iモードの生みの親、そしてIT業界きっての論客として著名な夏野剛氏が予測する近未来のIT社会とは?中小企業にこそチャンス!

ITは、従来に思いもつかなかい価値を社会にもたらす一方、新たな問題も出現させてきた。技術革新がさらに進めばどんな社会になるのか――。携帯インターネットの世界を創造した夏野剛氏と、そして夏野氏がIT業界の「国連軍」と称する、インテルとマカフィーのそれぞれのキーパーソンが、近未来のIT社会と安全について意見を語った。

» 2013年08月01日 10時00分 公開
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 ITによって、社会はこの約20年で劇的な変化を遂げた。インターネットによる新たなビジネスモデルが数多く創出され、従来では考えられなかったメリットを享受できるようになった。その反面、昨今毎日のように報道されている、サイバー攻撃に代表される脅威や情報漏洩といった問題も急増している。

 ITによる革新がさらに進めば、この先の社会はどうなっていくのだろうか。そこで浮上する問題とは何か――。iモードの生みの親である夏野剛氏とインテル®技術開発本部長の竹井淳氏、マカフィー®のマーケティング本部 執行役員 本部長の斎藤治氏が、これから予想される社会の姿と、その変化に対応するための心構えについて語った。

ITの付加価値創出が本番に

―― ITの技術革新はとどまるところをしりません。皆さんはどんな社会が到来すると思いますか。

慶應義塾大学 環境情報学部 客員教授 夏野剛 氏
早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモに在職中に、榎啓一氏、松永真理氏らとiモードを立ち上げた。2005年ドコモ執行役員マルチメディアサービス部長。08年にドコモ退社。現在は慶應義塾大学 環境情報学部 客員教授として教鞭をとっている。

夏野 ITによる新たな仕組みづくりはこれからが本番です。これまでの歴史を振り返ると、人は新たな事象に直面する都度に、生活や社会システムを変化させて新たな価値を創出し、社会の発展につなげてきました。そう考えると、今はITにようやく慣れてきた段階でしょう。ただ、慣れてきた段階といっても、今頃ネット選挙解禁なんて言って騒いでる日本は、私に言わせれば、かなり遅れているように感じますね。

竹井 技術の活用に向けた次世代のルール作りが大切になるでしょう。インテルも技術を開発するだけでなく、ルール作りにも取り組んできました。政策や制度、標準化、インフラ整備、セキュリティーなど手掛ける領域はとても広く、新たなルール作りは一筋縄ではいきません。まさにこれからの挑戦という状況です。

斎藤 必然的に社会構造も大きく変わるでしょう。この先の10〜15年でITが水道や電力と同じように社会基盤の1つになるはずです。そこでは、水道水のように安心かつ安全に利用できるインフラとしてのITが求められます。セキュリティーベンダーのマカフィーにとって、その実現は使命ともいえます。

―― 生活者としての私たちにはどんな変化が起きるのでしょうか。

夏野 組織と個人の関係が大きく変わりつつあるように、既に変化は起こり始めています。これまで個人は、何らかの組織に属さなければ、効率的に情報を得ることが難しいものでした。それが、今ではネットで簡単に情報を収集できますし、例えば、研究者が自身の成果をネットで発表するなど、発信もできる。ネットで流通する情報はリッチになるばかりです。その結果として、働き方の幅が従来に比べてはるかに広がってきています。人生の選択肢も増えますし、働き方としても、自分にとって心地よい環境で仕事に打ち込められるようになっていくでしょう。

“一億総オタク化”のフラットな社会が到来する?

