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物理と仮想を真に統合:最適なデータセンター仮想化を果たす“4つのL”とは?

日本IBMのラックマウント型スイッチ「IBM RackSwitch」は、データセンターに最適化された処理能力と低消費電力を特徴とし、IBMのネットワーク仮想化ソフトウェア「VMready」などと組み合わせることで、真にデータセンターに最適化された仮想化環境を構築できるという。


データセンターを最適化するための手法とは

 企業のITシステムを取り巻く環境は、進化を遂げる一方だ。ネットワークは10Gbpsにまで高速化を遂げ、40/100Gbps環境も視野に入りつつある。また、サーバやストレージのパフォーマンスもますます向上し、それらの利用効率を高めるための仮想化技術も急速に普及している。

 これらの変化を背景に、高い処理能力や安定性が求められるデータセンターにおいては、システム設計のあり方を見直す機運が高まりつつある。すなわち、ネットワークやサーバ、ストレージを一体のものとして捉え、統合されたシステム――いわゆるConverged System――として構築しようとの考えが着々と広がりつつあるのだ。

 日本IBMのシステム製品事業システムx事業部でシステム・ネットワーキング戦略担当を務める太田安信氏は、「これまで企業ではネットワークとサーバ、ストレージの最適化が個別に図られてきました。しかし、それらの仮想化技術が登場したことを機に、各リソースの動的な変化に対応するためにも、各構成要素が連動して動作する仕組みの実現が、システムの能力を最大限に引き出すためにも急務となっています」と話す。

oota.jpg 日本IBM システム製品事業システムx事業部 システム・ネットワーキング戦略担当 太田安信氏

 IBMはこれまで、サーバやストレージと同様、ネットワークにおいてもオープン性を最重要視し、大手ネットワークベンダーとのOEM契約などに基づき、相互接続性を確保したかたちで製品ラインアップの拡充を図ってきたという。これは一重に、ベンダーロックインを回避するとともに、その時々に応じて理想とされるネットワーク環境をユーザーに提案するためなのだという。

 この方針を踏襲した上で、データセンターの進化を実現するための新たな製品やフレームワークを提案する――これこそ、企業のシステム環境を最適化するためのIBMのネットワーク戦略にほかならない。そして、その実現に向けた鍵となる製品が、2011年4月から本格的に販売を開始した、データセンター向けラックマウント型スイッチ「IBM RackSwitch」シリーズである。

“4つのL“を実現するための独自のアプローチ

 IBM RackSwitchはIBMが2010年に買収した米BLADE Network Technologies(以下、BNT)の技術を基にした製品だ。BNTは設立以来、ブレードサーバ向けスイッチやワークロード仮想化/管理ソフトウェアを一貫して提供してきた。顧客には大手流通業者や大手金融機関から大手クラウド/インターネット事業者まで、フォーチュン500社の半数以上が名を連ねる。データセンターにおけるイーサネットポート数では、シスコシステムに次ぐとの報告もある。

 その特徴を語る上で外すことができないキーワードが、「Loss Less(ロスレス)」、「Low Latency(低遅延)」、「Low Power(低消費電力)」、「Low Cost(低コスト)」だ。これを太田氏は“4つのL”と呼ぶ。

 「ロスレスと低遅延を可能にするには、消費電力の多い高性能なチップを搭載することが求められ、高コストにならざるを得ません。ですがIBM RackSwitchは、データセンターに特化した設計を行うことで、相反関係にあるそれらの要素を満たせるようになりました。この点が高く評価され、データセンターでのサーバとストレージ間の接続用途に、多くの企業が採用に乗り出しているのです」(太田氏)

 もっとも、データセンター向けの最適化と一言で言っても、その実現にあたっては困難な面もある。スイッチの全売上に占めるデータセンター向けの割合はわずか14%ほど。残るほとんどはキャリア向けWAN製品などが占める。そのため、多くのベンダーは売り上げを確保するためにも、数百ものポートを備え、かつ、WAN向けのL3機能を持ち巨大なルーティングテーブルを保持できるハイエンド製品に重きを置かざるを得ず、データセンター向けの製品はそれらをスケールダウンしたものになっていたのだ。

 「ハイエンド向けの製品は高い拡張性を実現するために、複数のチップを階層的に積み重ねるマルチチップアーキテクチャが採用されています。この設計思想はスケールダウンした製品にも引き継がれてしまい、複数チップでの処理で遅延が生じます。また、チップ間でのデータの通信速度がパフォーマンスのボトルネックとなります」(太田氏)

 対して、IBM RackSwitchは1つのチップでデータを処理するシングルチップアーキテクチャを採用。遅延とパフォーマンスの問題を抜本的に解決した。しかも、チップが少なく構造もシンプルなことから消費電力、さらに価格も低く抑えられている。

 「WAN向けスイッチを手掛ける大手各社は、開発に要する手間とコストを考慮するとデータセンター向け、特にサーバ、ストレージ接続に特化した製品を作り込みにくい面がありますが、それを実現したのがIBM RackSwitchなのです」(太田氏)

