“クラウド”と“モバイル”で海外進出を加速せよ!国産ソフトウェアが目指す次のステージ

日本の有力ソフトウェアベンダーが集結したメイド・イン・ジャパン・ソフトウェア・コンソーシアム(MIJS)。その理事長としてMIJSを牽引してきた内野弘幸氏は、4月にその職をプロダクトビジネス推進委員会委員長の美濃和男氏に引き継ぐ。海外展開にも尽力してきたという内野氏。美濃氏が抱くMIJSの新たな運営方針とは何か――新旧両理事長が談話する。

» 2012年03月12日 10時00分 公開
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パッケージ製品で日本のIT産業の発展を目指す

MIJSの3代目理事長を務めたウイングアーク テクノロジーズの内野弘幸代表取締役社長

内野 ソフトウェアビジネスに本気で取り組みたい。MIJSはこの強い“想い”を出発点に、国内の有力ソフトウェアベンダー13社が2006年に設立しました。いわば志を同じくする企業のコンソーシアムです。当初から掲げた目標の一つに、受託開発を中心とする日本のソフトウェア業界の構造を変えていきたいというものがありました。

 その必要性を訴えたのは、ソフトウェアベンダー各社に対して、独自の“強み”を持つことの大切さを認知してほしかったからです。受託開発業務ではリスクを考慮して、実績のある技術を用いらざるを得ない場合があります。しかし、それでは業務を通じて新技術、さらにはイノベーションの創造を見込めません。日本のIT産業の将来を考慮すると、これは極めて憂慮すべき事態です。この状況を打破するには、日本のソフトウェアベンダーがパッケージ製品にさらに注力し、技術や開発ノウハウを積み上げていくことが不可欠だと考えました。

 ただし、お客様が求めるあらゆる機能を一元的に提供できる国内のソフトウェアベンダーは、現状では数えるほどしかありません。MIJSが協働してパッケージ連携モデルを創り上げれば、ユーザーにとっての利便性を今まで以上に高められるでしょう。海外市場を視野に共同でマーケティング活動を展開すれば、グローバルで先行する大手ベンダーにも立ち向かえるとの思いに至りました。当初のころは規模の拡大をあまり考えてはいなかったのですが、コンソーシアムの目標に賛同する企業が今では65社に上っています。

付加価値を創造する“人”のつながりを育む

内野 理事長としてMIJSの活動を振り返ると、設立時の“想い”は決して間違ってはいなかったと実感します。MIJSには、「プロダクトビジネス推進委員会」と「海外展開委員会」「製品技術強化委員会」の3つの委員会があります。この場では普通では考えられないほど、情報をオープンに交換できる風土が醸成されています。日本のソフトウェア産業の振興という点で各社の意見が一致していなければ、到底これは実現できなかったでしょう。その結果として、事業を展開するときのリスクの低減や、開発コストの削減を実現しています。

美濃 プロダクトビジネス推進委員会の委員長を務めてきましたが、委員会は良好に機能していると思います。メンバーの参加率は高く、会員も着実に増えています。これは、委員会の活動が実務に役立っているからと言えるでしょう。また、公式活動以外のコミュニティーも多数生まれました。Facebookで毎週のように何らかの活動が告知されていますね。

 ソフトウェアの付加価値を生み出す原点は“人”です。人と人のつながりがMIJSから生まれています。情報交換を通じて、自分だけでは得られなかった“気付き”を得ることができたという声もたくさん挙がっています。業界団体の中には目的を見失ってしまっているところもあるように感じますが、MIJSは一線を画す存在と言えるでしょう。

内野 パッケージ連携モデルの開発や海外活動でも成果が出始めています。海外活動では中国や台湾の情報サービス団体と連携し、今では「MIJSと組むことが商機につながる」と認識してもらえるほどになっています。特に中国はソフトウェアの歴史が浅く、開発ノウハウもほとんど存在しません。我々は日本企業の業務ノウハウを盛り込んだソフトウェア開発に長年取り組んできたわけですから、海外活動は、日本のソフトウェアの実績をさらに広げられるきっかけになると確信しています。

