塩漬けされた基幹システムを再生せよ! 常識を打破した“次世代メインフレーム”とはミッドレンジにも用途広がる

長らく企業の基幹システムを支えてきたメインフレーム。その市場をグローバルで支えてきたのがIBMだ。日本IBMは2013年7月、メインフレーム製品のミッドレンジモデル「IBM zEnterprise BC12」を発表した。メインフレーム需要は縮小傾向にあるとされる中、同社は2012年度で9%の売り上げ拡大を達成。次世代メインフレームと銘打ったzBC12を新たに投入することで、さらなる売り上げ拡大を図っていく。

» 2013年09月12日 10時00分 公開
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メインフレームは「過去のシステム」ではない!

 金融業における勘定系システムや製造業の生産管理システムなど、高い安定性、信頼性が必須の基幹システムに採用されてきたメインフレーム。ただし、基幹システムにx86サーバやLinux OSなどが導入されるようになり、メインフレームの需要は縮小傾向にあると一般にとらえられている。

日本IBM システム製品事業 システムz事業部 事業部長の大島啓文氏 日本IBM システム製品事業 システムz事業部 事業部長の大島啓文氏

 だが、そうした見方は“誤解”のようだ。日本IBMのシステム製品事業 システムz事業部で事業部長を務める大島啓文氏は、メインフレームの市場動向を次のように解説する。

 「企業の屋台骨を支えるものだけにダウンサイジングは難しく、市場規模はハードウェアだけ見てもグローバルで5000億円、国内で1000億円ほどと一定規模を維持している。可用性や堅牢性の点では当然ながらオープン系システムよりもメインフレームの方が圧倒的に有利で、顧客からの継続利用のニーズも高い」(大島氏)

 同社はグローバルで約90%、国内でも30%の市場シェアを獲得するメインフレーム製品のリーディングカンパニーだ。それもひとえに、初のメインフレーム製品となる「System/360」を1964年にリリースして以来、既存システムへの投資保護を最優先に、上位互換を維持した製品開発を約50年の長きにわたり続けてきた賜物であろう。その新製品として次世代メインフレームと銘打ち、同社が2013年7月に発表したのが、昨夏に発表したハイエンドモデル「IBM zEnterprise EC12(zEC12)」の技術を踏襲したミッドレンジモデルの「IBM zEnterprise BC12(zBC12)」だ。

 もっとも、企業の基幹システムは一般に、無用な障害を回避するために「塩漬け」にされがちである。つまり、システムに手を加えることなく、必要とされる新たな仕組みは外部で個別に作り、ハードウェアの更新のみを行うのである。だが、こうしたニーズだけに対応していては、ベンダーにとって売り上げの維持は可能でも拡大は難しい。そうした中、IBMでは、2012年度におけるメインフレームの対前年比の売り上げは、グローバルで9%増を達成しているという。

 同社が依然として売り上げを拡大できているのはなぜなのか。その理由の1つが、「分散系システムに対するメインフレームの圧倒的なコスト優位性」である。

「Linux on System z」によるサーバ統合で人気に火

 分散系システムを採用した場合、処理要求が高まるほどサーバ台数も増加する。例えば、データベースシステムを長年運用した結果、高額なライセンス料に悩まされることもしばしばだ。対して、日本IBMのメインフレーム製品「IBM System z」で注目されるのが、一般的なLinuxの稼働が可能で、その豊富なオープンソース・アプリケーションやミドルウェアをSystem z上で容易に利用できる「Linux on System z」だ。つまり、System zであれば、サーバの高い処理要求にも1台で対応でき、Linux上で稼働するソフトウェアライセンスの大幅削減が可能なわけだ。

日本IBM システム製品事業 システムズ&テクノロジー エバンジェリストの北沢強氏 日本IBM システム製品事業 システムズ&テクノロジー エバンジェリストの北沢強氏

 この点を評価しSystem zを採用する企業も非常に多いのだという。日本IBMのシステム製品事業 システムズ&テクノロジーでエバンジェリストを務める北沢強氏は次のように打ち明ける。

 「『System z 9』をリリースした2006年を機に、Linux on System zのニーズに火が付いた。統合集約効果の高さから、金融系を皮切りに今では業種を問わず幅広く採用されている。出荷CPU性能で見ても、Linuxの利用がSystem z用のOSであるz/OSを上回っているほどだ」(北沢氏)

 サーバ統合といえば、極めて大規模な環境を想像しがちだが、実はより小規模環境にもLinux on System zを採用する動きが広がっているという。英国の美術商であるWhitecubeは、12台のIAサーバで構成される商談用システムをSystem zに集約。付加価値が高い美術品を扱うだけに、顧客からの問い合わせに即応可能な堅牢性を実現することがその狙いである。

 「サーバ50〜100台の規模においてもSystem zの採用を検討する動きが盛り上がっている。高い堅牢性が確保されていることに加え、サーバ統合を通じてデータ保護にまつわる手間を大幅軽減できる点への評価も高い」(北沢氏)

