウハウをメンバーに伝えることを、そして製品技術委員会では情報共有を通じてメンバーの製品技術力を高めることを中心に活動しています。またプロダクトビジネス推進委員会では、製品の良さを積極的にアピールしメンバーのビジネスを支援することを目的に定めています。

 現場レベルの若い技術者が委員会を牽引することもしばしばあるようですし、委員会はとてもうまく機能していると考えています。

リーマンショックがクラウド普及の引き金に

プロダクトビジネス推進委員会委員長を務める美濃和男氏。CRMアプリケーションベンダー、エイジアの代表取締役でもある。 プロダクトビジネス推進委員会委員長を務める美濃和男氏。CRMアプリケーションベンダー、エイジアの代表取締役でもある。

内野 これまで聖域化されてきた日本企業のIT投資も、いわゆる「リーマンショック」を機に見直しが加速したというのが私の実感です。過去、日本では現場の細かなニーズも汲み取れるよう、フルスクラッチでIT化を進める企業が多かった。しかし、その場合には運用と保守にかかる費用が高止まりする傾向があるのは否めません。

 IT投資を抑えるとなると、手っ取り早く新規投資は凍結してしまえばいいのですが、運用と保守のコストはなかなか減らせません。その後、クラウドが話題になるわけですが、その理由として使った分だけ利用料を払えば、定常コストをさらに削減できるとの考えがあったはずです。その点で、実はリーマンショックがクラウドの普及のきっかけになるのではないでしょうか。

美濃 同感です。従来は機能が優れていれば、たとえ高額であってもユーザーに少なからず購入してもらえました。しかし、リーマンショック後は、案件当たりの単価が下がっており、私が社長を務めるエイジアではサービスとして継続的に利用してもらえるよう、商品ラインアップの見直しを進めているところです。

 ユーザーにとっては、クラウドのメリットは決して小さくないでしょう。利用に当たって高額な初期投資を負担しなくてもよく、使って気に入らなければ、ほかのサービスへ容易に乗り換えられます。つまり、最適なシステムを選択することが可能になるわけです。

内野 確かに、そうしたメリットから、すでに米国ではクラウドは産業として成り立つほどビジネスのボリュームが大きくなっているようです。ただし、残念なことに「クラウド」といってもいろいろあり、日本ではユーザーのあいだに誤解や混乱があるように感じられます。これはわれわれの責任でもあり、その対応の必要性を強く感じています。

美濃 実際のところ、クラウドとホスティングの違いも、現状では分かりにくいですよね。システムの使い方として重要な選択肢のひとつである以上、クラウドの理解を促すための活動は今後も力を入れていきます。

クラウドのメリットは「手軽さ」と「コスト」

内野 クラウドがなぜユーザーにとって分かりにくいのか。その点を私なりに考えてみたのですが、そこで思い至ったのは、多くのベンダーがIaaSやHaaSなどハードウェアを中心にクラウドを語っていることが原因ではないかということです。しかし、例えばIaaSではサービスとして提供された仮想インフラの上に自分でソフトウェアをインストールし、構成しなければならず、ライセンスも購入しなくてはなりません。これでは、使った分だけ利用料を払うという、本来のクラウドのメリットを享受できないでしょう。

 これから数多く登場することが予想されるPaaS型サービスについて言えば、そのメリットは、システムを立ち上げる際の構築にかかるコストや品質を高めるためのコストを大きく抑えられる点にあるでしょう。また、利用のピーク時に柔軟にリソースを追加でき、使わなければ料金を支払わなくても済みます。

美濃 当社では、アプリケーションまで含めたSaaS型サービスを提供していますが、選んでいただいたユーザーには、すぐに使える点を最も高く評価してもらっています。もちろん、社外で情報を管理することに懸念を示すユーザーも少なくありません。そこで当社では、ユーザーの社内にデータを置いてVPNでセンターと接続する、いわば「ハイブリッドクラウド型」のメニューも用意しています。最もユーザーが多いのは一般的なクラウド型ですが、ハイブリッドクラウド型は、利用料は高めに設定しているものの、契約解除はほとんどなく、継続的に利用されています。