共通の“想い”を達成する

内野 MIJSの運営にあたっては考慮すべき出来事もありました。当初は、「経営トップがお互いに議論するなら株式会社化した方が良い」という意見があったほどです。私が理事長に就任してこうやっていくぞと決めた活動方針は、基本的に各社の自主性を一番に尊重し、共通の“想い”を達成するために活動を行うというものでした。今のMIJSの活動では各委員会を統括する委員長に全てを託しており、理事の立場はあくまでサポーターに過ぎません。理事長を引き継ぐ美濃さんには、これまでの良いところを残しつつ、悪いところは遠慮なく見直してほしい(笑)。

美濃 理事長という仕事にプレッシャーを感じることもあります。私が理事長を引き継いだら活気が失われてしまったという事態は避けたいですね(笑)。プレッシャーはありますが、それ以上にやる気がふつふつと沸いてきています。

 これまでの2年間は、委員長の立場からプロダクトビジネス推進委員会の活動に携わってきました。「システム開発」や「マーケティング」といったソリューションパッケージについて勉強会を開いたり、営業力を強化するために各社のビジネスモデルについて意見を交換したり。活動内容は多岐にわたりました。企業同士が“裸で付き合える場”を提供し、各社がそこで得た成果を業務の見直しに役立てられるようになりました。手前味噌ですが、こうした貢献ができたと自負しています。

 改めて思うのは、MIJSとはソフトウェアビジネスの売り上げを単に伸ばすための存在ではなく、我々の理念を伝えるための組織体であるということです。理念がまるで“接着剤”ようなの役割を果たし、企業同士が結び付いていることから姿からも明らかでしょう。

ソフトウェアで“日本らしさ”を追求

内野 美濃さんはMIJSの理念を実現する上で何が一番重要になるとお考えですか。

新理事長に就任するエイジアの美濃和男代表取締役

美濃 設立当初からの“日本のソフトウェア産業を世界でも通用させる”という強い想いに尽きると思います。戦後の日本は経済力が右肩上がりで成長し、一時は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」と呼ばれる存在にまでなりました。ただし、今は日本の将来に陰りが見え始めています。日本が再び活力を取り戻すためにも、会社の枠を越えた交流を通じて各社が海外市場に打って出ることが不可欠でしょう。

 MIJSとしては、まずソフトウェアにおける“細やかさ”や“使いやすさ”といった“日本らしさ”をさらに追求していくことに注力すべきだと考えています。日本製と海外製のソフトウェアを比べて決定的に違うのは、その“精度”でしょう。これは日本人の国民性によって培われたものと言っていいくらいです。海外の大手ベンダーがグループウェア分野で日本のベンダーと提携している事例がありますが、これはユーザー視点できめ細やかなユーザーインタフェースを実現した日本のベンダーが高く評価されたからです。もちろん、中長期的にはシステムの中身を含めて海外ベンダーと互角に張り合えなくてはなりません。短期的には使いやすさにポイントを絞って、我々の強みを発揮できるはずです。

 地方に本社を構えるソフトウェアベンダーの支援も大切です。ワークショップなどを地方でより頻繁に開催していきたいと考えています。この1年間でMIJSに新しく加盟した企業のうち地方を拠点に活動する企業は7社を超えます。沖縄や四国や東北など、より多くの地域で当地のソフトウェアベンダーと交流を深めたいですね。ぜひMIJSにも参加していただきたいと思います。

内野 地方でのワークショップには、地元だけでなく遠方からも数多くの企業に参加していただきました。新しい情報や知見、刺激を得られる場としてとても楽しみにしているといいます。地道な活動かもしれませんが、まさにMIJSが大切にしている部分であり、得意とするところです。