―― なぜネットでの情報発信が増えているのでしょうか。

夏野 その理由は非常に明確です。これまで時間や距離がコミュニケーションの阻害要因でした。しかし、ネットにはそうした制約が一切存在しません。例えば、研究内容をネットに情報を提供することで、世界中の研究者からフィードバックを得られます。当然ながら研究を進めやすくなり、新たな知恵が創発されるようになるでしょう。

 また、他人とのやりとりを通じて自分自身の考えやアイデアを固めていけることもネットならではのメリットです。コミュニケーションから人の知恵を簡単に借りられるというわけですね。

 ITによって、個人が組織に縛られることなく、自分の興味のあることに集中できるようにもなるでしょう。「一億総オタク化」の知識社会と言いますか、一人ひとりの人間の潜在能力を簡単に開花させることができる社会が到来するでしょう。知恵を働かせて未来を切り開いてきた人類にとって、これは理想の時代と言えるのではないでしょうか。

―― そうした変化は企業の在り方を見直すことにもつながりそうです。

夏野 組織のフラット化が確実に進むでしょう。社長があらゆる社員に対して、簡単に情報を伝達できるようになるわけです。これからは中間管理職の役割は問われることになりそうですね。当然ながら、従来の組織のあり方や人材の採用、雇用体系、業績評価の方法、個人の才能の生かし方など、企業はあらゆるものを見直していかなければならなくなるはすです。

 大企業にとって、これは頭の痛い問題です。一方で、中小企業にとってはまさしくチャンスでしょう。人手が足りないという中小企業は多いですが、ITを活用して生産性の大幅に向上できれば、この問題を解決できます。組織の構成も大企業より中小企業の方がはるかにフラットです。SNSといったITツールを駆使して、社員個人の力を引き出すことができれば、大企業と伍して戦うことも決して不可能ではありません。

大企業よりも中小企業が圧倒的に有利?

―― 夏野さんが予想される変化に企業が対応していくには、困難も伴いそうですね。

夏野 それは確かです。変化をきっかけに諸制度が見直しされるでしょう。その見直しによってマイナスの影響を被る人からの抵抗に遭うでしょうし、その対処方法にも頭を悩ますことになると思います。特に日本企業は、後者について手を焼くことになるでしょう。

 例えば、欧米諸国は余剰となった管理職に対して、退職金を割り増して支払うというような経済合理性によって対応できます。しかし、日本の企業では感情に流されてしまいがちです。こうした問題を克服できるか否かが、新たな価値創造、見方を変えれば、企業の生き残りの鍵になっていくはずです。この点でも、中小企業は余剰人員が少ない、決断が早くできる、などの条件で、大企業よりも圧倒的に有利です。しかも、SNSといったコミュニケーションツールの普及も進み、個人の力を引き出せる環境が整いつつあります。

 情報技術も従来は、大企業が大掛かりな投資をして構築していたものを、初期投資なくサービスとして利用できる時代ですし、高度なセキュリティーもマカフィーさんのような専門集団を利用すればいい。中小企業こそ、ITを最大限利用して、効率よく経営する必要がありますし、できるといっていいと思います。

 ITの持つ可能性は無視できません。SNSによって他人の知恵を借りることができる環境などは良い例です。さらに言えば、人間の脳と通信デバイスとの間で情報を直接やりとりするような技術開発も進められています。この技術によって、情報をもっと簡単に検索できるようになるでしょう。

―― まるで映画のような未来ですね。しかし、ITにはリスクも存在します。現実の社会では情報漏えいなどの事件が後を絶ちません。

インテル 執行役員 技術政策推進本部本部長 博士(政策・メディア)竹井淳 氏
2005年より、インテルにおいて標準化と制度、政策を担当。主に通信政策、プライバシー・セキュリティ技術および政策に関わる。2009年より慶応義塾大学環境情報学部にて非常勤講師として技術と政策についての講義を担当。WIDEプロジェクトボードメンバー。

竹井 リスクに対する考え方は、自動車の例にすると、分かりやすいかもしれません。自動車は残念ながら100%安全を保証することができません。しかし、人間は自動車の利用をやめようとはしません。そこには、自動車のもたらすメリットがデメリットよりも大きいという判断があるからです。

 そのデメリットをできるだけ小さくし、すなわちリスクを減らし利点を最大化するために、安全を確保するための技術開発も進められてきました。今では前方の自動車などへの衝突を事前に予想して、自動的にブレーキをかける技術が開発されています。技術だけでなく、自動車保険のようなリスクを担保するシステムも社会の仕組みの一部として生み出されてきました。