グローバル化で再確認されたパッケージの有効性

内野 一方で、多くの日本企業が製造業を中心に海外移転を加速しています。それに伴い、アプリケーションの多言語対応など細かな機能改善も求められています。加えて、ユーザーのパッケージに対する意識の変化も感じています。海外拠点にはパッケージを導入したところ、その上で業務がきちんと回った、それが分かり、パッケージ製品を活用するユーザーも確実に増えています。われわれも、海外進出した日本法人をサポートしていくのはもちろんのこと、現地で新たなユーザーを開拓し、グローバル競争を勝ち抜かなければなりません。

美濃 そもそも日本企業がパッケージを選択する割合はおよそ2〜3割で、これは海外企業がフルスクラッチする割合と同程度です。しかし、海外進出によりパッケージをうまく活用するという経験を経たことで、日本企業にもパッケージソフトウェアの良さを改めて理解してもらえたのではないでしょうか。

内野 日本企業は現場で細かな工夫を積み重ね、個々に最適化された業務をこれまで作り上げてきました。だからこそ、細かな部分まで手を加えるフルスクラッチでの開発がこれほど広く受け入れられてきたのです。

 しかし、時代は変わり、産業界でもモジュール化された部品を外部から調達し、それらをいかに効率的に組み合わせ、かつ付加価値を高めるかという点に力点が置かれるようになるなど、従来とは競争する領域が明らかに変わりつつあります。そうした状況では、業務をある程度標準化してもパッケージを選択した方が、費用対効果から考えれば明らかに優れているはずです。

 また、コンピュータの役割も従来の情報を「処理」するものから、蓄積された膨大な情報をビジネスに「活用」するものへと変貌を遂げつつありますます。得られたインサイト(洞察)を経営に生かすことで投資の何倍ものリターンを得ることも夢物語ではありません。こうしたトレンドに乗り遅れないようにしなければ、国際競争に敗れてしまいます。

ソフトウェア業界として大震災の復興を支援する

美濃 3月の東日本大地震によって、程度の差はあれ、多く企業が影響を受けました。MIJSとしても、地震が発生した地域の復興を支援するために、できる限りの手を打ちたいところです。

内野 ウイングアーク テクノロジーズも本社機能が東京に集中しており、また開発機能の一部も都心にあるため、リスクを改めて肌で感じました。ただ、その対応にあたってITの果たす役割は極めて大きいと思います。クラウド上に構築したCRMシステムに自宅からアクセスすることで、社員は自宅で業務を行えましたし、請求業務や受注出荷手配業務は大阪の西日本営業所で代行できました。今回の経験を踏まえ、開発もリスク管理の観点から地方に分散させることを考えていきます。

美濃 MIJSに加盟するサイボウズが今回の震災に際して、製品を無償提供する支援策をいち早く打ち出しました。われわれも普段からサイボウズのグループウェアを使い加盟企業間で情報交換していますが、地理的な制約をなくせるというメリットは、やはりITならではでしょう。

 復興支援の観点では、ソフトウェア業界ならではの貢献ができると考えています。ソフトウェアの付加価値というのは、人の知恵と人の手によってのみ高めることができます。つまり、機械などの設備に依存せず、人のみが付加価値の源泉であるわけです。そして、その“人”の所在地に制限はありませんので、産業インフラの回復を待たずとも、被災地の方々の雇用に貢献できる可能性が高いと思います。

 また、復興支援のために次の勉強会合宿は東北地方でやろうと真剣に検討しています。

内野 MIJS各社代表と、今回の震災に対して我々が支援できることを議論しています。まずは、今回の教訓を素直に受け止め、われわれ自身がクラウド環境でのビジネスを促進することで、災害時に強い仕組みを提供できます。また、被災地区に起業しているIT企業との交流をはかり、例えばイベント開催などを通じて、復興に向けた協業を推進できないものかと考えています。そして、被災地区のユーザー様への支援策の検討も進めるつもりです。検討結果は、共有する予定ですから、ぜひ注目してください。

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提供:メイド・イン・ジャパン・ソフトウェアコンソーシアム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年6月30日