最大で11.5倍のスループットと低消費電力

 IBM RackSwitchがデータセンターに特化した製品であることは第三者機関の報告書(米Tollyによる2011年2月の調査)でも確認できる。具体的には、スループットは他社製品と比較し最大11.5倍も速く、40Gbps環境下でのデータ転送も1μ(マイクロ)秒以下の低遅延で実現。これも、サーバ間のクラスタリングやIPストレージが用いられるデータセンターの高いネットワーク負荷を考慮した設計がなされているからだ。

 しかも、消費電力も他社製品より最大で71%も低いという。データセンターにおける電力消費の削減はサーバやストレージの省電力化を柱に進められてきたものの、ここにきてそれらの省電力化は技術的に限界に近づきつつある。そこで、ネットワーク製品の省電力化がここ数年、ベンダー各社に強く求められており、IBM RackSwitchはそうした要望にいち早く対応を図った製品でもあるわけだ。

 「既にサーバ製品は、あらゆる部品で低消費電力化と発熱量の抑制が進められてきました。ブレードサーバ向けスイッチを手掛けてきたBNTも、そのための研究開発を約10年の長きにわたり続けていました。そんなネットワーク機器会社はほかにはないでしょう。このことが、シングルチップアーキテクチャと低消費電力として実を結びました。こうした過去の積み重ねは、他社が容易にキャッチアップできるものではないと考えています」(太田氏)

仮想ネットワークと物理ネットワークを連携させるために

 データセンターにおいて今後、普及が目されている技術の多くはネットワーク領域のものだ。中でも、仮想ネットワークと物理ネットワークの統合管理を目的としたIEEE 802.1Qbg EVB(Edge Virtual Bridging)や仮想NICに対しては、仮想サーバと連動してネットワークを動作させ、ひいてはネットワークの管理負荷を大幅に軽減するものとして大きな期待が寄せられている。

 こういった技術が普及していない現状では、VMwareやXen、Hyper-Vといったハイパーバイザー毎に仮想ネットワークを管理しなければならず、また物理ネットワークの管理も従来通り行わなければならないため「環境によっては不便な状態にある」(太田氏)のが実情だ。

 また、vMotionなどの動的仮想化技術は、あるホストで稼働中の仮想マシンが、別のホストに移動した際に、移動先の仮想マシンに対して同様のサービスを提供するようネットワークに要求する。これに対応するため、ネットワークを論理的にフラットな状態にし、どのポートからも同じサービスを提供するなどの手立てが講じられているものの、「本来、仮想化技術を最大限に活用できる環境を整えるなら、EVBなどの技術を利用し、仮想マシンに追随してサービスを柔軟に提供できるネットワークが欠かせないはず」(太田氏)。その実現にあたっては、仮想ネットワークと物理ネットワークの連携手法も課題となる。

 これらを踏まえ、IBMでは2009年のIEEE におけるEVB標準化活動の開始以来主導的立場でこの活動に携わってきた。

 そこでの成果の1つと言えるのが、IBMが提供するネットワーク仮想化ソフトウェアの「VMready」である。同ソフトウェアは複数のハイパーバイザーの仮想ネットワークと物理ネットワークの統合管理を実現し、動的仮想化技術に対応したネットワークの再構成機能を提供するもの。その利用を通じて、すでに述べた課題を抜本的に解決することが可能になるのだ。すでに製品に組み込むかたちで実装も終えており、2011年11月にはEVBにも対応を予定。併せて、ハイパーバイザー側のEVB対応ソフトウェア製品もリリースする計画だ。

 「大規模なシステムほど、複数のハイパーバイザーが採用されがちです。混在環境で、ハイパーバイザー上の仮想ネットワークと物理ネットワークを一元管理したいユーザーにとって、VMreadyの採用は有効な“解”です。もちろん、ここでもオープン性を重視し、他社のEVB対応製品との相互運用性も確保する考えです」(太田氏)

OpenFlowでネットワーク運用の簡素化も実現

 一方で、IBMはOpenFlow Consortiumの設立当初からメンバーに名を連ね、ネットワークの新しいスイッチングアーキテクチャとして注目を集める「OpenFlow」の普及と製品化を推進してきた。コントローラから受信したFlow Tableに従ってパケットの送受信を制御し、宛先を決定する同アーキテクチャを用いれば、通信状況に応じてスイッチングやルーティングを柔軟に変更できる。

 また、OpenFlowスイッチがルータやロードバランサーなどさまざまなネットワーク機器として振る舞うことで、ハードウェアの簡素化も図れ、ひいては運用の簡素化も実現される。既に日本でも販売実績が豊富なトップオブラック向けスイッチ「IBM RackSwitch G8264」もOpenFlowスイッチとして動作することが確認できており、OpenFlow対応製品提供も近い将来、開始する計画だという。

 「将来的にはデータセンターの物理ネットワークとサーバ上の仮想ネットワーク両方にOpenFlow技術を適用し、現状では不可能な柔軟なスイッチング、ルーティングを行うことが可能となります。そのためのネットワーク製品、サーバ上の仮想化ソフトウェアなどをすべて提供できることこそ、我々にとっての大きな強みです。しかも、オープン化を指向している当社であれば、幅広い選択肢の中からコストに見合った最適なものを提案できます」

 IBMは今後、最新技術を高いコストパフォーマンスで提供することを通じ、データセンターのさらなる進化に注力する計画だという。データセンターの運用や活用を考慮する上で、IBM RackSwitchシリーズの存在は今後、大きなものとなりそうだ。



提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年10月19日