美濃 MIJSの成果が広がりつつありますが、検討すべき課題が残っているのも確かです。会員企業によって戦略・考え方はそれぞれだと思いますが、パッケージ製品の開発を通じて独自技術を磨き上げていくには、やはり受託開発への依存を少なくしていくべきでしょう。

 そのためには、受託開発のノウハウを自社製品に移植したり、カスタマイズの要求をパッケージ製品に取り入れたりするなどの手法で、常に製品を進化させ続けるというアプローチが重要です。そしてクラウドがいよいよ本格的に普及しつつある今、製品の機能をクラウドから提供することで、より多くのユーザーに利用してもらえるということが“夢”ではなくなりつつあるのです。

クラウドとモバイルが大きなチャンス

内野 クラウドのビジネスを手掛ける企業の加入が、確実に増えてきましたね。パッケージ製品だと、ベンダーが環境設定の作業などのためにお客様先に拠点を設けるといった場合がありますが、クラウドなら距離は関係ありません。海外のお客様でも日本から容易にサービスを提供できます。結果として製品の機能を基準にした健全な競争が進むと期待できます。

美濃 クラウドで成功するには、ユーザーの高い満足度を維持しなくてはいけません。アプリケーションの機能を向上させるだけでなく、充実したサービスにすることも不可欠です。この点でも日本のベンダーが日本特有のきめ細やかな感性やホスピタリティを伴ったサービスを実現することで、高い評価を得られるようになるはずです。

 また、クラウドならユーザーがどのように利用しているかをみることができます。改善すべき点がパッケージ製品よりも早く簡単に分かるでしょう。クラウドが普及する過程で一時的にパッケージ製品の市場が縮小するかもしれないという指摘がありますが、サービスを付加してお客様に提供すれば、付加価値を高めて満足度を上げ、さらに市場を拡大できるはずです。それを実現できるかどうかは、各社のチャレンジ次第でしょう。MIJSの役割は各社の挑戦を支援することに尽きます。

内野 ここ数年のスマートデバイスの普及も、我々にとって大きなチャンスになりますね。業務にスマートデバイスをどう活用すべきかという点で、日本のベンダーに“一日の長”があるはずです。

美濃 日本は“ガラケー”をいろいろな角度から使い倒してきましたからね。海外の携帯端末は基本的に通話のために存在していました。携帯端末にも対応するメールマーケティング用のアプリケーションというものは海外にはありませんでした。そこで日本の実績を海外の企業に紹介すると、非常に良い反応があるわけです。こうしたジャンルの日本のソフトウェアは海外市場で強力な存在になりそうです。

内野 美濃さんがこれから理事長として腕を振るうことで、これまで以上に中身の濃い活動が期待できそうですね。これなら安心して引き継げそうです(笑)。最後に新理事長としての抱負を教えてください。

美濃 MIJSは、これまで3代の理事長の力で発展してきたと思います。その後を引き継ぐ上で守りたいことが3点あります。

 一つは、MIJSの理念に共感できる人が会社という枠を越えて集い、活動できる場であり続けることです。これをなくして、MIJSを盛り上げることはできません。参加するそれぞれ企業の知見をその他の会員と共有し、自社だけでは決して得ることができないメリットを得られる団体であり続けたいですね。ただMIJSに加盟しているだけでは期待したメリットはないかもしれません。委員会などでの自らの積極的な行動によって大きな“収穫”が得られる場だと思っています。

 そしてMIJS発足時の“想い”を実現するために、海外展開にもこれまで以上に注力します。海外展開で一定の成果は上がっているものの、大成功を収めたというベンダーはまだいません。各社がお互いをライバルと意識しつつも切磋琢磨できる環境をMIJSが実現することで、ベンダーの成功を後押ししたいのです。ぜひMIJSに期待していただきたいですね。

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提供:MIJSコンソーシアム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2012年4月11日

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