 ITがもたらすメリットがデメリットよりも大きいのは明らかです。技術革新、そして、リスクを担保する仕組みを両輪で実現すれば、ITの課題に対応できるはずです。

夏野 ITのリスクばかりに目が向いてその利用を禁止するという企業は多いですね。そうした企業の経営者には、ITを利用できないことによって被る損失がどれだけに上るのかを理解されているのか、ぜひ聞いてみたいところです。

 ITは人が使うものです。もちろん、人間に悪意があれば、悪用は避けられません。ITのリスクについて指摘する意見を見聞きしていると、問題の原因を人間ではなく、技術にすり替えているようなものがたくさんあります。

巧妙化するサイバー攻撃から情報を守るには

―― 夏野さんは、iモードを立ち上げたメンバーの一人ですが、当時、情報セキュリティーの脅威をどのように捉えていましたか。

夏野 リスクを痛感させられるようなことは、それなりにありました。ただ、かつての携帯電話、いわゆる「ガラケー」の端末はOSが独立した存在でしたので、セキュリティー面で助かりました。しかし、今のスマートフォンはOSが広く知られているだけに、はるかに危ないものです。悪意を持った人が悪質なアプリケーションを作れば、思いのままでしょう。

マカフィー マーケティング本部 執行役員 本部長 斎藤治 氏
1990年に大学卒業後、18年に渡り大手ハードウェアベンダーに勤務。その後、国内セキュリティベンダーのマーケターを経て、2011年12月、マカフィーに入社。以来、マーケティング本部のトップとして、自社製品・サービスの広報のみならず、業界を代表する立場からITセキュリティそのものの重要性を市場に発信していく啓蒙活動に取り組み続けている。

斎藤 夏野さんが指摘されるように、いわゆるサイバー攻撃は目的が悪質化し、手口も巧妙になる一方です。昔は「騒ぎを起こしたい」「注目されたい」という動機でしたが、今では明らかに金銭が目的です。攻撃者は、情報を盗み取る相手の趣味や趣向をSNSなどで分析して、ウイルスやマルウェア※1を添付したメールを送りつけ、相手がついクリックしてしまうように仕向けます。クリックしたその瞬間、相手に気が付かれないうちにウイルスやマルウェアが端末にインストールされてしまいます。

 ある調査によると、83%の企業がそうした巧妙な「標的型攻撃」を受けていると答えています。残る17%の企業は、恐らく攻撃を受けていることにすら気づいてはいないでしょう。企業がITのリスクに備えるにも、危険な状態にあるといえます。この事実を前提にして、対策を考えていく必要があります。

※1……悪意を持った不正プログラムの総称

―― 今では中小企業でもITの利用が進んでいます、CADデータを扱い、やりとりしている町工場も多いのですが、サイバーリスクを十分に知っているとは言えないのが実情でしょう。日本の技術を支える中小企業の貴重な知的財産が流出してしまっている例は、想像するよりもはるかに多いかもしれません。しかしながら、中小企業にはITのために人材を割くことができる余裕はあまりありません。こうした状況にどう対応すべきでしょうか。

斎藤 専任のシステム担当者を抱えられないという企業では、セキュリティー対策について一貫した考えが無く、部署ごとに対策を講じているケースがよくあります。それによって、防御の穴が生まれやすいことも確かです。しかも、今では1週間に50万種ものマルウェアが登場するほどに、サイバー攻撃※2の脅威が巨大なものになっています。

※2……コンピュータやネットワークを利用し、対象とするコンピュータシステムからデータを詐取したり、改ざんしたりするほか、システムやデータの破壊、稼働の妨害といった行為を伴うこと

 こうした脅威から企業を守ることは、夏野様に「国連軍」と命名いただいたマカフィーの責務です。当社はソフトウェアを手掛けていますが、ハードウェアベンダーのインテルと手を組んだ理由は、実はここにあります。従来のソフトウェアのみのセキュリティーには限界があり、ハードウェアレベルからさらに強化した次世代セキュリティーの提供をすすめています。その成果は、「McAfee® DeepSAFE TM※3に代表されるセキュリティー技術として既に実現しています。

 具体的には、McAfee DeepSAFEはインテルのプロセッサーに搭載された「インテル® VT」※4を利用することによって、OS上で稼働するアンチウイルスソフトウェアでは対処ができなかったOSの下に潜り込むマルウェアの脅威を阻止します。