 このたびリリースされたzBC12は、こうした領域を新規開拓するための切り札といえる。メインフレームとしては破格の790万円からという価格設定からもその強い気持ちの表れが見て取れる。

 機能面でも進化を遂げている。具体的に、基本性能では4.2GHzで動作する32ナノ/SOI技術によるCMOSプロセッサの採用により、従来機のz114に比べてコアあたりの処理能力を36%、筐体あたりでは最大62%向上させた。また、従来と同様に、WindowsやUNIX、Linuxとの異種混在での運用ができ、プラットフォームの垣根を越えた集約も可能。最大で512ギガバイトのメモリを搭載できるなど、高い拡張性も確保されている。

基幹システムのデータ活用を推進する多様な仕組み

 一方で、日本IBMはメインフレームの新たな用途開拓にも力を入れてきた。代表的なものがビッグデータなどのキーワードに代表される「アナリティクス」だ。

メインフレーム製品のミッドレンジモデル「IBM zEnterprise BC12」 メインフレーム製品のミッドレンジモデル「IBM zEnterprise BC12」

 基幹システムが管理するデータは企業にとって財産である。その分析を通じて、マーケティングや販売、設計など、あらゆる企業活動の高度化に向けた気付きを得ることも可能になるからだ。こうした活動を支援すべく、同社では、「SPSS Statistics for Linux on System z」をはじめ、分析系ソリューションの拡充を推進。その上で、平均4倍のデータ圧縮が可能なハードウェアアクセラレータである「zEnterprise Data Compression (zEDC) Express」や、TCP/IPよりも低遅延なネットワークである10GbE RoCE Expressの採用など、zBC12は機能面にも配慮を払った。zEC12で採用したFlash Expressの動的な再構成も実現している。

 「迅速な意思決定のためにも短期間での情報処理が肝。そのためにも基幹システムのデータをより容易に扱える仕組みが欠かせず、IBMではチューニング不要でSystem zでの高速検索を可能にする製品などもラインナップに追加してきた。既に欧米企業ではそれらを活用して競争力強化に乗り出す企業も多い。国内では基幹システムの扱いが慎重だが、海外の成功事例を基に近い将来、活用に乗り出す企業も登場するはず」(大島氏)

 さらにセキュリティ機能も強化。その1つがリアルタイム分析におけるデータ保護のため、ハードウェアベースの暗号化処理機構「Crypto Express4s」によって、毎秒290〜960メガバイトの大容量データの暗号化を可能にしたことである。また、電子署名機能を新たに追加したほか、ICカードの統一規格である「EMV」や暗号トークンインタフェースの「PKCS#11」もサポートしている。

 基幹システムの活用が進み、機能強化がなされれば、当然ながらより大容量のストレージなどが周辺システムで必要となる。これにより、新たな商機がもたらされるという好循環を生んでいるという。

モバイルとクラウドに対応した次世代システム

 zBC12の新機能として一番の目玉が、モバイルとクラウドへの対応である。前者に関して、従来からオンラインバンキングシステムなどではモバイル対応が進められてきたものの、そのシステム構成はモバイル端末からのアクセスを処理するサーバを配置し、それをゲートウェイとして利用する手法が一般的だった。zBC12ではトランザクション処理用のミドルウェアである「Customer Information Control System(CICS)」がJavaScriptにおけるデータ記述言語の「JSON」をサポートすることで、メインフレームとモバイル端末とのダイレクトアクセスを実現した。

 「中継サーバが不要となりシステムの冗長性が排除されることで、システム運用担当者の負荷が軽減されるとともに、中継サーバ用のアプリ開発の手間も一掃される。もちろん、メインフレーム上のアプリケーションやデータをモバイル端末から安全かつ直接利用するための各種機能も実装済みだ」(北沢氏)

 後者については、クラウド基盤を構築するオープンソースソフトウェアである「OpenStack」に対応。これにより、高信頼かつスケーラビリティの高いSystem zでのクラウド構築が可能となった。

 以上のように、大幅なグレードアップを実現した新たなメインフレームをどのように市場展開していくのか。従来からの常識の打破――これが日本IBMのメインフレームにおける営業戦略である。

 「メインフレームと言えば、堅牢だがコスト負担が大きいと思われがち。しかし、実際にはサーバ集約によりTCOの削減につなげることも可能だ。System zはアプリケーションレベルで99.999%という高い可用性を実現しており、システム障害に起因する経営リスクを大幅に低減でき、モバイルとアナリティクスへの対応を通じて次代を担う新たな仕組みの整備にも活用を見込める。zBC12の発表を契機に、新規顧客からの問い合わせも寄せられており、メインフレームの秘める可能性の認知に手応えを感じているところだ」(大島氏)

 同社は今後、問い合わせのあった企業からコードを預かり、さまざまなデモンストレーションを行うなど、具体的なメリットを訴求することでzBC12の拡販につなげる計画だ。メインフレームの新たな世界がzBC12によって切り開かれつつある。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年10月11日

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