※3……インテルとマカフィーが開発したOSの深部で活動する不正プログラムの検知と感染防止のためのセキュリティー対策技術

※4……インテル® バーチャライゼーション・テクノロジーの略。仮想コンピュータ環境を効率的に稼働させるための機能をハードウェアに組み込んでいる

“内”と“外”のセキュリティーを確保

竹井 インテルもコンピュータの安全を確保すべく、ハードウェアによってOSやソフトウェアの異常を検知する機能を提供してきました。ただし、ハードウェアが提供する機能をソフトウェアによって広く活用されるためには、開発や普及に長い時間がかかってしまうという難しさが伴います。

 インテルがソフトウェアベンダーのマカフィーとタッグを組んだのは、ハードウェアとソフトウェアを一体化させることによってセキュリティーを強化したいと考えたからです。

 McAfee DeepSAFEの機能は、次のように例えると分かりやすいでしょう。インテルは強固な建物を提供します。建物には扉や窓など、外部とアクセスする場所があり、犯罪者の侵入経路となる場所がいくつかあります。犯罪者の侵入を防ぐには、それぞれの場所にインテルとマカフィーの最新技術による警備を講じます。建物を設計したインテルと警備保障のスペシャリストのマカフィーが連携を組み、厳重に警備、管理しているので、犯行は食い止められるというイメージです。

斎藤 マカフィーは、そうした技術をサービスとしても提供しています。専任のIT担当者がいないという企業でも、サービスを利用すれば負担の無い形で自社のIT環境を保護できるようになります。建物の例でいえば、安心な部屋をレンタルしたり、建物の警備サービスを提供したりする。いわば社内のITを守る派遣型警備サービスというものですね。

―― セキュリティー対策は、サービスを利用するよりも、自分たちの手で行った方がより効果を得られるようなことはありませんか。

竹井 実は逆です。残念ながら、ITの進化は犯罪者にとって都合の良い新たな侵入経路や死角も作り出してしまいます。企業が独自に対応していくために必要な労力や専門知識を考えると、その資源には限界がありますので、現実には非常に困難です。そのためにもマカフィーのようなセキュリティー会社は日々、新たな攻撃方法についての情報を収集し、対策を講じています。

夏野 今の企業の競争力は、ITがベースにあり、そのためにセキュリティー対策もあるわけです。しかし、セキュリティー対策への認識が欠如している企業の経営層が企業サイズにかかわらず、多々見られます。この点には苦言を呈したいですね。

 しかもITが社会基盤となりつつある今の時代に、企業の経営層にはITの価値だけでなく、その限界を知るために自ら率先してITを利用することも求められています。それをしないで、新しい戦い方を生み出すことなどできません。織田信長が天下を取るほどまでになったのは、当時は新しい武器だった鉄砲を、ほかの武将よりも使いこなすことができたからです。少数精鋭の中小企業の経営層こそ、ITを使いこなしていただきたいです。そうしなければ、はっきり言って、今後勝ち残っていくのは難しいでしょう。

斎藤 そのためには、ITの「見える化」も大切になりますね。経営層は、投資へのリターンはどれほどになるのか、あるいは、情報がどれほどの価値を持っているのかといったことを明示できるようにならないといけません。

夏野 その通りです。それができて、ようやくセキュリティーにどれだけ力を入れるべきかが分かるようになるでしょう。

 企業が持つ情報はこれからも確実に増えていくでしょうね。サイバー攻撃の被害による損失額も増えていくのではないでしょうか。しかも、ITは急速に進化しているので、大企業ですら単独でセキュリティー対策を講じることがとても難しくなっています。

 こうなると、まるでテロリストのようなサイバー攻撃に対しては、インテル・マカフィーが組んだ「国連軍」のソリューションに対応を委ねるのが一番の近道でしょうね(笑)。こうした新しい技術を中小企業が活用すれば、大企業とのセキュリティーレベルの差を確実に縮めることが可能です。中小企業の方こそIT活用の利点に目を向けて、経営者自らIT機器を使ってみて、企業競争力のアップに活用してもらいたいと思います。

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提供:インテル株式会社/マカフィー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年8月31日